ハレのシナゴーグ襲撃事件の衝撃

ドイツ東部、ザクセン・アンハルト州のザーレ河畔の町ハレ(人口約24万人)は、古い伝統を持つ大学都市で、イギリスで活躍した作曲家、ヘンデルの生まれた町としても知られる。ハレは、近くのザクセン州ライプツィヒとともに、この地域の文化圏を形成するが、そのハレでユダヤ教のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃事件が起こった。第二次世界大戦後のドイツで、シナゴーグが直接銃撃されたのは初めてのことで、ドイツ社会に与えた衝撃は計り知れない。

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鳴り物入りの温暖化対策、 効果はいかに?  

「私たちの描く将来は、排気ガスのない世界」と訴える「未来のための金曜日」のデモの若者たち

ドイツでは昨年末ごろから、毎週金曜日に生徒たちを中心に、一刻も早く有効な温暖化対策をとるよう求めるデモ、「Fridays for Future (未来のための金曜日)」(略:FFF) が行われている。生徒たちの主張は大人たちの共感も呼び、緑の党の支持率は今年になってからうなぎのぼり、その後も高値安定といったところだ。 先月9月20日には、世界的規模でFFFのデモが行われ、ベルリンだけでも27万もの人々が参加した。これだけ市民たちの温暖化に対する危機感が高まっている中、政府がどのような対策を取るのか注目が集まっていたが、奇しくもこの世界的規模のデモが行われた日に、アンゲラ•メルケル首相率いる連立政権を構成するキリスト教民主同盟 (CDU)、キリスト教社会同盟 (CSU)、社会民主党 (SPD) の幹部は、前日から行われていた「気候閣議」がまとめた温暖化対策の政策パッケージを発表した。

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ドイツ統一から29年、旧東独地域の現状

1989年11月にベルリンの壁が崩壊してから今年で30年、翌1990年10月に旧東西ドイツが統一して一つの国家になってから今年で29年が経った。その間、旧東ドイツ地域はどう変化しただろうか、ドイツ統一はどこまで進んだだろうか。ドイツ連邦政府直属の東部ドイツ担当官、クリスチャン・ヒルテ氏はこのほど『2019年度、ドイツ統一に関する政府年次報告書』を発表し、「ドイツ東部の状況は、一般に語られているよりずっと良好だ」との見解を明らかにした。しかし、統一は「まだ終着点に達していない」とも語った。

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東京電力旧経営陣三被告に対する無罪判決について、ドイツの新聞はどう伝えたか

福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で、強制起訴された東京電力の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の三被告に対し、東京地裁は9月19 日、いずれも無罪の判決を言い渡した。事故の刑事責任が問われた唯一の公判だった。少し遅くなったが、この判決についての翌20日のドイツの新聞論調の幾つかをお伝えしようと思う。 続きを読む»

環境に一番優しい乗り物は何?

この頃ドイツで、モビリティーという言葉をよく耳にする。直訳すると可動性だが、現在は、人がいつでも好きなところに移動できることを意味している。車や旅行が大好きなドイツ人にとって、このモビリティーは非常に大切で、これは彼らが近年勝ち得た生活の質の一つと思われているようだ。しかし地球温暖化が深刻になりつつある今、温暖化の原因である二酸化炭素を多く排出する交通機関、特に飛行機や大型乗用車が問題視されだし、もっと鉄道や公共交通機関を利用するべきだという声が上がっている。そんな中、ドイツ連邦環境庁が意外な調査結果を発表した。長距離の移動には、鉄道よりもさらにバスの方が少ししか二酸化炭素を排出せず、環境に最も優しい移動手段だというのだ。

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ドイツ人の大多数は、現在の大連立政権が2021年まで続くことを望んでいる

野党支持者からも評価されているメルケル首相©️Deutscher Bundestag/Achim Melde

去る9月1日に行われたザクセン州とブランデンブルク州の東部2州の州議会選挙では、投票した有権者の4分の1が右翼ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に票を入れ、右翼過激派も含むこの政党の躍進振りが改めて人々に衝撃を与えた。その一方、政権与党のキリスト教民主同盟(CDU)とドイツ社会民主党(SPD)は共に大幅に票を減らし、これまで国民政党と言われてきた二大政党の衰退が目立った。それにもかかわらず、その直後におこなわれたZDF (ドイツ公共第二テレビ)の世論調査では、連邦段階でのCDUと姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU) 、それにSPDからなる、いわゆる大連立政権を評価する人が多いことがわかった。 続きを読む»