パリの風刺週刊新聞襲撃事件に対するドイツの反応−2
パリの風刺週刊新聞への襲撃事件以来、アルテ(独仏合同公共テレビ放送局)の画面に映っているロゴ「arte」の下に、新しいマークが加わりました。黒いバックに白文字で「JE SUIS CHARLIE(私はシャルリー)」と書かれています。「Charlie Hebdo(シャルリー・エブド)」本社で殺害されたジャーナリストに対する団結の合言葉です。ベルリンのブランデンブルグ門前のパリ広場にある在独フランス大使館の前には、多くの市民が花束とろうそくを供え、哀悼の意を表しています。ドイツのラジオ局、ドイチュランドフンク(DLF)のアニヤ・ネールス記者は「とりとめのない不安」と題してベルリンでの印象を集めました。
(以下番組から抜粋)
ある男性は、わざわざ遠くベルリン南部から自転車に乗りフランス大使館前まで走った。紙に包まれていた12本のバラを供えた。
「はい、どうしてもここへ来たい、殺害されたジャーナリストに対して追悼の意を表したいと思いました。この一句といっしょに。『風刺は何してもいい。ただ死んではいけない』」
およそ10人ほどの市民が大使館の前に立っている。何人かは狼狽して、このようなことがここベルリンでも起きるのではないかと心配する。
「私は10年ほどフランスで生活していました。今回の事件はとてもショックでした。私はフランス人と暮らしています。大変です。これからどうなるか分かりません。気違いはいつの時代でもいます。でも簡単に片付けてしまえる問題ではありません。私は外国人に対して、もちろん反感など持ってはいません。でも、このごろ外国人が多すぎると思います」。
市民の持つ不安はとりとめがない。多くの人は「この外国人」、または「このイスラム教」に対して反感を持っているわけではない。敵意を感じるのは、テロリストに対してだ。しかし、この度の事件の後、外国人=イスラム教、そしてテロリストと一緒にしてしまう恐れが増したのではないかと女性政治学者、ゲジーネ・シュバーン氏(元ヨーロッパ大学学長。元連邦大統領候補)は警告する。
このラジオ番組では「イスラム教夢想家への警告」として、いくつかのフェイスブックのメッセージも紹介されていました。
「イスラム教の及ぼす危険性に対して不安を持つ市民を無視してきた者、この市民たちを嘲笑していた者、この惨殺事件の後、だれが偽りを言っていたか、分かっただろう」(政治家一同へ、イスラム教夢想家への警告)
他に次のような意見も放送局のフェイスブックに送られた。
「この卑劣な犯罪を、イスラム教に責任があると考えてはいけない。これは馬鹿者たちの単独行為であり、イスラム教徒全体の行為ではない」
「悲しむ市民こそ正しいシグナル」という主張で、このレポートは終わっています。
イスラム教徒排斥の声はフランス大使館前では聞かれない。多くの国々からやってきた人たち、そして様々な宗教を持つ人々が、狂信者によって射殺された12人の死を悼む。一面の花束の海の中に置かれたプラカードには、神の名で非道を平然と行なう狂信主義者に対して反対という言葉が書かれている。政治学者のハーヨ・フンケ氏は、これは正しいシグナルだと確信する。「代表的な政治家たちだけではなく、大半の市民たちは、一般のイスラム教徒とヨーロッパへ逃げてきた難民たちの立場を理解し、支えとなっています。その点ではドイツの民主主義は成熟したといえるでしょう。つい2ヶ月前には、その点に疑いがあったのですが……」。