仏フェッセンハイムの原発停止、どうやら本当⁉︎
フランスのフィリップ首相はこのほど、2018年のマクロン大統領の「エネルギー転換に関する10年計画」に示されたように、フランスで最も古い原発であるフェッセンハイム原発の原子炉第一号機をこの2月22日に、第二号機を6月30日に停止すると強調した。ライン川を挟んでドイツの国境からわずか100メートルも離れていないこの原発は、1977年の操業開始以来40年以上が経っており、何度も大小の事故を起こしているため、フランスやドイツ、そしてスイスの環境保護団体、またドイツ政府からも、1日も早く停止するように求められてきた。ただ、フランスはこの廃炉で完全な脱原発に踏み切るわけではない。現在フランスの発電量の72%を占める原発の割合を、2035年までに50%に下げる計画を立てているのだ。
フランス政府と国営のフランス電力会社(EDF)は共に、同国の安全な電力供給と経済競争力の保持、そして地球温暖化ガス防止のために原発は欠かせないという意見だ。その証拠に、フランスでは例えば現在もドーバー海峡添いのフラマンヴィルに新しい原子力発電所を建設している。本来は、この原発の操業開始がフェッセンハイム廃炉の前提条件だった。しかし、厳しくなる安全基準や次々に発生する技術的問題のために、フラマンヴィルは、まだ操業に至っていない。そして現在では、操業開始は早くても最初の予定より11年も遅れて、2023年になるだろうと言われている。それまでフェッセンハイムの廃炉を遅れさせるのは無理だと判断したのだろう。
フランスでは現在14カ所で58基の原子炉が稼働している。その中には古いものが多いので、EDFは政府の依頼に従い、これから先15年間に停止すべき原子炉のリストをこの1月に提出した。それによると、EDFは7カ所の原子力発電所でそれぞれ2基、合計14基の原子炉の停止を提案している。それぞれの発電所には2基以上の原子炉がある。従って、廃炉で発電所が存在しなくなるのは、今回のフェッセンハイムだけだという。また14基の廃炉は早くても2029年から始まるという。それほど遅くなる一つの理由には、日本と同じように、原発所在地が経済的に原発に大きく依存しているこがある。そのため、住民の反対が大きいのだ。もう一つの理由は、政府が、安全検査や必要に応じては近代化の手を加えてでも、多くの原発の稼働期間を50年に延ばしたいとし、そのための多少の投資は厭わないと考えているからだ。そうすれば、早期停止が理由で、国がEDFに賠償金を支払う義務から逃れられるからだという。
政府は先ごろ、460億ユーロ(約5兆5200億円)の予算で6基の新しい原発を建設するための企画書をEDFに作成させた。それら6基は、現在フラマンヴィルで建設中の原子炉と同じ最新型の原子炉になるというのだが、同発電所の建設費は、計画時の35億ユーロ(約4200億円)から 現在までに既に124億ユーロ(約1兆4880億円)に跳ね上がっている。原発は決して安くないのだ。
オランド前大統領が2012年の時点に、2016年と言っていたフェッセンハイムの廃炉が、とにかくやっと、今回実現しそうだ。