ますます広がるドイツの再生可能エネルギー地域

えみぃ / 2013年5月12日

会議で配布された資料など

ドイツが再生可能エネルギーを推進するにあたって、大きな原動力となっているのが、地域レベルの取り組みだ。昨年の秋にドイツ中部のカッセルで開催された「100%再生可能エネルギー地域」会議に参加したのでその内容を踏まえ、ドイツの再生可能エネルギー自立地域の取り組みの状況をレポートする。

2007年以降、「100%再生可能エネルギー地域」プロジェクトというものが、連邦環境省後援のもと、分散型エネルギー技術研究所(IdE、Institut dezentrale Energietechnologien) によって、運営されている。このプロジェクトの一部として、毎年開催されているのが、私が参加した「100%再生可能エネルギー地域」会議である。この会議では、先進的な取り組みをする自治体を表彰したり、自治体同士が交流したりする場が設けられている。

昨年は、ドイツだけにとどまらず世界中からおよそ800人が会議に参加した。2日間で1人当たりの通常の参加費が320ユーロ(当時約32,000円)ということを考慮すると、大盛況といえよう。ちなみに、自治体関係者はおよそ半額で会議に参加できる。学生の私には、なかなか高価な参加費に少しためらったが、会議主催者と交渉した結果、自治体関係者と同じ半額で参加できることになったので、せっかくの機会を逃すまいとカッセルへ向かった。

参加者リストを見てみると、自治体関係者や、エネルギー関係企業、環境NGO、環境系研究機関からの参加者が多い。会場内の印象をふりかえると、かっちりビジネススーツを着用した仕事モードの男性が多かったように思うが、学生っぽい若者や、ドレッドヘアーのカジュアルな格好の女性も見受けられた。彼女はベルリンでも環境・エネルギー関連の会議に参加すると、よく見かけるので、今度チャンスがあったら話しかけてみようと思う。話が少しそれてしまったが、仕事の一部という感じで参加している人が比較的多かったようだ。

プロジェクトの成果

100%再生可能エネルギー地域会議の会場

100%再生可能エネルギー地域会議の会場

さてこれまで、「100%再生可能エネルギー地域」プロジェクトによって、ドイツ国内で合計136地域が「再生可能エネルギー地域」として認定された。これは、面積でいうと、106,000㎢に達し、2,130万人もの人々が認定地域に居住していることになる(2013年1月時点)。ドイツ全土の人口がおよそ8,000万人超なので、4人に1人が「再生可能エネルギー地域」に住んでいる計算になる。

この「再生可能エネルギー地域」としての認定を受けるためには、まず各自治体がこのプロジェクトに応募し、プロジェクトチームが33項目について自治体の取り組みを審査する。再生可能エネルギー促進のための目標、計画、情報公開、地域のネットワークの有無、市民主導の再生可能エネルギー施設、現時点での電力・熱分野における再生可能エネルギーの占める割合などの項目で、一定のレベルに達することができれば、晴れて応募自治体は「再生可能エネルギー地域」の称号を得ることができる。新しく認定された地域は、会議の場で多くの参加者の前で表彰されていた。

100%再生可能エネルギースターター地域として表彰を受ける自治体関係者の皆さん

100%再生可能エネルギースターター地域として表彰を受ける自治体関係者の皆さん

認定地域は、「100%再生可能エネルギー地域」、「100%再生可能エネルギースターター地域」と「100%再生可能エネルギー都市」の3カテゴリーに分類される。少し、紛らわしいのは「100%再生可能エネルギー地域」の称号を得たからと言って、必ずしもそのすべての地域が実際に電力・熱を全て再生可能エネルギーで賄っているわけではないことだ。

規模が小さめの地域で「100%再生可能エネルギー地域」に認定されているところは、実際にその多くが再生可能エネルギー電力の高い自給自足率を誇っている傾向がある。その一方で、大・中都市など電力需要量が多い地域で野心的な目標を立てて再生可能エネルギーの普及に励んでいるところは、比較的エネルギー自立度が低くても、その取り組み姿勢が認められ認定を受けることもある。このプロジェクトでは、再生可能エネルギーを推進しようという“取り組み”や“政策”の内容がとても重視されているようだ。そのため、例えば地理的に自然エネルギー源に富み、偶然域内に多数の風力発電施設があるゆえに、再生可能エネルギー自立を達成している地域があったとしても、それだけでは「100%再生可能エネルギー地域」を名乗れるわけではないのだ。

もちろんこのプロジェクトの認定地域の中には再生可能エネルギー政策を野心的に進めたうえで、その努力の結果、実際に100%を達成しているところが多数存在する。電力分野で実際に100%を達成している地域のうち、面白い事例があるので以下に2つ紹介する。

例えば、ドイツ北部に位置するアラー・ライネ・タール(Aller Leine Tal)は、14自治体から構成される地域で、およそ75,000人の人口を有している。比較的大きな地域ではあるものの、市民主導の再生可能エネルギー推進の取り組みが功を奏し、再生可能エネルギーによる発電量は域内電力需要量の126%に達している。再生可能エネルギー自立地域が、田舎で自然資源にあふれ、人口の少ない地域に多いことを考えると、このような規模の地域で実際に再生可能エネルギーによる電力自給を達成したことは注目に値するだろう。

他にも、ドイツの高レベル放射性廃棄物処分場侯補地(現在は、白紙撤回)として、数々の原発反対運動が繰り広げられてきたゴアレーベンが位置するリューヒョウ・ダンネンベルグ(Lüchow Dannenberg)も再生可能エネルギーによる発電量が域内電力需要量を上回っている。原発反対運動が再生可能エネルギー推進運動と密接に結びつき、成果をあげた良い例ではないだろうか。

ただし、再生可能エネルギー自立の達成には、まだ大きな課題がある。例えば、寒いドイツは暖房に使用する熱エネルギー量が多いため、再生可能エネルギーの熱供給は電力の自給自足と比較してまだ難しいようだ。

映画『第4の革命』の続編が公開?!

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会議では、講演やディスカッションの場以外に、会場内に様々なブースが設けられ、参加者同士の個々の交流の場となっていた。映画『第4の革命』の続編の宣伝ブースも存在した。次の映画の題名は『ドイツのエネルギー童話(Ein deutsches Energiemärchen)』で、「100%再生可能エネルギー地域」にも認定されているドイツ南西部シュヴェービッシュ・ハル(Schwäbisch Hall)市内の小さな村ホーエンローエ(Hohenlohe)が舞台。監督は前作と同様カール・A・フェヒナー氏である。前作『第4の革命』では、世界各地での、エネルギーシフトの取り組みが紹介されていたが、続編では、実際にエネルギーシフトがどうやって実行されているのか、ドイツの地域レベルの具体例を追ったドキュメンタリー作品になる予定だ。現在は、今年末の公開を目指して、映画製作のためのスポンサーを募っており、予告編もすでにオンラインで公開されている。最近、映画『第4の革命』がオンラインで無料で公開されるようになったようなので、興味のある方はまずはそちらをご覧になってはいかがだろうか。

参考サイト:

  •  「100%再生可能エネルギー地域」プロジェクトのサイト(ドイツ語)
  •  アラー・ライネ・タールの再生可能エネルギープロジェクトグループのサイト(ドイツ語)
  • 分散型エネルギー技術研究所(IdE: Institut dezentrale Energietechnologien)レポート(2013)『100%再生可能エネルギー地域(100%Erneuerbare-Energien-Regionen)』

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