欧州議会、使い捨てプラスティックの使用禁止を決定

永井 潤子 / 2019年4月14日

©️Marco Verch

ストラスブールにある欧州議会は、3月27日、使い捨てのプラスティック製のストロー、ナイフやフォーク、コップなど10品目の生産や販売を2021年以降禁止するという基本方針を、賛成560票、反対35票、保留28票の圧倒的多数で最終的に承認した。欧州連合(EU)加盟各国は、この基本方針に沿った国内法を2021年までにそれぞれ制定しなければならないが、法制化が整えば、2021年以降ヨーロッパの市場から、これらの使い捨てプラスティック製品が姿を消すことになる。

使い捨てプラスティック製品の禁止に関する基本方針は、昨年5月、欧州委員会が海洋のプラスティック汚染対策として提案したもので、以来、その原案に基づき、欧州議会や欧州理事会で検討、審議が続けられてきた。そして原案よりさらに野心的な目標が加えられた最終案について、加盟各国代表はすでに昨年12月に合意に達していた。その最終案が、今回、欧州議会で正式に承認されたのである。

使い捨てプラスティックの禁止品目を以下に列挙する。ストロー、皿などの食器類、食事に必要な一式(ナイフ、フォーク、スプーンなど)、風船の軸の棒、コーヒーをかき混ぜる小さな棒、綿棒、コーヒーなど熱い飲料を持ち歩きできるポリスチロール製のコップや容器。その他、これまで環境に優しいとみなされてきた「酸化型生分解性プラスティック」のポリ袋も禁止されることになった。酸化型生分解性プラスティックというのは、石油由来の樹脂をベースにした生分解性プラスティックのことで、日光や酸化によって自然に分解が進むものの、従来の石油から作るプラスティックがベースになっているため、禁止されることになった。これは野菜や果物などを入れる薄いポリ袋などだが、分解された結果直径5ミリ以下の小さなマイクロプラスティックが大量に発生し、これが海洋や土壌を汚染することがわかって、審議の過程で、禁止品目に加えられた。ドイツでは、厚めのプラスティックの買い物袋の使用は減ったが、薄いポリ袋は、より安全だとみなされて、使用量が増え続けているという。

©️ Bo Eide

 

なぜ、これらが禁止の対象になったかというと、EU域内の海岸276カ所で、プラスティックゴミの検査をしたところ、最も多かったのが、これら使い捨て食器類やストローなどで、これらのゴミだけでプラスティックゴミの70%以上を占めたためだったという。しかし、今回禁止品目になったのは、プラスティックに代わる代替製品があるものに限られた。例えば、カクテルなどの飲み物を飲む時に使われるストローは、プラスティックの代わりに元々の藁や竹など自然の材料を使ったもののほか、食べられるものまで、すでに出回っている。

こうした禁止アイテムを見ると、綿棒やストローなど小さなものが多く、これだけではプラスティックの害をストップできないのではないかと批判したくもなる。しかし、今回決定されたEUの基本方針は、ほかにも厳しいプラスティック規制の方針を打ち出している。例えば代替品がないとして、今回の禁止品目からは外された、テークアウト用のハンバーガーなどの使い捨て容器や果物、野菜、デザートなどの容器についても、2025年までに最低25%削減することが義務付けられる。また、2025年までにペットボトルのリサイクル率を90%以上にするという目標も掲げられている。欧州委員会によると、欧州域内では回収され、再利用されているプラスティックゴミは、全体のわずか3分の1しかないということである。飲み水について欧州委員会はすでに、公共の水飲み場を各地に増やすよう提案したり、安くて質のいい水道の水を飲むよう、市民に呼びかけたりしている。

今回欧州議会で承認された基本方針には、さらに、タバコと漁具の製造責任者は、投棄されたり紛失したりした自社製品の回収や輸送、処理の費用を分担する責任があるとも規定されている。ヨーロッパでは、タバコはゴミの中で2番目に多く、特にフィルター部分のプラスティックの害が問題になっている。巻きタバコの包装には「環境に害がある」という警告の文章を印刷することも義務付けられる。また漁業用の網その他の漁具は、海岸のゴミの27%を占めていると言われ、これらの商品のメーカーは、商品のライフサイクル全体の責任を負うことが求められている。

この欧州議会の決定を受け、ドイツのスヴェンニャ・シュルツェ環境相(社会民主党、SPD)は「この基本方針は速やかに実施されなければならず、ドイツは必要な立法措置を2021年以前の出来るだけ早い時期に終わらせるよう努力する」と語った。ドイツ出身の欧州議会議員、ペーター・リーゼ氏(キリスト教民主同盟、CDU)は、「今回の最終案が承認されたことを歓迎する。風船を飛ばすこと自体を禁止するよう求めた緑の党のオーバーな要求を、阻止できたのは良かった」と語り、同じくドイツの欧州議会議員、ヨー・ライネン氏(SPD)も「今回の具体的な政策に関する決定は、環境に対するプラスティックの悪影響をかなり削減することになる」と見て歓迎している。

産業界や商業関係者の反応はまちまちだ。ドイツ産業連盟の環境問題担当、クラース・エールマン氏は「法律に基づいて生産しているプラスティック製品も禁止品目に含まれている。今回の禁止品目にさらに次から次に禁止品目が加えられる恐れがある」と、不満の意を隠さない。マクドナルドなどのファーストフードのチェーン店は、使い捨てプラスティックに変わる容器の開発を迫られるが、コーヒーのスターバックスは、プラスティックの棒を2020年までに廃止する意向を明らかにしている。ReweやLidlなどのスーパーマーケットも、使い捨てプラスティックを商品から除外する努力を速やかに進める意志を表明している。しかし、タバコメーカーは、タバコのゴミの回収や処理費用をメーカーだけが負担しなければならないことに不満を表明しており、公的な支援を要求している。もし、この基本方針が実現されると、タバコの値上げにつながるとも見られている。

いずれにしろEUは、プラスティッィク汚染を食い止める具体的な第一歩を踏み出そうとしている。このプラスティック規制措置が、使い捨てプラスティックの危険に対する消費者の意識を高め、食品のテークアウトや歩きながらコーヒーを飲むという最近の生活習慣を見直すきっかけになることを期待したい。

なお、海洋の汚染は、死んだ鯨の体内から多量のプラスティック製品が発見されるといったドラマチックな現象がきっかけで、環境や生態系に与えるプラスティックの負の影響に対する危機感は高まった。しかし、直径微細なマイクロプラスティックによる土壌汚染の深刻な事態については、まだそれほど知られていないし、実態の研究もあまり進んでいない。このテーマについては、別の機会にお伝えしようと思う。

Photo ©️Marco Verch, flickr: Nahaufnahme farbige Plastick-Strohhalme von vorne für Fruchtsäfte und andere Getränke.

Photo ©️Bo Eide, flickr: Marine little. Fisch boxes from far aways.

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