ドイツの電気料金、欧州最高

ツェルディック 野尻紘子 / 2018年7月29日

ドイツは以前から、欧州連合(EU)内で電気料金が最も高い国の一つだった。しかし今まではいつも、どこか他の国の電気料金の方が高かった。ところが、先ごろEUの統計局であるEurosat が発表した統計によると、ドイツの電気料金は2017年にデンマークを抜いてEU最高になってしまった。政界と業界は驚きを隠しきれず、何がドイツの電気料金を高くしているかについて、話し始めている。

Eurosat によると、電力の年間消費量が2500 kWh 以下の一般家庭の1kWh当たりの電気料金は、ドイツの場合33.6 ユーロセント(約44円)で、これはデンマークの32.9 ユーロセントより高い。この他、30ユーロセントを超す国にはベルギー(31.0ユーロセント)がある。料金が20ユーロセント代なのはスペイン(28.6ユーロセント)とオーストリア(24.3ユーロセント)。これに英国(19.9ユーロセント)、フランス(18.9ユーロセント)、ポーランド(16.0ユーロセント)、オランダ(10.6ユーロセント)、ブルガリア(9.6ユーロセント)などが続く。電力の年間消費量が5000 kWh までの場合でも、料金は大きく変わらないという。

業界団体であるドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW )のカプフェラー代表は「欧州内の比較で、ドイツ国家がいかに多くの料金を国民から徴収しているかが明瞭になった」と発言した。ドイツの電気料金には、純粋な電力の価格(発電・送電・小売費など)以外に、税金や課徴金、賦課金が多く含まれており、それらが電気料金に占める割合は2017年に54%に達している。2006年との比較では2倍以上だという。

国が徴収している料金とは、電力会社が事業を行うために地方自治体に支払う課徴金、再生可能電力促進のための賦課金、コージェネ促進のための賦課金、送配電網利用費、電力税などだ。そして国は、これらの負担金と純粋な電力の価格の両者に、さらに付加価値税を上乗せして、電気料金を高くしている。このうち特にウェイトが大きいのは再生可能電力促進のための賦課金(1kWh当たり6.88 ユーロセント)と送配電網利用費(同7.48ユーロセント)だが、付加価値税(同4.66ユーロセント)も決して少なくない(以上の値はBDEWの発表による)。

「国がこれほど多くの負担金を徴収することは、理解に苦しむ。変更が必要だ」と主張するのはBDEWのカプフェラー代表だ。ドイツ商工会議所のシュヴァイツァー会頭は、ドイツの企業用電力の料金も欧州一であることを指摘している。そしてEUから厳しくチェックされている、国際競争に立たされている電力多量消費企業に対する再生可能電力促進のための賦課金の一部免除ついて、「免除を受けている企業は、少数に限られている」と強調した。「再生可能電力促進のための賦課金は、少なくとも一部を税金で賄うべきだ」とも述べた。

新聞の社説などは、電力税に付加価値税を上乗せすることを「ダブル徴収」と批判している。納税者連盟は、付加価値税の税率を、通常の19%ではなく、基本的な食料品などと同じように7%に軽減するべきだと主張している。社会民主党の経済政策担当者は、賦課金の廃止と二酸化炭素税の導入を提案している。「国民は今までドイツのエネルギー転換を支持してきたが、高い電気料金のために、今後支持しなくなるのではないか」と危惧しているのは自由民主党だ。

なお、BDEWの発表では、2017年のドイツの電気料金は1kWh当たり29.16 ユーロセントになっている。Eurosat とBDEWの数値に差があるのは、業界関係者によると、調査方式が異なるためだという。ドイツでは、自国の電気料金に関して通常、BDEWの数値を使っている。そのためEurosat の33.6 ユーロセントという数値はドイツの政界と業界にとり意外だった。しかしドイツのエネルギー転換の現状を客観的に知るには、このEurosat の統計は有意義である。

 

 

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