ドイツの二酸化炭素排出量、2020年は1990年比でマイナス40.8%

ツェルディック 野尻紘子 / 2021年4月4日

日本と同じように、地球の温暖化を避けるために 2050年までの「カーボン・ニュートラル」を宣言しているドイツは、昨年、二酸化炭素の排出量を1990年比で40.8%削減した。これでドイツは、独自に立てていた「 二酸化炭素の排出量を2020年に1990年比でマイナス40%にする」という削減目標を達成したことになる。ドイツ連邦環境庁がこのほど発表した『2020年度気候保護報告書』で明らかになった。

電力大手RWE のノイラート褐炭火力発電所 ©️RWE AG

報告書によると、昨年のドイツの二酸化炭素排出量は7億3900万トンで、1年前の2019年比で7000万トン、8.7%も減った。削減の3分の2は ① 再生可能電力が増加したこと、② 発電に石炭に取って代わって天然ガスがより多く用いられたこと、 ③ 欧州の二酸化炭素排出権取引制度(EU-ETS、European Union Emissions Trading System)の効果が大きかったことなどに帰するという。しかし削減の3分の1は、コロナ禍に由来するという。報告書は、コロナの影響が無ければ、二酸化炭素の削減値は1990年比でマイナス39%にとどまっただろうと指摘している。

二酸化炭素が特に大きく減ったのは発電分野で、この分野で実際に排出された二酸化炭素は2億2100万トンで、前年比マイナス14.5%だった。この削減に貢献したのはまず、褐炭火力発電が減ったことにある。二酸化炭素排出権の値段が高かったので、二酸化炭素を大量に排出する褐炭火力発電が採算に合わなくなったのだ。また、二酸化炭素を褐炭のように大量に排出しない天然ガスが安価だったことも褐炭火力発電にブレーキをかけた。

再生可能電力がドイツの全電力消費量に占める割合は、昨年過去最高の45%に達した。昨年のドイツの電力消費量はコロナ禍で4%減っている。その中で、再生可能電力の全消費量に占める割合が増えたということには、発電量が増えたことだけでなく、再生可能電力を優先的に送電網に取り入れるという「再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)」も影響している。つまり、再生可能電力はいつも、褐炭や石炭、あるいは天然ガスを燃やして作る電力より優先的に送電網に取り込まれるので、再エネの電力が増える時には、化石燃料を燃やして作る電力は発電量を減らさなくてはならなくなるのだ。本来なら、このことは原発にも適用されなくてはならないのだが、原発は動きが鈍く小回りが利かないので、再生可能電力の発電量に応じて発電量を増減することはほとんど 出来ない。

交通分野での排出量は1億4600万トンで前年比マイナス11.4%だった。コロナ禍でロックダウンが敷かれて、人々の移動が制限されてしまった事が大きく影響した。特に車で遠乗りをする人が減った。また、国内航空は前年比で60%も減り、その影響で100万トンの二酸化炭素排出量が避けられたという。工業生産分野の排出量は1億7800万トンで、前年比マイナス4.6%だった。農業分野の排出量は6600万トンで前年比マイナス2.2%になった。

ドイツでは2020年1月に、ドイツ政府が2019年に決めた「気候保護法」が施行された。この法律では、2030年のドイツの二酸化炭素排出量を1990年比でマイナス55%と決めており、そのために各分野の1年毎の二酸化炭素の排出量が設定されるようになっている。この法律で、ドイツの気候保護目標値が初めて法律的に拘束力のあるものになったのだ。そして決められた目標値が達成されない場合には、その分野の管轄省が『気候保護報告書』で指摘される。今回この規定に引っ掛かったのは建物の分野で、連邦内務・建設・郷土省と連邦経済・エネルギー省の管轄だ。2020年に建物などから排出された二酸化炭素は増えはしなかったが、この法律で設定された値を超えてしまったのが原因だ。4月には気候問題専門評議会 が意見を述べ、両省は短期間内に、どのような方法でその目標値を達成するかという案を専門委員会 に提出し、実行に移さなければならない。

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