「日本は、実は歴史上最大の脱原発を成し遂げている」
びっくりするようなタイトルが目に飛び込んできた。確かに、日本にある54基の原子力発電所のうち、現在唯一稼動している泊原子力発電所3号基が5月5日に定期点検のため停止すれば、日本は事実上「脱原発」を成し遂げたことになる。オンラインで再生可能エネルギーに関するビジネス情報を配信しているドイツの「再生可能エネルギー国際経済フォーラム(IRW, Internationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien)」は、現在の日本の状況をこのような見出しで言い表している。
このタイトルが、脱原発を決定しながらもなかなか具体的な進展が見られないドイツの状況を皮肉っているのか、それとも再稼働を目指して動く日本政府を牽制しているのか、あるいは淡々と事実をそのまま述べているのかは、個人の判断に任せるとしよう。去年のこの時期、ドイツでは福島の原発事故のショックから脱原発へと舵を切ろうとする大きな政治的うねりが起きたことは周知の事実である。しかし、一年後の今、エネルギー転換という政策が具体的な進展を見せる展開には至っていない。その結果、メルケル首相への批判は高まり、さらに太陽光発電促進政策の見直しなど、再生可能エネルギーに逆風が吹いているかのような印象を持ってしまう。
しかし、4月11日付のベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)」の小さな記事を見て驚いた。その記事には、今年1月から3月までのドイツでの太陽光および風力による電力生産が前年の同時期に比べて大きく伸びていることが書かれていた。ドイツ全国ソーラー経済連盟(BSW, Bundesverband Solarwirtschaft)」の発表によると、1月から3月にかけての太陽光による発電量は約3900GWhで、前年に比べて40%強の増量であり、この発電量はおよそ400万世帯の電力消費を賄うという。また風力発電について見ると、ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW, Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)は、去年の1月から3月にかけての風力による発電量が1万1594GWhであったのに対し、今年は同時期に1万5682GWhの電力が生産されたと発表している。これは前年比約35%の増量に相当する。風力発電の伸びは、強い風の吹く日がこの冬には多かったことが原因とされている。再生可能エネルギーはドイツの電力にとってますます大きな位置を占めるようになっていることが明らかになっている。
また、4月10日付の同紙には「糞尿でもっと利益を」と題した記事が載っている。農家や酪農経営者たちが共同で再生可能エネルギーによる電力生産にも取り組む事業を立ち上げようとしているというのだ。実際、太陽光による電力を生産する発電設備の20%は農業経営者によって運営されている。今のところ、自分たちが使うための電力生産が主となっているが、大きく見直しを受けた太陽光発電だけではなく、バイオマスによる電力と熱の生産を通して、農家や酪農家たちがエネルギー生産者にもなることを目指している。トウモロコシや甜菜類を電力会社に供給するために栽培していた農家に対し、自分たちの農場に独自あるいは共同で発電設備を作り、自らが発電者になるというのである。大手電力会社に対して農業経営者たちが反旗を翻したことになる。
原子力エネルギーが大手電力会社の“専売特許”であるとするなら、再生可能エネルギーは独占ではなく、いわば電力の“ゲリラ”という側面を持っているというのは言い過ぎだろうか。「歴史的な脱原発を成し遂げている」日本こそ、再生可能エネルギーにとって「最大のビジネスチャンスの場である」と前述の再生可能エネルギー国際経済フォーラムは述べている。
Pingback: 久々のデモ。
Pingback: 久々のデモ。 | Lügenlernen
小規模発電の話は、ドイツではチラホラ聞きますが、日本では
あまり取り組まれていないのでしょうかね。
それとも私が知らないだけでしょうか。
日本の農家は、縮小気味で、それどころではないのかも
しれないなーという印象もありますが…。