ドイツの電気はますますみどりに

あきこ / 2011年12月21日

「みどりの1kWh」という私たちのサイトにぴったりのニュースが一年の最後に飛び込んできた。ベルリンの日刊新聞ターゲスシュピーゲル(Der Tagesspiegel)の12月17日付の新聞に、「電気はますますみどりに」という大きな見出しが躍っている。オンライン版シュピーゲル(Spiegel Online)は、「再生可能エネルギーが原子力と石炭を抜く」というやや散文的な見出しである。このニュースについては、日本でもNHK、毎日新聞などで報道されたようである。

さて、私たちのサイトでもすでに何度か登場しているドイツ連邦エネルギー・水利経済連盟(BDEW, Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)は、2011年のドイツにおける総発電量において、再生エネルギーの割合が約5分の1に達する見込みであることを発表した。下記の表が示しているように、1位は褐炭で、それに次いで2位に再生可能エネルギーが入っている。19.9%の内訳をさらに詳しく示しているのが2つ目の表である。脱原発が決定されたことによって、老朽化した原発が停止された結果、原子力発電の占める割合が22.4%から17.7%に後退した。その代わりに再生可能エネルギーが19.9%を占めるようになったのだ。

風力エネルギーの関係者は、「我が国のエネルギーを100%再生可能エネルギーによる供給へという方向転換が良い方向に進んでいる」と胸を張る。ドイツ連邦環境省は2020年までに電力生産に占める再生可能エネルギーの割合を35%にするとしているが、レトゲン環境相はこの数値を越えることにも自信を見せている。

しかし、ドイツ連邦エネルギー・水利経済連盟幹部は、再生可能エネルギーの割合が増加したことによって、システム全体への圧力が強まることを懸念している。何よりもまず送電網の拡充が必要である。ドイツ北部の海岸線あるいは東部にある大規模風力発電施設から、電力消費の高い南部と西部への送電網の整備が急がれる。ドイツ政府は、送電網を運営する大手企業4社に対して、ドイツを南北、東西にかけめぐる送電網の設置を早急に実現するように求めている。2012年春には、エーオン社(E.On)の旧子会社であったテネット社(Tennet)が全長900Kmの南北を縦断する送電線の詳細な計画を発表する予定だ。マグデブルクからライン・マイン方面に至る全長東西600Kmの送電線の設備についても、すでにドイツ連邦エネルギー・通信網エージェンシー(Bundesnetzagentur)に建設の許可申請が出されている。ドイツ南西部では、アンプリオン社(Amprion)とEnBW社がやはりラインラントからシュトゥットガルト方面への送電線の新設を計画している。しかし、これらの送電網の整備には早くても8年以上の年月が必要という見方もある。この点については、すでにこのサイトでも「問題をはらむ送電網」と題する記事で指摘されている。

さらに自然の要因に左右される再生可能エネルギーには、安定的供給を保証するための電力備蓄の技術と備蓄のための設備拡充が欠かせない。脱原発の政策で大きな打撃を受けた電力会社は、政府に対して政策転換によって受けた経済的打撃に対する賠償を求めて裁判を起こす一方で、従業員解雇といった厳しい対策を講じている。エーオン社では約6000人が解雇される様子だが、労働組合はコジェネレーションやバイオマス生産設備の増設、顧客サービスの分散化、ガス発電所の充実、備蓄技術の開発などを通じて、利潤の増大と従業員の確保を目指すように求めている。

福島の事故に対して、ヨーロッパ諸国の中で最も過敏に反応したドイツは、再生可能エネルギーへの道をどの国よりも着実に歩み出している。しかし、この道が決して平たんなものではないことも知っておかなければならない。電力会社は、電気代の値上げ、電力のブラックアウトといった表現によって、再生可能エネルギーが一般市民に対価を求めることを強調している。また、今後も注目していかなければならない点として、欧州委員会が2030年までに40基の原発の新設をも顧慮していることである。ドイツ政府の脱原発とは正反対の方針がヨーロッパレベルで進められている。しかもその委員の一人がドイツのギュンター・エッテインガー氏(Günther Oettinger)である。さらにドイツ政府は、ブラジルのアングラ原子力発電所の3号機新設に対して、13億ユーロ(約1350億円)の輸出信用保証期間を延長することを決定(実行されるかどうかは、福島での事故を検証した上で、安全が確認されることが条件となっている)しており、みどりの党は政府の「二枚舌」ぶりを激しく非難している。

脱原発を政策決定したとはいえ、決して安穏ではないドイツの実情を魔女たちは見続けていくつもりだ。

 

ドイツにおける総発電量のエネルギー源

エネルギー源

2011年

2010年

 褐炭

24.6%

23.2%

 石炭

18.7%

18.6%

 再生可能エネルギー

19.9%

16.4%

 天然ガス

13.6%

13.8%

 石油、揚水発電

4.2%

4.3%

 原子力

17.7%

22.4%

 

再生可能エネルギーの詳細

再生可能エネルギー源

2011年

2010年

 風力

7.6%

6.0%

 バイオマス

5.2%

4.4%

 水力

3.1%

3.3%

 太陽光

3.2%

3.2%

 廃棄物

0.8%

0.8%

 

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