犬を飼うより、映画を見に行きましょう
ロンドンに住む次女お勧めの映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」を見に行きました。月曜日は“ブルーマンデー”でチケットが普通の日より安く、映画館は週末と違って空いています。ロビーで開演を待っていると、自然電力会社のポスターと額に入った認定書が目に入りました。
「ヨーク映画館有限会社は100%自然電力を使用していることを証明します」とサイン入りの認定書でした。社は市内に12の映画館を持つ、ベルリン一の映画館経営グループです。今回私たちが行ったカピトール映画館は、その施設の一つで、ベルリン自由大学のキャンパスにあります。1994年からヨーク映画館グループが経営を引き継ぎました。カピトール映画館は、1928年に広い敷地の住宅街ダーレムに邸宅として建てられました。帝国映画院総裁だったカール・フレーリッヒがここに移転したのは1941年でした。映画監督であったフレーリッヒが自宅用の映画上演室として増築したのが現在の映画館です。1962年から1994年までベルリン自由大学がこの建物を所有していました。その当時自由大学で勉強していた友達の話では、学生映画館の経営者は毎晩観客一人ひとりを握手で迎えたそうです。
ヨーク映画館有限会社の名前は、ベルリン・クロイツベルグにある映画館Yorck Kino(ヨーク・キーノ)からきています。ヨーク・キーノは、学生や下町庶民が愛用していた古びた映画館でした。1970年代後半、当時学生だった仲間がヨーク・キーノを受け継ぎました。彼らは経営困難に陥っていた映画館を回復させていきました。そして映画配給会社がここで好んで封切り上映をするようになり、観客数が増えていきました。1980年代の前半から20年間、ヨーク映画館グループは次々と伝統ある映画館を引き継いでいきました。現在、ベルリン市内の全館を合わせると、客席の数は5000に上るそうです。
「ヨーク映画館グループは使用電力を自然エネルギーに変えます。エネルギー転換を実現させるため、そしてお客様がCO2排出量ゼロの電力で映画鑑賞を楽しむことができるように努めたいと思います」と観客にも自然電力会社(naturstrom社)に変えるように呼びかけています。この電力会社に変えた観客には同館からチケットが4枚プレゼントされるそうです。
我が家は既にシェーナウ電力から100%自然エネルギーを買っているので4枚のチケットは残念ながらもらえない、などと思いながらnaturstrom社のサイトを訪ねてみました。
naturstrom社はデュッセルドルフとフォルヒハイムに本拠を置く電力供給株式会社です。創立されたのは1998年でまだ新しい企業ですが、既に1999年に「ドイツソーラー賞」を受賞しています。更に、2013年度の「ヨーロッパソーラー賞」、2014年度の「ドイツ持続可能賞」を受賞したことを知りました。
社の供給している電力資源の内訳を見ると全体の55.3%が水力、24.5%が風力、20.2%がその他EEG1)で優先されている再生可能エネルギーとあり、1kWh発電時のCO2排出量および、放射性廃棄物の発生量はもちろんゼロでした。ドイツ平均値の場合、石油、石炭などの化石燃料は全体の58%を占めているので、1kWh発電時のCO2排出量は511gもあります。
ヨーク映画館グループが経営している映画館の消費電力が今100%自然エネルギーに代わると、削減できるCO2排出量は相当なものだと考えていると、「首都ベルリンと飼い犬」という記事が目に入りました。ベルリンの飼い犬の数は10万匹。毎日落ちる糞の量が50トンを越えるそうです。ダックスフントなどの中型の犬一匹当りのCO2年間排出量は1.8トンと推測されています。(これには糞を取り除く清掃車による排気ガスは含まれていません)。となるとベルリン市全体の犬のCO2年間排出量が18万トン。せっかくヨーク映画館が減らした量が無になっているのでは………。
EEG1)再生可能エネルギー優先法
Capitol Dahlemについて
カール・フレーリッヒについて
日本では、犬の糞は飼い主が拾って持ち帰っています。ドイツでは犬の散歩の際の糞は放置状態なのでしょうか?
[NHK国際放送:元英語アナウンサー]
このごろは袋を持って犬の散歩に出る人がいるようですが、放置状態の糞はまだ普通です。ドイツ人と犬の関係についてかなりの分厚い論文が書けると思います。