「すべてのいのち、生きらるべし」 - 原発に依存しない社会の実現
4月半ばから2カ月の予定で帰国している。その期間を利用して、京都の街中をゆっくりと歩いて回ることにした。民家が立ち並ぶ街中に、静かな佇まいのお寺がたくさんあることに気づく。その一方で、“京都の顔”とも言えるような、観光客が大勢訪れるお寺も市内のあちこちにある。京都駅のすぐ近くに「真宗大谷派」の本山、東本願寺がある。現在、阿弥陀堂が修復中ということで、何となく殺風景な感じを受けたが、正門手前に掛けられた掲示板に目が止まった。
正門の右横に2つの掲示板が掛けられていて、一つは「真宗大谷派(東本願寺)概要」となっており、開祖、門戸数、寺院数などが書かれている。目が留まったのはもう一つの掲示板で、そこには「原子力発電に依存しない社会の実現に向けて」と大きく書かれていた。これを見て思わず足が止まり、ずっと最後まで読んでしまった。そこには次のように書かれていた。
原子力発電に依存しない社会の実現に向けて
今年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震にともなう東京電力福島第一原子力発電所事故により、多くの人々の生命や人権が侵され、苦難の日々が今なお続いております。
真宗大谷派では、宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌にあたり、「今、いのちがあなたを生きている」というメッセージを発信いたしました。そこで、「すべてのいのち、生きらるべし」との願いのもと、下記の要望を申し上げます。
これらの要望の実現にむけて、真宗大谷派としても極力ご協力させていただく所存でございます。
記
1.放射能汚染された地域の放射線量を継続的に測定し、住民にお知らせください。そして、故郷での元の生活ができるよう除染を進めてください。
2.除染が不可能な地域においては、特に妊婦、乳幼児、学童・生徒の避難措置を早急に実施してください。
3.住民の被ばくについては、あらゆる暗転から外部被ばくと内部被ばくを評価して、長期にわたる健康管理と生活支援を行なってください。
4.原子力発電所事故による放射能飛散と被ばくの痛ましい現実から、原発の誤謬性を思い知らされました。未来を生きる子どもたちのためにも、一刻も早く原発に依存しない社会の実現を推進してください。
以上
2011年12月28日
真宗大谷派(東本願寺)
内閣総理大臣
野田佳彦様
掲示板に書かれた日付から3年以上が過ぎ去っている。首相も当時の野田首相から安倍首相に変わった。入口横に掲げられた掲示板には、真宗大谷派の概要として、「門戸数130万戸(推定500万人)、寺院数8800カ寺、僧侶3万3000人」と書かれている。これだけ多くの信徒、僧侶の要望が政府に届いたのだろうか。それとも政権が変われば、要望も意味を持たなくなるのだろうか。京都にある数多くの神社仏閣の中で、原子力発電所についてこれほど明確なメッセージを送っているところはない。東本願寺が発する要望が信徒だけではなく、京都を訪れる多くの人の目に触れることを願う。
関連リンク:
http://www.higashihonganji.or.jp/news/declaration/426/