アシナガワシ vs サイクリング vs 再生可能エネルギー
ARVE Error: id and provider shortcodes attributes are mandatory for old shortcodes. It is recommended to switch to new shortcodes that need only url
動画をご覧ください。両翼を広げると1.5メートル近くに及ぶ鷲です。ラテン名はAquila pomarina、ドイツ語ではシュライアドラー(Schreiadler)という名で知られています。シュライは「叫び(声)」とか鳥の「鳴き声」といった意味があります。この鷲の鳴き声はかなり高く、ドイツ人の耳には「ジュック」とか「チュック」とか聞こえるようです。さて、このアシナガワシの生存が危ぶまれているのです。アシナガワシのドイツでの主な生息地は、ベルリンを取り囲むブランデンブルク州、その北隣のメクレンブルク=フォアポンメルン州、南のザクセン=アンハルト州です。その他、東ヨーロッパにも広がっています。野ネズミ、子ウサギ、大きい昆虫、カエルなどが主な餌で、多少開けた湿地帯にある古い松の木の上方に巣を作ります。毎年9月ごろ、寒さを避けて東アフリカに渡るアシナガワシが、翌年の4月にはヨーロッパに戻って来て、5月から6月にかけて卵を孵し、ヒナを育てます。
ちょうどその時期、長い冬から解放されたドイツ人たちがサイクリングに出かけます。アシナガワシがヒナを孵している湿地帯は、ベルリンの人たちに人気のあるサイクリング先です。このことが、ヒナの育成に赤信号を点灯させています。サイクリング愛好者の増加で、アシナガワシが神経質になるのです。もともと子孫の少ない種である上に、都市開発の影響で餌も少なくなっています。ドイツではアシナガワシは最も絶滅の危機にさらされている動物の一つに指定されました。2003年には130組いたツガイが、2006年には109組に減少しているそうです。
旧東ドイツには広大な湿地帯が広がり、アシナガワシに限らず、実に多くの貴重な動植物が生息していますが、それらの中には絶滅が予測されている種がたくさんあると言われています。東西ドイツ統一後、東側の復興はめざましいと言ってもいいでしょう。しかしそれは、とくに自然環境保護団体にとってある種の“痛み”を伴っています。河川、沼地・湿地帯をつぶして造られる高速自動車道路やサイクリング道路に加えて、近年は、風力発電所やバイオガスプラントといった再生可能エネルギー施設が旧東ドイツの広大な土地に設置されています。さらに、ガソリンに代わるエネルギーとして、広大な農地を利用したトウモロコシ栽培も行われるようになっています。
一方ではアシナガワシをはじめ貴重な動植物を絶滅から守ろうとする自然環境保護団体、他方ではインフラ整備としての道路拡充や自然エネルギーのための風力発電設備の建設を進める団体。こうした土地利用をめぐる両者の対立があることを認めながらも、ブランデンブルク州環境省の動植物保全担当官アクセル・シュテフェン(Axel Steffen)氏は悲観的ではありません。というのも30年前には絶滅直前であったオジロワシ(尾白鷲)が、今では150組のツガイに増え、他の鳥類にも繁殖の傾向があるからです。ブランデンブルク州環境省は、絶滅の危機にある種を保存するためのプログラムを今年の夏までに策定する予定です。「このプログラムによって、土地利用をめぐる対立が緩和できるだろう」とシュテフェン氏は述べています。
自然保護、観光促進、再生可能エネルギー獲得の間にある対立が問題になるのはドイツに限ったことではありません。再生可能エネルギーの獲得なしには、地球の存続は不可能の世紀が始まっています。このブランデンブルク州のプログラムの具体的な内容はまだ発表されていませんが、自然保護と再生可能エネルギー獲得が両立することを期待しています。
「開発をしたい地元の人 vs 自然環境について心配する豊かな地域の人」
というのは、発展途上国と先進国でおなじみの構図ですが、ドイツの場合は、
東西格差があるので、国内でそういうことが起こるのですね。