ドイツのプルトニウムも、 米国へ返還?
今年1月末に、米国が日本政府に対し、研究用に提供していたプルトニウムを返還するよう求めてきたというニュースがありました。それを思い出させる話が、このところドイツでも明らかになりました。米国が日本にプルトニウム返還を求めたというニュースは、1月27日の共同通信のものでした。http://www.47news.jp/47topics/e/249732.php
核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした。
このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。
日本側では返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から返還の可能性を探る協議が本格化している。 ≫(共同)
そしてその後、4月にハーグで行われた核安全保障サミットで、オバマ大統領と安倍首相が、日本が米国に高濃縮ウランとプルトニウムを返還することで合意しました。http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJEA2N00I20140324
ドイツで日本人が最も多く住む町デュッセルドルフの近くに、ユーリッヒという小さな町があります。そこにはユーリッヒ原子力研究所があります。そこに保存してあり、処分に困っているキャスター152個分のプルトニウムを米国が引き取る方向で調整が進んでいると、9月11日の南ドイツ新聞が伝えました。既にノルトライン・ヴェストファーレン州のエネルギー省の代表が何度も米国ワシントンへ足を運び、米国エネルギー省と話をしており、ドイツ連邦教育研究省もそのために2014〜2018年度に、計2億5千万ユーロ(約350億円)という予算を組んでいるそうです(ゴミを返還するだけでこんなにお金がかかるなんて!)。
このユーリッヒ研究所にある原子炉は、もともと実験炉として1959年に稼働を始めましたが、1988年に停止され、現在廃炉作業中です。この原子炉で使われてきた核燃料は、テニスボールのような球状のもので、他の核燃料と比べると、核分裂性のウランがずっと多く含まれているそうです。20年間、商業用原子炉として運転されていたこともあり、国際原子力機関も商業用原子炉として登録しています。でも、米国が引き取ることができるのは研究を目的に使用された使用済核燃料と決まっているため、この原子炉を再び「実験炉」と見なすそうで、それを疑問視する声も出ています。
この他にも、ルール地方のハムという町にも現在廃炉作業中の原子炉があって、そこにはキャスター300個以上の核のゴミが中間貯蔵されています。このゴミの受け入れについても、米国エネルギー省は既に調査を始めたということです。
米国が日本にプルトニウム返還を求めた政治的理由については、日本でもいろいろなディスカッションがあったようです。南ドイツ新聞のこの記事には、ドイツ連邦教育研究省が「米国は、核不拡散政策の枠組みの中で、あらゆる黒鉛燃料体の返還に興味を示している」と説明し、ドイツ連邦政府は「(返還する燃料体の)再利用は、民生用の場合に限ることも契約に織り込む努力をしている」と言っていることが書かれています。米国が核不拡散と言いながら核燃料を引き取り、核兵器を作ることを、ドイツ政府は防ぎたいということです。
さて、ドイツの核燃料は返還されるとしたら、米国のどこへ運ばれるのでしょう?サウス・カロライナ州のサバンナリバー・サイトの再処理工場だそうです。この再処理工場については、ユーリッヒから25kmしか離れていないアーヘン市で発行される新聞、アーヘナー・ナハリヒテンが大変興味深い記事を掲載しています。
詳細は次回、お伝えします。
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