農地の肥料過剰で魚が窒息

やま / 2014年4月20日

01 schaum 1北海の女王と呼ばれているズュルト島を訪れたとき、海岸で見た奇妙な泡。今月初めに掲載された南ドイツ新聞の記事「地球が窒息する」を読み、泡の発生の原因を知りました。

見出しの上に載る写真には泡の海で覆われた家が写っています。海辺に立つこの家は、波に崩される砂のかたまりのようでした。「コーンウォールで見られた泡の発生は藻類の異常増殖にある」とカトリン・ブルガー記者は写真にコメントを付けています。ちなみにコーンウォールはイギリスの最も南西端にある州で、美しい風景と海岸線で有名な観光地です。

問題は過剰な窒素肥料にあり、この肥料が地下水や川、そして海を汚染しているとサブタイトルが続きます。

ドイツにおける水道水の硝酸態窒素濃度が1990年から下がった。それは良い知らせだった。悪い知らせは、最近この割合が上昇していることだ。その原因はトウモロコシなどのバイオマスが発酵された後に残る廃棄物だ。この残物が窒素肥料として農地に施され、地下水を汚染している。

バイオマスは持続可能なエネルギー源として推進されています。「クリミア半島の併合強行」というニュースが報道される中、天然ガスなど国のエネルギーの約35パーセントをロシアから輸入しているドイツにとっては困った事態だと思いながら記事を読んでいきました。

「ドイツの農地は肥料過剰」と専門家たちは警鐘をならす。EUが行った調査によると一般に2000年から2008年までの間、地下水の硝酸態窒素濃度は下がった。しかしドイツは違う。その汚染量はマルタに次ぎEU諸国内では2番目に多い。EU委員会はドイツに対して今、訴訟を準備している。

ドイツの脱原発、エネルギー転換についてネガティブな記事を流しているブロガーが喜びそうな記事だと思いながら次の段落に進みました。

02 12610698793_5e35ed97bc硝酸態窒素の大半は酪農によるものだ。最近、ドイツ人の肉の消費量は減少傾向にある。しかし、輸出向けの肉生産量が増加している。連邦環境庁(UBA)の推測によると、川や海水の汚染の原因となる窒素全量の3分の2以上は酪農が原因だ。家畜の糞尿を使った肥料は更にアンモニア態窒素や亜酸化窒素という物質に分解され、大気汚染を進める。

バイオマスの推進よりも、肉の大量生産に問題があるようです。生産者は質ではなく大量生産で利益を上げようとしています。 (安いたまごの高価な犠牲) 肉食が問題ならば、北海やバルト海の魚を食べればいいのでは、とふと思いました。それに「今までは地中海で獲れていた魚が地球温暖化の影響で涼しい北海やバルト海に“逃げて”きている。この沿岸の漁業は地球温暖化のおかげで得しているかもしれない」という記事を読んだこともあります。

肥料の成分である窒素は植物を成長させる重要な元素だ。家畜ふん堆肥は、生産に必要なエネルギー投入量が多い化学肥料と比べて、環境にやさしい。しかし、植物は肥料に含まれている窒素のある一定の量しか使いきれない。過剰な量の窒素は地下水、そして川や海に流れ込む。この物質を栄養として藻類が増殖して、水面は泡の絨毯で覆われる。水面が濁り酸素不足の海では、海藻や魚類は息ができない。今週、発表された調査結果によると、北海及びバルト海では115年前に比べて酸素不足とされている海域面積は10倍に増えたという。

既に北海やバルト海でも魚が育つ環境が破壊されつつあるのでしょうか。あの写真の家のように、海の魚も肥料過剰の犠牲となっているようです。

地球上の窒素循環のバランスが崩れようとしている。元来、地球に影響を及ぼさない窒素の量は3500万トンといわれている。ところが推測によるとその量は現在1億2千万トンに及ぶ。国際連合食糧農業機関(FAO)は、2050年までにはその量がさらに50パーセント増加するとみている。

膨大な窒素の量を想像しながら、途方にくれていると「消費者にもできることは」と改行があり、記事が続きました。

地球温暖化の主な原因とされる温室効果ガスのひとつである亜酸化窒素は酪農により発生する。その量は牛肉を1kg生産するに当たり360gで、他の乳製品や鶏肉の生産と比べ4.5倍を上回る。穀物生産において発生する亜酸化窒素の量はわずか12gだ。この場合、有機食品は特に問題が少ない。有機農家では化学肥料を使用しないうえ、農地面積に対して飼っている家畜の数が少ない。ある州立大学の調査によると、農地1ヘクタールにつき、窒素の超過量は年間州平均90kgで、有機農家の場合、その3分の1でわずか30kgだった。

“重病患者である”地球の状態がますます悪化しているというニュースが、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が催された横浜から報道されたなか、これらの情報を知識箱に入れれば、読者にも何かができるとブルガー記者は望んでいるのでしょう。肉の大量生産を認識し、活動する消費者は少なくとも水道水を汚していません。

関連記事
平成19年版『環境・循環型社会白書』環境省編、第2章 地球温暖化と生物多様
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h19/html/hj07010201.html
ナショナルジオグラフィック、2013年5月号、「化学肥料と地球の未来」
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20130419/348186/

関連リンク
カトリン・ブルガー
http://www.kathrin-burger.de/lebenslauf.php
ドイツ語の記事(有料)
http://www.genios.de/presse-archiv/artikel/SZ/20140401/die-erde-erstickt/A56829482.html

京都市にあるNPO、無施肥無農薬栽培
http://www.muhiken.or.jp/n/index.html

写真
堆肥散布、Werner Schmidt, flikr
https://www.flickr.com/photos/117948054@N05/12610698793/

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