日本式に「ボカされる」ドイツのコンポスト ━ その2 

やま / 2015年9月6日

eisbärドイツの夏2015年は、各地で最高気温が記録されています。ドイツ気象局の発表によるとドイツの年間平均気温は1961年~1990年までは8.2℃で、1991年~2014年は9.1℃でした。平均気温が1度上がるだけで、米、麦などの穀物の収穫量が10%減るそうです。

二酸化炭素は地球温暖化の主な原因です。植物は光合成を行い二酸化炭素を有機化合物として固定します。このように植物や大気、海中などに蓄えられたCO2の量はここ50年間2倍に増えたそうです。と同時に人為的に排出されるCO2の量は数倍に及ぶと専門雑誌「ネイチャー」は発表しています。自然が維持する“CO2処理場”は既にパンクしています。

植物園の有機廃棄物を利用して、地球温暖化を防ぐ試みに踏み切ったのはベルリン・ダーレムの植物園です。

ベルリン・ダーレムの植物園はベルリン自由大学所属の施設で、43ヘクタールの敷地に22,000種の植物が栽培されて、ドイツで一番広い植物園です。積もる有機系廃棄物の量は年間2,000㎥。今まで、この大半は十分に腐熟せず、ゴミとして料金を支払い処理してもらっていました。その一方、植物園が使う堆肥を外から購入していたそうです。

植物園の有機廃棄物のほか、従業員や入園者の排泄物も相当な量の潜在資源でした。これらをボカシ(暈かし)、バイオ炭を混ぜると、「テラ・プレタ」が作れます。(その1)5年ほど前、植物園の土壌を豊かにし、且つCO2を削減するプロジェクト「テラ・ボ・ガ(TerraBoGa)」が生まれました。ベルリン自由大学の「地質エコロジークラブ」の学生たちと、植物園が共同で始めたこのプロジェクトを、先月、ドイツの公共ラジオ放送「ドイチュランドフンク」が取り上げました。(一部抜粋)

イノベーション・デー・ベルリンの観客の前で「テラ・ボ・ガ」の関係者が、上が開いているドラム缶形「コン-ティキ(Kon-Tiki)」の中に枯れ枝を入れ、燃やしてる。しばらくして、水で火を消す。「これでバイオ炭ができます。完全に燃やしてしまわないで、水をかけ、火を消します。こうして枯れ木の30%がバイオ炭として残ります」。そして「テラ・プレタ」の原理を説明するのは、連邦環境庁で働くハイコ・ピープローウ博士だ。

プロジェクト「テラ・ボ・ガ」に属する学者たちは、「テラ・プレタ」の製造のために人間の排泄物から栄養分を得ることができないかと研究調査をしている。そのために従業員と入園者のトイレに特殊な衛生設備が設置された。重要なのは分離設備だ。この設備により、下水に流れた排出物のうち、固定物だけが違う容器に移される。この容器にはバイオ炭がまかれている。バイオ炭は排泄物の腐敗を防ぎ、悪臭が出ることも防ぐ。ハンブルグ工業大学の下水処理・水域保護・研究所所長、ラルフ・オッテンポール教授は、特殊な「テラ・プレタ・衛生設備」を開発した。ゆくゆくはこのシステムがミュンヘン、シュトゥットガルトやケルンといった都市で取り入れられることを教授は望んでいる。

「我々は絶えず大気中のCO2濃縮度を気にしていました。今回、バイオ炭により大気中のCO2を地中に埋める方法を見出すことができました。バイオ炭を作り、CO2を土壌に固定する。堆肥を製造すればするほど、CO2が大気から減っていくのです」とピープローウ博士は語る。

「テラ・プレタ」を取り上げているのは、現在、ミラノで催されているExpoだけではありません。ネットやマスメディアが掲載した「テラ・プレタ」に関する記事のタイトルをいくつかご紹介しましょう。

地球の金の玉子
趣味園芸家、スーパー堆肥を手放しで賞賛
園芸学コングレス:テラ・プレタは希望の星
クソから金を作るやつ
テラ・プレタでちょっくら地球を救おう
世界でもっとも巨大な気候保護マシーン
自然にはゴミがない

そして、つい最近、NHK制作のドキュメンタリー「クニ子おばばと不思議の森」が仏独公共共同テレビ「アルテ(Arte)」で放映されました。昔ならではの焼き畑農業をして暮らす87歳のクニ子さんの生活が、ドイツで紹介されたのは偶然ではないと感じました。

写真参照:Diggler Photography
https://www.flickr.com/photos/98857686@N05/14655554556/sizes/l

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