ドイツは地球温暖化防止に貢献できるだろうか?

ツェルディック 野尻紘子 / 2019年12月8日

今年もまた地球の温暖化対策を話し合う「国連気候変動枠組条約第25 回締約国会議(COP 25)」が12月2日からマドリードで開催されている。このところ世界中で温暖化の被害が目に見え始めており、2015年にCOP 21で取り決められた「パリ協定」に従って、地球の平均気温の上昇を産業革命以前の平均気温に比べて1.5 度ないし2度以内に収めることは非常に望ましい。そのためには、どの国も地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量の削減に努力すべきだ。しかし、例えばドイツのように、現在世界規模ではあまり多くの二酸化炭素を排出していない国が努力しても、大して意味がないという意見がある。二酸化炭素を大量に排出している国がまず先行すべきだというわけだ。この見解に対して、ヴッパタール気候環境エネルギー研究所がこの秋、興味深い研究を発表した。タイトルは『環境保護に関する討論』で、与党である社会民主党(SPD)系のフリードリヒ・エーベルト財団の依頼で作成された。

この研究によると、2016年のドイツの二酸化炭素排出量が世界の排出量に占める割合は1.94%でしかなかった。これに対し中国は26.87%、米国は13.91%、インド 6.08%、ブラジル2.22%となっている。ちなみに、欧州連合(EU)の合計は9.21%だった。

二酸化炭素の影響は約100年続くと言われる。そこで、1916年から2016年までの各国の二酸化炭素排出量の合計を計算してみると、実状は異なってくる。過去100年間に米国が排出した二酸化炭素の量は世界全体の23.2%、中国 は12.6%、ドイツ4.3%、インド3.9%、ブラジル1.7%となる。

二酸化炭素の排出量を人口1人当たりに換算すると、様子はさらに変わってくる。2016年に米国人1人が排出した二酸化炭素の量は平均で20トン、ドイツ人は10.6トン、中国人は8.7トン、ブラジル人5.2トン、インド人2.4トンとなる。世界の平均では人口一人ひとりが6.4 トン、そしてEU では一人ひとりが8.7トン排出している。こう見てみると、ドイツ人の二酸化炭素排出量は決して少なくないと言える。世界の平均以上だ。

『環境保護に関する討論』の筆者の一人であるクリストフ・アーレンス氏は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を多量に排出しているのは、明らかにドイツ人を含む北半球の人たちだと論じる。そして彼らは、さらに南半球の国々から多くの製品を輸入していると指摘する。その中には、生産の際に多量の二酸化炭素が排出される製品もある。しかし南半球で生産され、北半球の人たちが輸入して消費している製品が生産される際に排出する二酸化炭素は、先にあげた北半球の国々の二酸化炭素排出量には含まれていない。同氏は、本来ならこの二酸化炭素も、北半球の人たちの排出量に加算されなければならないはずだと書いている。つまり 北半球の人たちの二酸化炭素排出量は、数字に現れている以上に多いということだ。

こうした事実を反映して『環境保護に関する討論』では、地球温暖化が世界的な問題であることが強調されている。そしてこの問題を解決するためには世界的な協力、協調が必要であるとも記されている。特に北半球の人々は、過去100年間に彼らの行動を通し地球の温暖化に少なからず影響を与えてきた。だから彼らは率先して地球温暖化防止に貢献するべきだとしている。そして例えば、米国、中国、日本に続いて世界第4位の工業国であるドイツが、地球温暖化に対してのまともな解決策をないとするなら、 発展途上国の人たちは彼ら自身にも対処できないと結論づけてしまうだろうと結んでいる。

なお、ドイツの「エネルギー転換」は世界的に過小評価できないお手本になっている。その良い例が2000年に施行されたドイツの「再生可能エネルギー優先法(略称:再生可能エネルギー法、EEG)」だ。以前には生産に経費のかさんだ再生可能電力を促進するために、太陽光や風力で発電された電力を20年間固定価格で買い上げ、優先的に送電網に取り込むことを決めたこの法律は、導入以来、太陽光発電や風力発電の普及に大きく貢献した。大々的な普及に伴い、発電装置は効率が上がっただけではなく価格が低下し、その結果、20年前には導入が不可能だった発展途上国などでも普及が可能になった。辺鄙な地域にも電力をもたらすことを可能にしたEEG は、発展途上国援助とも言える。なお、EEG は2018年の時点に世界84カ国でコピーされていたという。

 

 

 

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