環境への影響が分かるドイツの電気料金明細書
ドイツの電気料金明細書には、電力会社の使用している電源の内訳や、1kWhあたりの発電時のCO2排出量、そして放射性廃棄物の発生量が示されている。これは、エネルギー経済法(EnWG: Energiewirtschaftsgesetz)という法令によって、電力会社が消費者にこれらの情報を示すことを義務付けられているためだ。
同法の42条によれば、電力会社は消費者に対し、
① エネルギー源の内訳:例えば、原子力、褐炭・石炭、天然ガス、その他の化石燃料、再生可能エネルギー優先法(EEG)で優遇されている再生可能エネルギー、その他の再生可能エネルギー、
② 発電時の環境への影響に関する情報:1kWh発電時のCO2排出量と放射性廃棄物の発生量
を示さなければならない。①と②は、電気料金の明細書もしくはその同封書類と、消費者への広告物、そしてウェブサイトに記載することになっている。さらに、これらの情報はドイツ全体の平均値と比較する形で示し、消費者に分かりやすいよう適当な大きさでグラフ化しなければいけないという細かい規定まである。ここまで決められているのは、さすが規則に細かいドイツらしいという印象を受ける。
一例として、ドイツ最大手の電力会社エーオン(E.ON)の電気料金明細書をみてみよう。ちなみに同社は、昨年12月に、原子力・火力発電事業を別会社に分離して、本社は再生可能エネルギーを中心とした事業に特化することを発表し、大きな話題となった。
エーオン社がオンライン上に公開している電気料金明細書の例によれば、同社の電力源に占める(EEGで優遇されている)再生可能エネルギーの割合は27.6%となっている1 。一方、ドイツ全体の平均値は20.8%だ。この比較によって、同社がドイツの平均的な電力会社よりも、電力源として再生可能エネルギーを積極的に使っていることが分かる。この数値が、再エネ事業の拡大決定によって、今後どこまで変わってくるのか見ものだ。
また、1kWh発電時のCO2排出量は、エーオン社が489g/kWh、ドイツの平均値が522g/kWhで平均値より低くなっている。しかし、1kWh発電時の放射性廃棄物の発生量は、同社の値がドイツの平均値(0.0005g/kWh)を少し上回る0.0006g/kWhになっている。これは、同社が原発を稼働しているためである。
このようにドイツの消費者は、電気料金明細書を受け取るとき、契約している電力会社がドイツの平均的な電力会社よりも環境に配慮しているのか、一目で理解することができる。そして、電力料金明細書の情報がオンライン上でも公開されていることが、環境にやさしい電力会社を探す消費者の手助けとなっているのだろう。
電力源内訳の比較(2012年のデータに基づく)
参照:2013年度版エーオン社の電気料金明細書の例より
- エーオン社の電気料金明細書の例(英語):電力源などに関するグラフは6ページ参照 [↩]