「アトモスフェア」のフェアはフェアプレーのフェア
休暇や仕事でどうしても飛行機を使わなければならないのですが、大量に発生する温室効果ガスがどうも気になります。この悪影響を和らげる方法がないかと思っている旅行者のために「アトモスフェア」という公益団体ができました。
大気圏をドイツ語ではAtmosphäre(アトモスフェア)と書きます。このphäre(フェア)をフェアプレーのfair(フェア)にかけて「アトモスフェア」Atomosfairという名前が生まれました。この団体のホームページ(www.atmosfair.de)を見ると、緑の旅客機と、同色の飛行機雲が目に入ります。ロゴの上に「気候保護を意識した旅」と書かれています。
だれにでも簡単にできる大気圏の保護
ベルリン発フランクフルト経由で成田まで往復すると、排出されるCO2の量は、旅客一人当たり6,890kgになると、同サイトの「排出量計算機」でチェックできます。旅行者がCO2排出に対するいわば代価として「アトモスフェア」へ寄付金を送ると、温室効果ガス削減プロジェクトに投資されます。約23ユーロの資金で1トンのCO2の発生を防ぐことができるそうです。「代価」を払い、そのかわりにどこかで、同量のCO2を節約してもらうという計画です。飛行機旅行で排出してプラス6,890kg、そして代価を払ってマイナス6,890kgと、数字の上で帳消しになります。「もちろん飛行機旅行で生じた環境被害は取り消すことはできない。しかし、いつかは何とかなるだろうと、何もしないで待つよりも、修復を試みるほうが良いのでは?」というのが同団体の意見です。マルティン・ルターの時代の免罪符を思い出します。クリックひとつでCO2排出という「罪」にゆるしがを与えられているのです。
この組織の体制について
「みどりの1kWh」の読者にはすでにおなじみの国連環境計画元事務局長である、クラウス・テップファー氏が後援者の一人です。環境保護に努める組織「German watsch」とオルタナティブな旅行を薦めている観光業者の連盟「オルタナティブ・旅行フォーラム(forum anders reisen)」によって、2003年に成立されました。代表者は物理学者でもあり、環境エコノミストでもあるディートリッヒ・ブロックハーゲン博士で、本拠はボンにあります。2006年からは、環境保護と開発援助に取り組む「未来を担う財団(Stiftung Zukunftsfähigkeit)」がこの公益事業を行う団体の財源となりました。
どんなプロジェクトがあるのでしょうか?
どのようなプロジェクトが寄付金で援助されているかと、調べてみました。大半は、エネルギーシフトと環境保護に関連があり、発展途上国での持続可能な開発援助でした。エネルギー消費の効率化、風力発電、水力利用、バイオガスとバイオマス発電、ソーラエネルギー利用、環境保護教育など、様々なプロジェクトが紹介されていますが、その中からいくつか選んでみましょう。
ナイジェリア、レソト王国、ルアンダ,カメルーンやインド、各国で使われている薪コンロは、同団体を通してノーハウと器材が送られ、地元で作られた製品です。効率の良いこのコンロで調理をすると、従来の囲炉裏と比べると、燃料エネルギーが80パーセントも節約できます。更に、コンロを組み立てるために、新たな雇用も生まれます。
今まで暗い灯油ランプが唯一の照明器具であったインドの農村家庭。灯油料金が一ヶ月の収入の3分の一を占めていました。「アトモスフェア」はソーラ発電式LEDランプを手の届く価格で住民に提供しました。
未来を担う子供たちの環境保護教育を進めます。特別授業を受けた生徒が自分たちで、省エネを考え、実行に移します。節約された暖房費や電気料金の半分は、学校の収入として自由に使えます。
ドイツでは、国立公園や保養地に滞在する場合、「リゾート税」を収めなくてはなりません。自治体はこの収入があるので、地域の整備ができるわけです。大気圏の手入れをしてもらうという意味で料金を支払うのは、普通かもしれません。最近、シュトットガルト空港に、「アトモスフェア・ターミナル」が、設置されました。排出量を計算したのち、簡単に「大気圏使用料金」を納めることができます。「飛行機の利用者は世界の人口のわずか約5パーセントだが、地球温暖化の被害者の大多数は、飛行機旅行など考えられない、発展途上国の人々だ」と同団体サイトに記されています。
参考として「アトモスフェア」のサイトからいくつか数値を挙げてみましょう
CO2 |
排出量 | |||
ベルリン発ヘルシンキ経由成田便、往復 |
6020 |
kg | ||
冷蔵庫を一年間使用する |
100 |
kg | ||
インドの国民一人当たりの年間排出量 |
900 |
kg | ||
中型車で年間走行距離が120,000kmの場合 |
2000 |
kg | ||
環境にやさしいといわれている一人当たりの年間排出量 |
3000 |
kg | ||
ちなみに、国民一人当たりの年間排出量(2008年)はドイツで9.9トン、日本で10.4トンでした。
参照 http://de.wikipedia.org/wiki/L%C3%A4nderliste_CO2-Emission
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