どうしたら下がる電気料金?
ドイツ全国消費者センター連盟の調査によると、ドイツ人消費者の82%は現在も2011年にドイツ政府が決定した脱原発を支持している。しかし消費者は脱原発でこれ以上負担のかかることに反対している。特に問題になっているのは、電気料金の上昇に歯止めがかからないことだ。ドイツの電力市場の再編成は必須で、9月22日の総選挙を控えてドイツの各党は色々の提案をしているが、将来がどうなるのかはどうも見えて来ない。
この夏、ライプツィヒの電力取引所では電力の取引価格が1kWh当たり3.3ユーロセント(約4.3円)にまで下がった。それなのに一般消費者の支払う電気料金は相変わらず1kWh当たり平均28ユーロセント(約36.4円)に留まっており、来年1月からは更に値上がりする可能性もある。
ライプツィヒの電力取引所で電力の取引価格が 下がったのは風力や太陽光発電の増加で電力の供給量が増えたことによる。しかしこの下がった電力取引価格が一般消費者に直接還元されない理由には、①この取引所では大口消費者しか電力が購入できないこと、②一般家庭が電力を買っている電力販売会社は、6ヶ月から3年という長いスパンの契約で電力を購入しているため、市場価格が低下しても、その影響を直ぐには受けず、安い価格を消費者に提供できないことなどがあると言われる。
実は、消費者の払う電力料金はそれどころか、取引所での電力価格が下がれば下がるほど上昇する。再生可能エネルギー優先法(EEG)の規定で、送電網運営会社が、再生可能電力を優先的に固定価格で買い取り、消費者がこの固定の買取り価格と取引所での取引価格との差額を賦課金として担うことになっているからだ。現在は 1kWh当たり5.28ユーロセント(約6.9円)の賦課金が電気料金に上乗せされているが、 来年には、再生可能電力の更なる増加で取引価格が低下し、それに伴って固定価格との差額が増大する見通しで、賦課金が6ないし7ユーロセント(8円前後)に上昇すると憂慮されている。
この賦課金の支払いには例外規定がある。電力を多量に消費する企業の国際競争力を保護するために、アルミや鉄鋼、化学業界などの大企業が賦課金の大部分の支払いを免除されているのだ。緑の党のベアベル・ヘーン氏によると、この免除を享受する企業は今年だけでも1000社から2000社に膨れ上がったという。この数を再度減らすべきだとする声は多い。電力使用量の多い大企業が払わない賦課金は一般家庭や小規模企業が負担することになり、これを不公平だと感じている消費者が多いからだ。この他、送・配電網使用料も企業は申請すると軽減される。また、全ての料金には消費税(現在19%)がかかるので、国の収入は料金が上昇する毎に増加している。
ドイツ全国エネルギー・水利経済連盟(BDEW、Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft)によると、そもそも1998年の電力自由化以来、ドイツの一般家庭が支払う電気料金は70%も上昇している。その中で最も増えたのが国の徴収する税金やEEGの賦課金を含む料金等で、過去15年間に243%も増加したという。今年初めて、 国の取り立てる税金や料金が1kwh当たり28ユーロセントの電力料金の50%を超えた。送配電網とメーターの使用料は27%、発電費は23%しか占めていない。
9月22日の総選挙を前にして、最大野党の社会民主党は電力税の低下を提唱し、電力販売会社が低下した市場価格をもっと積極的に消費者に還元することを要求する方針だと発表している。緑の党は消費量とは無関係な電力基本料金の値下げを唱え、また電気料金の話ばかりに終始しているエネルギー転換のディスカッションを、安定した供給や環境保全の話に戻したいとしている。与党の自由民主党も電力税の低下に賛成だが、同党はそれ以上にEEGの廃止を求めている。与党キリスト教民主同盟のメルケル首相は「電力税は電気料金高騰の原因ではない。国の財政力を弱めるから電力税は下げない」と言っているが、では、電力料金を下げるための具体案はあるのだろうか。一向に伝わって来ない。