どんどん緑になるEUの電力

池永 記代美 / 2021年2月7日

欧州連合の域内では2020年、再生可能エネルギーによる発電量が初めて石炭や天然ガスなどの化石燃料による発電量を抜き、電源構成の中でトップを占めたことがわかった。調査を行ったのはエネルギー転換に関するシンクタンクであるイギリスのエムバーとドイツのアゴラで、その結果が1月25日、ベルリンで発表された。

この調査によると昨年、 風力、太陽光、水力、バイオマスによる再生可能エネルギーが欧州連合(EU)域内の電力の38%を供給した。これは前年に比べて3.4ポイント多い。それに対して、石炭や天然ガスの化石燃料による電力が総電力に占める割合は 37%だった。たった1ポイントの差だが、再生可能エネルギーが化石燃料を逆転したわけだが、それはとりわけ風力と太陽光の発電能力が目覚ましく伸びたことが要因だという。2015年に比べるとその発電量はほぼ倍になったそうだ。それに反比例するように、化石燃料である石炭が作る電力の割合は、2015年の半分になったという 。ちなみに、原子力 による電力は25%だった。

石炭による発電が減ったのは、二酸化炭素(CO2)排出権取引きにおいて、排出権価格が上昇しているからだ。石炭による発電量が2020年には前年の20%も減ったのに比べて、同じ化石燃料でもCO2の排出量が比較的少ない天然ガスによる発電量が4%しか減っていないのは、そうした背景がある。排出権価格の高騰のせいで、ドイツ、ポーランド、チェコでは地元で採掘できる褐炭を使った方が、輸入物天然ガスを使うより発電コストが高くなってしまうという現象も一次的に起こったそうだ。

電源構成の中で緑の電力がトップに立ったことについて、この調査レポートの著者の一人でエムバーのシニア•エネルギーアナリストであるデイブ•ジョーンズ氏は、「世界中が気候変動対策に取り組むこの10年の始まりに、EUが電力生産で緑の転換点に到達できたことは、とても喜ばしいことだ。風力と太陽光の急激な伸びが、石炭を打ち負かした。しかしこれはまだ始まりでしかない」と語った。それは石炭だけでなく、天然ガスや原子力による発電を、これからは再生可能エネルギーが補わなければならないからだ。電気自動車やヒートポンプの普及で、今後電力の需要が増えることが予想されるが、その分も賄っていかなければならない。さらに現在新しいエネルギー源として注目されている水素だが、水を分解して水素を生産するためには大量の電力が必要になる。

昨年はコロナによる社会、経済活動の制限で、電力需要が一年前に比べて4%減ったことも、再生可能エネルギーを躍進させた理由と見られている。「それだけに、コロナ後の経済回復時に気候保護がないがしろにされてはいけない」と、アゴラの所長パトリック•グライヒェ氏は警告し、経済復興のためのプログラムに気候変動対策を反映させるような仕組みが必要だと強調した。コロナ禍は100年に一度の危機と言われているが、温暖化は地球にとって過去最大の危機かもしれない。目先のことに目を奪われない賢い政策を取っていくことが大切だ。発電を緑に移行させるだけでなく、私たち一人々 々が電力をできるだけ節約することも気候変動防止につながる。今後は、コロナ禍前 の「普通の生活」に戻るのではなく、 行動の見直しも必要だ。

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