2019年の「不愉快な言葉」大賞に「環境ヒステリー」

ツェルディック 野尻紘子 / 2020年2月2日

ドイツでは毎年1月に、ドイツ語学研究者らが、過去1年間に耳にすることの多かった「不愉快な言葉」を選出する。「2019年の不愉快な言葉」大賞は「環境ヒステリー(Klimahysterie)」に決まった。昨年は、グレタ・トゥーンベリさんが発端の地球温暖化対策を求める生徒たちのデモ「Fridays for Future」が大いに盛り上がり、多い時には全国で何十万人もの生徒らが授業を休んでこのデモに参加した。それをサポートする「Scientists for Future」も誕生した。そしてドイツ政府は、これらに応じるかのように脱石炭や環境対策を決めた。市民や政治家たちが、こうして熱心に環境問題に取り組むことを批判する時に、頻繁に使われたのがこの「環境ヒステリー」という言葉だった。

「不愉快な言葉」のドイツ語オリジナルはUnwort で、「言葉にならない言葉」、「とんでもない言葉」あるいは「嫌な言葉」とも訳せるだろうか。審査委員会は4人の独立した立場のドイツ語学研究者が常任メンバーで、それに毎年2人のジャーナリストや文学者などが加わる。 年々「不愉快な言葉」を選出し、その言葉に対し批判的な態度を示すように社会を促すことが彼らの目的だ。

審査委員長のニナ・ヤーニッシュ教授は、審査結果の発表に際して「『環境ヒステリー』とは、あたかも環境アクティヴィストたちの行動を病的だとし、彼らの 精神状態を異常だと決めつけようとするものだ」と批判する。そして、「世界中の科学者たちの気候変動に関する研究結果を疑い、学問を否定する傾向を支援することは無責任でもある」と語った。

ドイツの全国紙「フランクフルター・アルゲマイネ」は、「現在のソーシャル・メディア、そしてソーシャルと名乗りながら実はソーシャルでないメディアでは、不愉快な言葉が氾濫している。その中から『環境ヒステリー』という言葉を選んだのは的確な選択だった」と書いている。

地球温暖化の危険を語ること、気候変動のために対策をとることは、ヒステリーなどではない。この1月22日からスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムの年次総会(WEFダボス会議)で、トゥーンベリさんは、地球温暖化の危険が迫っていることを繰り返し語った。我々が気候変動による危険を避けるために、地球の気温を産業革命以前の気温に比べて1.5度以下に抑えたいなら、今後世界が排出しても構わないとされる二酸化炭素の排出量は、あと4200億トンでしかない。もし我々がこれからも毎年、現在のペースで二酸化炭素を排出するなら、我々に残された時間は僅8年でしかないことを認識するべきだ。

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