ロシアの核兵器がドイツの電力に!

まる / 2012年10月7日

エネルギー新戦略として、2030年代に原発稼動ゼロを目指すと宣言したにも関わらず、日本政府が大間原発など現在建設中の原発の工事続行を認め、青森県での核燃料サイクルを継続する方針であるということで、日本国内でも矛盾していないかという声が上がっているようです。核燃料サイクルに固執する理由には、プルトニウムが優秀な核兵器材料になるからだという説もあります。やっぱりそれが理由なのだろうかと考えていたところ、ドイツの新聞でどきっとする記事を見つけました。

9月15日の南ドイツ新聞の記事なのですが、ドイツの原発で、もう長年にわたりロシアの軍用ウランが燃料として使われているというのです。2002年にカナダのカナナスキスで行われたG8サミットで、歴史的な軍縮プログラムが可決されました。この軍縮プログラムは「冷戦が終わって不要になった核兵器や原子力潜水艦に使われていた軍用高濃縮ウランやプルトニウムを減らそう」というものでした。その時ロシアのプーチン大統領は「我々のパートナーが協力してくれるのなら感謝する」と言っていたそうです。

軍用ウランがロシアから空路、航路、陸路を使って大量にドイツの原子炉に運ばれて来るようになったのはG8サミットの前からのようです。ドイツ国民はおろか、環境省や外務省も知らされることなく、このウランを燃料としてドイツの電力のかなりの部分が作られてきたというのです。

もちろんドイツのエネルギー会社もこれを秘密にしてきました。ロシアの軍用ウランを利用することで、ドイツ政府に脱原発の時期を遅らせるよう、プレッシャーをかけようとしていたのではないかと南ドイツ新聞は推測しています。ウランよりさらに危険なロシア軍のプルトニウムをドイツの原発でも使うよう、政治家に働きかけていたロビイストもいたそうです。

同紙が入手したエネルギー会社EnBW内の秘密文書には、「原発運転期間の議論が再びされることになった場合、軍縮が政治的に重要な役割を果たすことになるかもしれない」と書いてあるそうです。

このビジネスで巨額のお金が動いていることは、もちろん想像できます。この秘密文書には、このビジネスの鍵をつかむ人物として、アンドレイ・ビュコウというロシア人のロビイストがおり、この人物がロシアのウランをスイスを経由してカールスルーエに本社のあるEnBWに運んでいたことも書かれているそうです。

このビュコウという人物は、ベルリン育ちのロシア人で、かつてはソ連の外交官としてボンで働いていたそうです。その後、数々のドイツ企業のロシア市場進出を手助けし、EnBWのロビイストとしての仕事も20年来してきているらしいです。EnBWは2005−2008年にビュコウと交わしたウランの運搬や保全に関する1億3000万ユーロの契約が守られなかったとしてビュコウを訴えていますが、ビュコウはハンデルスブラット紙でのインタビューの中で、金の行方について聞かれ、「半分は自分のロビイストとしての活動に対する報酬で、あとの半分はロシアで数多くの慈善事業を行っている聖ニコラウス奇蹟財団(代表はビュコウ本人)に寄付した。当然EnBWも知っていた」とあっけらかんに答えています。

秘密文書によると、この人物の暗躍によって過去10年間にわたって、モスクワ近郊で1000本以上の燃料棒が使われ、ドイツのオブリヒハイム原発とネッカーウェストハイム原発(EnBW)、ボロックドルフ原発、ウンターヴェーザー原発(E.on)、そしてグンドレミンゲン原発(RWE, E.on)に運ばれたといいます。

燃料棒200本というのは、ひとつの原発を5年間動かせる量だそうです。E.onとRWEは、そのような燃料棒を使用してきたことを事実として認めており、RWEは856本という数字も出していますが、EnBWは、「そのようなこともあり得る」と説明するのみだそうです。

「電気調理台、ラップトップ、照明を使う度に、市民は核軍縮をしていたというのは、気違いじみた考えである」と南ドイツ新聞は書いています。これって、日本でもあり得ない話ではないような気がしますよね…ジェームス・ボンドの映画でも作れそうですね。

 

 

 

 

 

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