コロナ禍で弱気になったドイツの働き盛り

ツェルディック 野尻紘子 / 2020年12月6日

ドイツでは働き盛りの人たちのことをよく、ドイツ社会を支える「大黒柱」と呼ぶ。「中間世代」と言うこともある。この世代に属する人たちは約3500万人いる。彼ら、彼女らはドイツの就業者数の約70%を占め、その収入は総課税所得の約80%に達する。その人たちの半数が、このほど行われたアレンスバッハ世論調査研究所の調査で、コロナ禍で生活環境が悪くなった、将来に対する確信が薄れたと答えている。

アレンスバッハ研究所が10月中旬から11月初めに30歳〜59歳の男女1047人を対象に行なった調査で、「これから先12ヶ月を楽観的に見ている」と答えた人は僅か22%しかいなかった。これは、1年前のこの世代に対する同様の質問への回答者47%に比べて半分以下だ。調査に当たったアレンスバッハ研究所のケッヒャー所長は、「この劇的な落ち込みの主な原因は、コロナ禍の終わりが見えないことだ」と語った。「コロナ禍が数ヶ月後には過ぎ去るだろう」と回答した人は5分の1で、現在のような非常事態がこれからも長く続くだろうとした人たちが70%もいた。

「何が良くないか」という質問に対しては、70%以上が「将来が不確定なこと」を挙げている。このことは、親戚や友人などが訪問できないこと(50%)、学校や幼稚園が閉鎖されてしまうこと(43%)、レストランやバーが閉まってしまうこと(21%)、外国旅行に出られないこと(16%)などより、ことの本質である「先行き」を心配している人たちが多いことを示している。また、回答者の40%が「自身がコロナにかかる心配」のことを大きい、あるいは非常に大きいとしている。さらに、全体では二人に一人がコロナ措置のために強く束縛されていると感じていることも明らかになった。そして、コロナが始まったばかりのこの春には経験できた社会の連帯感や 隣人への配慮が失われ、利己主義や攻撃的な態度の人たちが増えていることを心配する人たちも多い。

経済的には、自分の職場を安定していると思う人が減ってきており、「仕事を失うかもしれない」と答えた人が、1年前の7人に一人(14%)に比べて、現在は約4分の1近く(23%)に増えている。 そもそもコロナ禍で、この中間世代は二つのグループに分かれたように見える。現在までに既に収入が減ってしまった人たちが40%以上いるのに対し、収入の減少を心配していない人たちも50%近くいる。ただ、ドイツでは今のところ、政府の資金援助などが充実しているので、実際に窮困に陥ってしまった人たちは少ないように見受けられる。

一方で、この中間世代の中には「コロナ禍にはポジティブな面もある」と謙虚に考えている人たちが53%もいることが明らかになった。以前には当たり前だと思っていたことが、実はいいことだったことに気づいたというのだ。また、コロナ禍では家族と一緒に過ごす時間が以前に比べて多くなったので、「家族と過ごす時間を、将来も今までより増やしたい」としている人たちが3分の1もいた。同じぐらいの人たちが、時間的に少しゆとりのある日常生活を送りたいと答えているのも事実だ。コロナ禍では行動が狭まれているために、時間にゆとりができているのだ。しかしそう思うのは仕事と子育てで忙しくしている女性の方が多く、男性の中には1日も早く元のような働き方に戻りたいという人たちも少なくない。

なお、この調査ではこの他、グローバリゼーションや気候温暖化の影響などに関しても触れているが、悲観的な回答が多かった。

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