ドイツサッカー連盟の社会的使命

まる / 2012年4月3日

3月2日、ドイツサッカー連盟のテオ・ツヴァンツィガー(Theo Zwanziger)会長が退任しました。ツヴァンツィガー氏は任期中、2006年の男子W杯、2011年の女子W杯ドイツ大会のホスト役を務めただけでなく、女子サッカーの促進や、同性愛者に対する偏見や差別の撤廃に精力的に取り組んだり、移民を背景に持つ人たちのドイツ社会での融和を応援してきたひとです。今回の退任に当たって「メルケル首相は、”最高の融和大臣”を失うことになる」と南ドイツ新聞は書きました。ドイツ代表戦でメルケル首相の隣に座り、ドイツのゴールが決まるとメルケル首相とハイタッチして喜ぶツヴァンツィガー氏の姿を、テレビで見たことがある方もあるかもしれません。これがどうしてみどりの1kWhと関係するかというと…

ツヴァンツィガー氏の任期中、ドイツサッカー連盟は環境問題にも積極的に取り組むようになりました。上で述べたドイツでのW杯2大会でも、ほとんどメディアに取り上げられなかったとはいうものの、各試合会場で、節電や節水、地産地消のケータリングを導入するなど、環境に優しい試みがされていました。

ここでは、今年3月にスタートしたばかりの「ドイツサッカー連盟環境カップ2012」というものをご紹介します。

まず、ドイツ全国には約2万6000のサッカークラブが存在し、サッカー人口は600万人以上とされます。これらのクラブそれぞれに、クラブハウス、事務所、練習場、または自前のスタジアムがあり、毎週、練習や試合が行われています。もちろんエネルギーの消費量も相当なものです。だからそこで幾らかでも”環境に優しい”取り組みがなされれば、サッカーが社会に対して行える貢献は、総合して見ると、侮れない大きさです。

「ドイツサッカー連盟環境カップ2012」では、”環境に優しい”取り組みとして90のアイデアが提案されており、そのアイデアを実践するクラブにポイントが配られます。例えば、各クラブが会員に送る手紙や、試合のメンバー表を印刷する際に使う紙を再生紙にすると、紙1パックにつき45ポイントが貰えます。クラブハウスなどの使用施設の壁に断熱材を入れると、10平方メートルにつき100ポイント。再生紙のトイレットペーパー12ロール入りパックを5袋購入すると45ポイント。エコの電力会社に変える(−ドイツでは変更が簡単です)と115ポイントに加え、特別に一度だけ1000ポイント…など、ポイントを集める方法は様々です。ちょっと変わったものとしては、クラブハウスの屋根の上にコウノトリの巣のために台を作る(一つにつき80ポイント)、バーベキューをする際に地元産の炭を使用(10kgパック2袋で45ポイント)、地元の肉屋さんでエコなソーセージを購入(50本につき95ポイント)、子供向けの環境保護セミナーを開く(130ポイント+特別に一度だけ500ポイント)、レンタサイクル・サービスを設ける(130ポイント+特別に一度だけ750ポイント)、などもあります。

この大会に参加を希望するクラブはインターネットで登録し、2012年12月末までに最も多くのポイントを集めたクラブが優勝となります。様々な賞は州のレベルでも用意されています。そして、優勝したクラブにはドイツ代表戦のVIPチケットが贈られたり、ドイツ代表監督とコーチ陣が訪れたりというご褒美が待っています。

ドイツサッカー連盟は、持続可能委員会(環境・気候保護担当官は緑の党党首、クラウディア・ロートさん⦅Claudia Roth⦆)というものを設けており、その中で環境問題、移民融合、差別撤廃などのテーマに取り組んでいるのですが、この「ドイツ環境カップ2012」もその活動のひとつです。同委員会はホームページで、「サッカーと環境保護はひとつ」と書き、こう説明しています。「ドイツサッカー連盟は、”持続可能委員会”を通じて、融合、教育、平等、など多くの社会的に重要な分野でのクラブの活動を支援しています。連盟の主な仕事は当然、試合運営を組織し、代表チームを通じてタレントやトップレベルの選手を育てることにあります。しかし、クラブでの活動は、社会、私たちが生きる世界への貢献をすることでもあります。『ドイツサッカー連盟環境カップ2012』により、ドイツサッカー連盟は、いっそう環境と気候保護に力を入れて取り組むことになります。というのは、これらのアイデアひとつを実行するだけでも、環境のためになるからです。そしてそれはクラブのためにもなります。例えば電力や水といった資源を節約することで、クラブ財政の負担も軽くなります」。

また同委員会は、各クラブがどういうところでエネルギーや水を節約できるかなどの相談にのるアドバイザーも用意しており、ラインランド・プファルツ州では既に150のスポーツクラブが、ヘッセン州では600のサッカークラブがアドバイスをしてもらったそうです。このようなアドバイザーを呼ぶ際にかかる費用を負担する州もあるそうです。

ツヴァンツィガー氏に代わって、ドイツサッカー連盟の新会長にはウォルフガング・ニースバッハ氏が就任しました。新会長がどんなことをするのか、みんなが見守っています。

 

One Response to ドイツサッカー連盟の社会的使命

  1. みづき says:

    サッカーで盛り上がってるのを見ると、
    あのサポーターのエネルギーを電力にかえられないものか…
    なんて考えてしまいますが、それはまだ無理なようですね(笑)。