ほんとうにドイツから原発が消えるのはいつのこと?
ドイツにある17基ある原子炉のうち8基が停止されたのは、ほぼ1年前のことでした。でも、それで原子炉が消えたわけではありません。シュピーゲル誌(2012年4月18日の記事「原発解体をためらう電力会社」)によると、運営者であるエネルギー供給会社は、それどころかまだ廃炉の申請もしていなく、反原発運動家たちから批判が出ているそうです。
E.onとRWEは、原発の強制停止は違法として、ドイツ連邦政府を相手に連邦憲法裁判所に訴えており、ヴァッテンファル・ヨーロッパは、ドイツ連邦政府が賠償金を払わない場合には、ワシントンの国際裁判所に訴える予定です。その際電力会社の自分達の立場を弱くしないため、廃炉の申請をしていないというのが批判者たちの見方です。
ドイツ連邦政府の勝訴で終わったとしても、廃炉の申請がされてから認可が出るまでには数年かかると言われています。そして廃炉を始める前に、使用済燃料貯蔵プールで燃料棒が十分に冷えるのを約7年待たなくてはなりません。そう考えると、今から早くとも15年後にしか廃炉は始められないというのが専門家の意見です。そして、実際に廃炉が終了するまでには、さらに15年かかるそうです。
もうひとつ、廃炉を遅らせることになりそうな理由は、キャスク(燃料輸送容器)が足りないことにもあるようです。例えば、266本の燃料棒が貯蔵プールに、そして844本がまだ原子炉に入っているというクリュメル原子力発電所には現在2つのキャスクしかなく、それに入れられる燃料棒は104本のみだそうです。いくつもの原子炉を同時に廃炉するとなると、人材不足も心配されます。
それでは、実際に廃炉をするにはどのくらいのお金がかかるのでしょうか?ハンデルスブラット紙(2011年9月28日の記事「巨大市場 脱原発」)では、経営コンサルタント会社アーサー・D.リトル(Arthur D.Little)の分析として、ドイツの全17原子炉を解体するためにかかる費用は、少なくとも180億ユーロと書いています。これには使用済核燃料の最終貯蔵にかかる費用は含まれていません。
廃炉を行う業者としては、アレバ、ウェスティングハウス、ヌーケム・テクノロジース(Nukem Technologies)、旧東ドイツの国営会社で、旧東ドイツ時代の原子炉を解体してきたエネルギーヴェルケ・ノルド(Energiewerke Nord)などがあり、入札を巡って競いあうことになります。
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