ドイツ人の大多数は、現在の大連立政権が2021年まで続くことを望んでいる
去る9月1日に行われたザクセン州とブランデンブルク州の東部2州の州議会選挙では、投票した有権者の4分の1が右翼ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に票を入れ、右翼過激派も含むこの政党の躍進振りが改めて人々に衝撃を与えた。その一方、政権与党のキリスト教民主同盟(CDU)とドイツ社会民主党(SPD)は共に大幅に票を減らし、これまで国民政党と言われてきた二大政党の衰退が目立った。それにもかかわらず、その直後におこなわれたZDF (ドイツ公共第二テレビ)の世論調査では、連邦段階でのCDUと姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU) 、それにSPDからなる、いわゆる大連立政権を評価する人が多いことがわかった。
ZDFの「ポリットバロメーター」のためにマンハイムの世論調査機関、Forschungsgruppe Wahlenが9月2日から4日までに、無作為抽出の1270人を対象に行った電話調査によると、回答者の62%が、現在の大連立による第4次メルケル政権の仕事ぶりを良いと評価した。先月8月にこの大連立政権を評価した人は50%に過ぎなかった。一方、現在のメルケル政権に不満だと答えた人は8月には43%を占めていたが、今回は10ポイントも減って33%だった。また、72%もの人が、現在の大連立政権は2021年の次回連邦議会選挙まで、崩壊すること無く維持されるだろうと見ていることも明らかになった。6月の時点では、このように見ていた人は60%に過ぎなかった。任期の途中で第4次メルケル政権は崩壊するだろうと見ている人は、6月の34%から今回は22%に減った。
メルケル首相(CDU)が2021年まで連邦首相の地位にとどまる意向を示していることを良いと見ている人は、同じように多い(73%)。特にCDUとCSU支持者の中では88%もの圧倒的多数が、また野党の緑の党支持者でも85%が、そしてSPDの支持者の間でも71%が、メルケル首相が任期を全うすることを望んでいる。自由民主党(FDP)や左翼党の支持層も、同じように大多数がメルケル首相を支持している。AfDの支持層だけは別で、75%もの多数が、メルケル首相が2021年まで首相の地位にとどまることを「よくない」と考えている。
CDUの党首をメルケル首相が辞任したのは2018年の12月で、その後をついで党首に就任したのは、前ザールラント州首相で同党幹事長を務めていたアネグレート・クランプ=カレンバウアー(略称AKK)だった。当初AKKは連邦首相の後継者にもなる可能性があるとみられたが、その期待は薄れている。AKKが党首として将来CDUを成功に導くと見る人はわずか19%に過ぎず、71%の人が彼女の指導力を疑問視している。
一方、大連立のパートナーとして連邦段階で政権を担っているSPDは、最近行われた選挙で特に大幅に支持率を減らしている。党内の変革が必要だとみられるSPDについて、今回の調査では、回答者の50%が「CDU・CSUとの大連立を解消して野党になった方がいい」と考えているが、当のSPDの支持者の中では、そう考える人は45%と少ないという意外な結果になっている。
今回の世論調査では、各政党の支持者の中で、AfDに対する拒絶感がますます強くなっていることもはっきりした。AfDに対する非常に否定的な評価は、AfDを除くどの政党の支持者にも共通している。プラス5からマイナス5までの評価で、緑の党の支持者の評価が最も低く、マイナス4.7 で、SPDではマイナス4.2、保守的なCDU・CSUの支持者でもAfDの評価はマイナス3.8 だった。AfDに対して否定的な評価をした人の80%が、AfD では極右の思想が広がっているからという理由を挙げている。これに対してAfD の支持者の73%は、極右ではないとしている。
ZDFの世論調査「ポリットバロメーター」では、毎回「次の日曜日に連邦議会選挙が行われるとしたら、どの政党に投票するか」という設問がなされる。今回、CDU・CSUに投票すると答えた人はこれまでと変わらず28%で、SPDは、これまでより2ポイント増やして15%だった。緑の党は24%で、AfDは13%、左翼党は7%、FDPは6%、その他7%という結果になっている。この結果を見ると、連邦議会で明確な多数を得られるのは、CDU・CSUと緑の党の連立ということになる。
毎回人気政治家のトップテンのリストが、プラス5からマイナス5までの評価で発表されるが、今回も1位はメルケル首相で、プラス1.7、2位は緑の党の共同代表、ローベルト・ハーベックで プラス1.5 、3位は外相のハイコ・マースと財務相のオラフ・ショルツの2人でプラス0.9、5位は保健相のイエンス・シュパーンのプラス0.3 となっている。トップテンに入った女性はメルケル首相のほか二人で、8位のウルズラ・フォン・デア・ライエンEU次期委員長と9位のアネグレート・クランプ=カレンバウアー国防相だった。
こうした最近の世論調査からは、AfD支持者の「メルケル、 辞めろ!」という声高な叫びにもかかわらず、大多数のドイツ人は現在のメルケル政権を支持していること、変化ではなく、政権の安定を望んでいることが明確になった。