2018年の新年のご挨拶

永井 潤子 / 2018年1月1日

Photo by  Sachiko Aoki

皆さま、新年おめでとうございます。2018年が世界の平和と環境保護にとって少しでも良い方向に向かいますように、そして、皆さまにとって、喜びの多い幸せな年になりますように、お祈りいたします。

ドイツ連邦共和国は、国の発足以来初めてという政治状況の中で、新しい年を迎えました。昨年9月24日に行われたドイツ連邦議会の選挙の後、3ヶ月以上経っても次期連立政権が樹立されないため、選挙前からの政権が暫定的に業務を遂行するという事態が続いているのです。ドイツ連邦共和国の約70年の歴史で、新政権の樹立がこれほど困難だったことは1度もありませんでした。

最初の連立の話し合い、メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)、それに緑の党の4党間での連立予備交渉は11月にFDPが交渉から離脱したため、失敗に終わりました。その後連邦大統領が各政党代表に「早期に安定政権を樹立するよう」求めたため、これまでいわゆる大連立を組んで来たCDU・CSUと第2党の社会民主党(SPD)の代表による予備交渉が新しい年の1月7日から始まることになりました。しかし、同盟側、特にバイエルン州を基盤とするCSUとSPDの間で、難民政策やヨーロッパ問題、医療保険の改革などを巡って意見の相違が大きく、この予備交渉も困難で、交渉は長引くものと予想されています。

過ぎ去った2017年は「ヨーロッパのスーパー選挙年」でした。2016年の英国のEU離脱宣言に続き、当初、オランダの総選挙やフランスの大統領選挙で「反EU」、「反移民」の右翼ポピュリズム政党が勝利を納めるのではないかと危惧されていました。しかし、それは杞憂にすぎませんでした。もっとも注目されたフランスの大統領選挙でEU推進派のマクロン氏が勝利を収め、39歳の大統領が誕生したことは皆さまご存知の通りです。そのマクロン大統領が「EUの牽引役」としてもっとも頼りにしているのが、ドイツのメルケル首相です。しかし、EU加盟国の中でもっとも政治的に安定した国と見られてきたドイツでさえ、「反EU」、「反移民」の右翼ポピュリズム政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が、初めて連邦議会に進出し、二大政党が予想以上に大幅に票を減らす結果になったことは、多くの人にとって衝撃的なことでした。連立の話し合いが長引き、新政権の発足が遅れるにつれ、ドイツに早く安定政権が樹立するよう願う声は、EU内でも強くなっています。

一方、10月に総選挙が行われたオーストリアでは、31歳のクルツ党首が率いる国民党(ÖVP)が「反移民・反難民」を主張して勝利を収め、「反イスラム」を掲げる右翼の自由党(FPÖ)との連立政権が12月中旬に成立しました。世界最年少のクルツ首相が誕生したことが話題になりましたが、ナチ的な発言をしたことで知られる「反EU」 のFPÖ党首が副党首を務めることに、懸念が広がっています。さらに年の瀬も押し迫った12月28日、イタリアのマッタレッラ大統領は、上下両院を解散し、総選挙が2018年3月4日に実施されると決まりました。イタリアでもいずれの政党も過半数を得られない情勢で、EU内にまた一つ不安定要因が増えたことになります。

なお、ドイツは福島原発の大事故に衝撃を受け、2011年夏、2022年末までに全ての原発から段階的に撤退することを決めました。当時ドイツ国内には原発が17基ありましたが、老朽原発など8基の稼働を直ちに停止し、残り9基についても脱原発の具体的な工程表を決定しました。その工程表に従って2015年に1基が稼働停止しましたが、昨日、2017年12月31日をもって、バイエルン州のグルンドレミンゲンの稼働年数約34年のB原発が工程表に従って稼働停止されました。この結果、ドイツで稼働する原発は7基となりました。

2018年がドイツやヨーロッパにとって、どういう年になるのか、また、脱原発決定7年目のドイツのエネルギー転換の様子など、今後もベルリンに住む私たちの目を通して皆さまにお伝えしていくつもりです。新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。

緑の魔女一同

 

 

 

 

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