どこへ逃げればいいの?

やま / 2014年7月13日

zeitung 2「難民・避難民」の数が第二次世界大戦後、2013年末に初めて5千万人を越えたという国連の発表が報道されました。社会はこの膨大な数の意味を予期せずに受け入れているのですが、「地球温暖化により2050年までにはその数は4倍となり20億人に達するだろう」という南ドイツ新聞の見出しが目に留まりました。「豊かな国々は、これ以上責任逃れができるか」とサブタイトルは続きます。

ヨーロッパ(特に豊かなドイツ)にとって地球温暖化は実存的な問題ではなく、環境問題の一つである。氷が解けて困るのは白熊であって、人間ではない。夏の猛暑、ホワイトではなく、グリーンクリスマスなど、中部ヨーロッパに暮らすものにとっては、これらはただ厄介な出来事であるに過ぎない。或いは気温が少しぐらい上がるのも悪くはないと考えている者さえいる。1)

そういえばこのようなことがありました。1930年代に建てられた住宅をエネルギー削減の面で助言してほしいという依頼があり、省エネ改修処置とそのコストをまとめました。数日後、今後の方針を聞くと「平均気温が1度上がると住宅の熱エネルギー消費量を6%減少できると新聞で読んだ。このまま地球の温暖化が進めば建設コストゼロで暖房費が節約できる」という理由で省エネ工事の依頼を断ってきました。

今は地球温暖化による被害はよそで生じている。例えば、太平洋上の島々が沈没していく。去年フィリピンを襲った台風ハイエンは史上最大なものだと言われている。死者8000人、1200万戸の家屋が全半壊し、350万人が避難した。しかしこの台風は後も先にもない最大の台風なのか?気候研究者たちの予想によると台風ハイエンはこれから生じる大惨事の予告に過ぎない。1)

温暖化の原因はCO2や気候汚染物質による大気汚染です。気候汚染物質を排出しているのは人間です。今でもまだこの事実を否定する人がいます。ポツダム気候影響研究所所長であり、「摂氏2度が限界」を早くから発表したシャルンフーバー教授は講義の後で「否定者に対して市民はどのように答えるべきか」という質問を受けました。教授が例としてあげたのはタバコの喫煙です。「10年ほど前まではこの講義室はタバコのけむりでいっぱいだったでしょう。タバコは肺がんの原因となり、喫煙者自身だけではなく、まわりの人にも有害であると判明されてから、政治、社会が公の場での禁煙を取り入れるまで時間がかかりました。今でも『私の祖父はヘビースモーカーなのに90歳になった』とタバコの身体への無害を論じる人がいます。気候研究者の97%が地球温暖化の原因は気候汚染物質によるものだと結論を出しています。世界は残りの3%が同意するまで待つべきなのでしょうか?」

世界のどこかで地球温暖化が原因で起こる大惨事。私たちは心を痛め、家を失った被害者へ募金を集めて送ります。

押しかける避難者の流れを巻き起こしたのは、消費製品の豊富な工業国に暮らす我々であり、大半の責任が我々にあると認識しなければいけない。ドイツは世界の“CO2違反者”の7位だ。………工業国の贅沢な生活様式により、アフリカ、アジア諸国の人々は故郷に住めなくなってしまった。………エチオピアの亡きメレス首相は「アフリカは温暖化の発生に少しも加わっていないにも関わらず、最初に最も甚大な被害に見舞われるだろう」と工業国を非難した。1)

ドイツの一人当たりのCO2年間排出量は11トン(11,000kg)と言われています。ちなみにドイツから東南アジアを飛行機で往復すると、旅客1人当りのCO2排出量は5,100kgです。「個人では地球の温暖化をとめることはできない」と思いながらも、旅行者は大気を汚染しているのです。気候変動に適合した排出量は一人当たり年間2,300kgと予測されています。工業国の人々は快適な生活を過ごし、出た“汚染物”をよその国の“庭”に置き、みごとな“我が庭”を眺めていました。時々“掃除道具”などを送り、処理の方法を教えてあげていました。“汚染物の後始末”をしないので、苦情の声が高まっています。 “よその国の庭” は“汚染物”で住めなくなってしまい、避難しなければなりません。

どこへ逃げればいいの?彼らは、まずは気候も文化もそうは違わない隣国へ避難するだろう。難民の総数は予測であるが、もし20億人のうち5%が遠いヨーロッパの国境にたどり着いたとしても、その数は1千万人にのぼる。………地球温暖化により故郷を失ったものに対してヨーロッパは国境の壁を簡単には開かないだろう。しかし難民が増える壁の向こうへ送金をせざるを得ないだろう。カンクンやワルシャワで催された気候サミットで承諾された年間送金額は1000億ドル(約10兆円)と高額だが、2020年からの計画だ。参加した工業国はこの送金が賠償責任と理解されないように用心した。そうではなくあくまでも豊かな国からの寛大な援助であり、同情からと見せかけた。1)

ポツダム気候影響研究所の計算によると、工業国の人々が今までの生活様式を変えなければ地球の平均気温は今後100年間で4~8度に上がるそうです。この気温上昇を1~2度に抑える対策には、世界のGDPの1~2%が必要です。「この数字はどの程度、経済成長に歯止めをかけるかというと、100年間でGDPの成長が6ヶ月遅れることになりますが、これぐらいは我慢できるのでは?」とシャルンフーバー教授は問いかけています。

経済成長に歯止めがかかるのを恐れる工業国では「CO2排出量が少ない原子力発電をあわてて止めるのはどうか」という疑いの声があるようです。チェルノブイリ、そして福島原子力発電所事故後による放射性物質の放出と、それに伴う汚染は事故発生地だけにとどまりません。貯蔵方法も最終貯蔵地も不明な原発による核廃棄物が何十万年も地球全体を汚染することについて原発支持者は何を考えているのでしょうか。

zeitung 1 klein

絵のない 4こま漫画

  1. 無数の星が輝く宇宙。
  2. 2つの惑星が出会う。「どう、元気」と一つの惑星が相手の惑星に聞く。
  3. 「調子が悪い。どうやらホモ・サピエンスらしい」。
  4. 「心配するな。いつか終わるさ」。

 

 

引用記事
1)「Wohin?」、記者ローランド・プロイス(Roland Preuss)及びロネン・シュテインケ(Ronen Steinke)南ドイツ新聞、2014年6月22/23日

関連記事
Die Große Transformation: Prof. Dr. Hans Joachim Schellnhuber wirbt für die BürgerEnergie Berlin、geschrieben am 16. Januar 2014
http://www.buerger-energie-berlin.de/blog/die-grose-transformation-prof-dr-hans-joachim-schellnhuber-wirbt-fur-die-burgerenergie-berlin

関連リンク
ポツダム気候影響研究所、https://www.pik-potsdam.de/institute

映画「The March」、David Wheatley監督、1990年製作、http://www.imdb.com/title/tt0165382/

Comments are closed.