ノルウェーの国家基金、石炭産業から撤退
ドイツのメディアが伝えるところによると、ノルウェー議会は6月5日、世界最大級といわれる同国の国家基金を、今後は気候に悪影響を与える石炭産業に投資しないと決定した。イェンセン財務大臣は、投資ボイコットの対象となる企業を50〜75社としている。石炭採鉱企業だけではなく、石炭火力発電企業も含まれることになる。
議員らが全員一致で決定したのは、全事業の3割以上を石炭関連で賄っている企業への資本参加からの撤退だ。この中にはドイツの電力大手E.ONとRWEも含まれる。同基金が両社それぞれの約2%の株式を所有しているからだ。「石炭企業への投資は気候変動を促進すると同時に将来的な経済危機を意味する」というのが理由だ。
ノルウェーの国家基金の規模は約9000千億ドルといわれる。ドイツの非政府組織(NGO)ウアゲバルトによると、その内の約120億ドルが148社の石炭産業関連の企業に投資されている。ボイコットで売却されることになるのは、同基金内のごく一部、おそらく45〜77億ドル程度の資本参加とされる。しかし、この基金の影響力は大きい。同基金は昨年、「石炭産業は人類の将来に悪影響を及ぼす」とする道徳的な考えと同時に「気候保護規定のために利益が上がらない」という理由から、石炭鉱山を売却した。この例に倣って、 化石燃料への投資を考え直している他の基金なども増えているのだ。
フランスの保険会社アクサは先ごろ、これ以上石炭鉱山への投資をしないと決定している。クレディ・アグリコラーやバンク・オブ・アメリカなど世界各地の大手銀行も石炭採掘への信用貸しを縮小している。アメリカの石油王ロックフェラーの子孫たちさえ「もう化石燃料には投資しない」と言っているそうだ。
世界自然保護基金(WWF)の気候変動担当のスミス部長は「投資家は石炭が非道徳的であるだけでなく、経済的にも良好な投資でないことを悟った証拠だ」とノルウェーの決断を褒めている。しかしドイツ最大手のドイツ銀行のファンドマネジャーは、化石燃料への投資については考える必要があるが、「売却してしまうと、該当企業の運営に対する影響力も失ってしまう」と語る。ドイツ最大手、アリアンツ保険の気候対策担当マネージャーも、「投資家は企業との会話を通して影響力を行使し、責任を果たすことが出来る」と話している。
ノルウェーの国家基金は、北海で多量に採掘される化石燃料である石油と天然ガスを資源として大きく育った。
なお、化石燃料がダメなら、二酸化炭素排出量ゼロの原発への投資を考える人がいるかもしれないが、ドイツでは、放射性廃棄物が永遠に残り、人類の将来にとって有害で、しかも採算も取れない原発への投資は、全く話題になっていない。
写真参照
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