原発の後始末 その莫大な費用を負担するのは誰?

まる / 2016年5月15日

ドイツでは原発の廃炉とその廃棄物の最終処理の費用を誰が負担するのか。長い議論の末、政府諮問委員会が4月の末に提案をまとめました。

まず、E.ON、RWE、EnBW、Vattenfallのエネルギー大手4社は、これまでに原発の後始末のための費用として積み立ててきたうちの233億4000万ユーロ(約2兆9000億円)を、新たに創設する公的基金に差し出します。それ以上の費用、つまり最終処理場の場所探しとその建設•運営は国が行います。

233億4000万ユーロという数字には、見積もりよりもさらなる費用がかかることになった場合のための「リスク付加金」61億4200万ユーロ(約7600億円)も含まれています。

諮問委員会の計算のベースとなったのは、原発の廃炉と廃棄物の安全な保管には総額475億ユーロ(約5兆9100億円)かかるという2014年の試算です。4社はそのために、2014年までに383億ユーロ(約4兆7650億円)を積み立ててきていて、現在はそれが約400億ユーロ(約5兆円)になっていると推定されます。

ということは、諮問員会が4社に公的基金に差し出すことを求めているのは、その約半分だけです。しかしこれにより、将来もしこれらの企業が倒産したとしても、少なくとも233億4000万ユーロは失われないという保証ができます。そして企業の負担をある程度抑えることで、4社の株価がこれ以上下がらないようにするということも委員会の思惑にあったようです。諮問委員会には経済界の代表者も参加していました。

諮問委員の一人で、前ブランデンブルク州首相(社会民主党)のマチアス・プラツェック氏は「この結果はドイツの社会が受け入れられるものだ」とコメントし、同じく委員で前ハンブルク市長(州首相と同格、キリスト教民主同盟)のオレ・フォンボイスト氏も「納税者の利益を守りつつ、エネルギー会社が生き延びるための力を与える」と語っています。

しかし、反原発市民団体などからは厳しい批判が寄せられています。「アウスゲシュトラールト(.ausgestrahlt)」は「原発会社にとっては安価な免罪符だ」とし、連邦経済相のシグマー・ガブリエル氏に、そのような原発会社に有利な取引きには乗らないよう警告しています。そして「核のゴミを出す者は、数千年にわたるその保管費用も出さなければならない」、「エネルギー会社の積立金すべてを公的基金に出させるべき」と、エネルギー大手にさらなる責任を負わせるよう求めています。

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