ドイツ人の対日好感度、大幅下落! いったいなぜ…?

みーこ / 2013年6月30日

先日、インターネット上で、気になる国際世論調査の結果を見た。ドイツ人の対日好感度が、昨年と比べて、今年は大幅に下落しているというのだ。いったい何が原因なのだろう。ドイツに住む日本人として、自分なりに分析してみた。

この調査は、BBC(英国放送協会)が毎年、世界各国でおこなっている国際世論調査である。各国で1000人前後を調査対象とし、外国及び自国に対して良い印象を持っているか悪い印象を持っているかを答えてもらう。今年の調査では、世界平均で最も好感度の高い国はドイツ(昨年は2位)、日本は4位(昨年は1位)だった。この結果は5月末に発表され、ドイツでも日本でもちょっとした話題になっていた。私の母国日本も居住国ドイツもおおむね良い結果だったので、「ふ〜ん、良かったね」と思い、そのまま忘れかけていた。

ところが、最近、インターネットで、「【BBC調査】日本人の反中感情は「底が抜けた」? プラス評価はたったの5%」というタイトルの日本語のニュース記事を見かけ、へえと驚いた。このニュースサイトは、中国関連のことを主に扱うもののようで、当該記事も中国のことが中心だ。だが記事では、ドイツ人の対日好感度が昨年と比べて今年は大幅下落したということも指摘し、次のように書いている。

気になるのがドイツ。2012年の調査では58%、29%とダブルスコアで良い印象を持っていたのに、1年で評価が大逆転してしまった。調査期間(※原文では「機関」となっている)は2012年12月から2013年4月で慰安婦問題が取りざたされる前に調査は終了している。何がドイツのみなさんの気に触ったのだろうか。アベノミクス? 香川の移籍?

ドイツ人の対日好感度が短期間にそれほど下落したとは、ドイツに住む日本人としては聞き捨てならない。私も早速オリジナルレポート(2012年2013年。英語。「Backgrounder」をクリックすると、国別分析が現れる)を当たってみた。すると確かに、2012年から2013年にかけて、ドイツ人の対日好感度は無残なまでに下落している。良い印象は58%から28%へと、悪い印象は29%から46%へと変わっているのである。

いったい何が原因なのだろうか? ドイツに住む日本人として、理由を自分なりに分析してみたい。オリジナルレポートによると、この調査がドイツでおこなわれたのは、2013年2月14日〜3月8日の期間だ。おそらく、2012年の春以降くらいに報道された出来事がドイツ人の記憶に残っていて、日本観に影響を与えたと思われる。この間にドイツでどんな日本報道があったかを思い出してみると、次のようなことが浮かぶ。

・2012年6月:野田政権、市民の反対を押し切って大飯原発再稼働。
・2012年6〜8月:脱原発デモが盛り上がるが、政治を動かせず。
・2012年9月:野田政権、脱原発方針からずるずる後退。
・2012年9月:石原慎太郎都知事が尖閣諸島を国有化しようとしたことで、
日中間の緊張感が高まる。
・2012年12月:自民党大勝。安倍政権成立。各国で「日本、右傾化か?」
という懸念に満ちた報道が相次ぐ。
・2013年1月:ダボス会議で、ドイツ連邦銀行総裁やメルケル首相が
「アベノミクスは為替操作だ」と批判。麻生財務相は反論。

大まかに言うと、「脱原発方針の失速」「右傾化政権の誕生」「領土問題」「金融政策」の4つがありそうだ。特に、前者2つは大きな出来事なので、日本にそれほど関心のないドイツ人の記憶にも残っていたのだろう。

国際世論調査に対して、「日本に悪い印象を持っている」と回答したドイツ人の平均的な思いは、おそらく次のようなものではないかと私は考える。「フクシマであんなに大きな事故があったのに、日本はなぜ脱原発に舵を切らないのか? 我々ドイツ人は脱原発を実現するために頑張っているのに。日本人はこれまで原発を推進してきた政権にまた投票したなんて、何を考えているのだろう。しかも安倍政権というのは、日本の侵略の過去を否定している右翼政権だと言うではないか。それに、我々ドイツは、スペインやギリシャの借金を肩代わりしてユーロ圏を救うために必死なのに、日本は為替操作をしたり隣国と小さな島のことで争ったりしてばかりで、世界でうまくやっていけない国なのではないか」。

「いや、そんなのは浅い見方だ。日本の抱えている経済問題や国内事情をドイツ人は分かっていない!」と反論したくなる日本人もいるかもしれない。しかし私は、国外からのシンプルな見方のほうが的確に本質を捉えていることもあるし、そこから日本人が学べることも多いと思う。またいずれにしても、この国際化の時代に、日本の国内事情や日本政府の公式見解にばかりこだわって内向きの姿勢でいては、世界から取り残されてしまうと思う。

このような調査の結果は鵜呑みにすべきではないが、一つの傾向を表しているとも思う。この調査は、毎年おこなわれるようだが、来年の結果はどうなるだろうか。ドイツに住む日本人としては、ドイツと日本には、相思相愛の仲でいてほしい。(ちなみに日本人の対独好感度は、良い印象は47%、悪い印象は3%。ドイツ好きな日本人が圧倒的に多いということだ。)

関連記事:原発事故3年、変化するドイツ人の日本観

Japan2012

対日好感度(2012年)。クリックすると大きくなります。

対日好感度(2013年)。クリックすると大きくなります。

対日好感度(2013年)。クリックすると大きくなります。

 

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