ドイツが心配する尖閣諸島問題
みどりの1kWhの本来のテーマとは離れるのですが、1月23日付の南ドイツ新聞第2面「今日のテーマ」で、「中国と日本の間の力比べ」が大きく取り上げられていました。昨夏から騒がれている尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる領土問題については、もちろんドイツにも伝わっています。秋くらいに中国人の知人から「戦争にならないといいね」というEメールを貰った時には「まさか、そんな……」と思ったものですが、ここ数ヶ月の両国の不穏な言動を見ていると、やっぱり心配になってきました。
この南ドイツ新聞の第2面を見ると、まず目に飛び込んで来るのは、日本の港湾局の船が中国の船2隻を止めている写真(そういう説明がありますが、日本の船が中国の2隻の船に両側から挟まれているようにも見えます)です。そして大きな記事が二つ。一つは「そっけない言葉、速やかな行動」、もう一つは「舞台を揺るがす雷」がタイトルになっています。
「そっけない言葉、速やかな行動」の方の小見出しでは、「日本の新政府は中国とのいかなる対立をも恐れてはおらず、そのため米国はにっちもさっちも行かなくなっている」とあります。安倍政権は対中国のための戦略的同盟関係をアジア各国で築くため、「アジアの民主主義セキュリティー・ダイアモンド構想」を発表しており、政権発足後さっそく、新しいミサイル防御システムと無人偵察機を購入し、迎撃戦闘機を改修することを発表したと説明しています。そして日本側は「次に中国の戦闘機が尖閣諸島の領空に近づいた場合には、警告射撃も行う」と宣言し、中国側も「日本が警告射撃すれば開戦だ」と言っています。日米安保条約のため日本を守る立場にある米国は、本当は自分たちの利益にならないこの問題に巻き込まれたくないため、クリントン国務大臣が中国に対して「日本の施政権を損なおうとする、いかなる一方的な行為にも反対する」と牽制し、中国側を怒らせていると伝えています。
もう一つの「舞台を揺るがす雷」という記事は、昨夏に始まった尖閣諸島問題が毎月エスカレートしてきており、今では「第2次世界大戦以来の敵意」を感じるまでになっている、それを舞台裏で緩和しようとしている米国は、実は紛争の真っただ中にいると記しています。日本は米国の援助を求めているが、中国側は日本のことを「中国を抑えるための米国の戦略の駒の一つ」としか見ていない(人民日報からの引用)」と書いています。そしてこの対立関係は実は、世界の力関係を示すパズルの一部でしかないといいます。「中国を抑えようとする日本の願いはこっけいだ。」「中国は上昇する国であり、アジアの地政学を牽引する力である」という中国の地球時報の言葉を引用し、中国共産党の習金平総書記は中国の「再生」を謳って、南シナ海でもベトナム、フィリピンとの領土問題を抱えていることにも触れています。そして、中国が自信を持つのは、中国が日本を衰退しつつある国家として認識しているからだと指摘します。
中国首脳陣の一部は日本だけでなく、米国も衰退の道を辿っていると見ており、強硬派として知られるある将軍は、すでに昨年8月、「もし中国が釣魚島のために日本と戦争をすれば、米国は兎のように逃げ出すだろう」とテレビで発言したといいます。グローバルタイムス紙(中国の英字紙)も「軍事的衝突の可能性はどんどん高まっている。最悪の事態のために準備しておくべきだ」と書いているそうです。
最後に南ドイツ新聞北京特派員、カイ・ストリットマッター氏は、この記事をこう結んでいます。「本来中国は、軍事衝突に興味はないはずである。日本は中国での最大の投資家であり、2番目に重要な貿易相手国である。このようなエスカレーションは、これは中国首脳陣も分かっていることだが、中国の新しい大きさを示すものではなく、すぐにアジアと世界のあらゆる所で敵を作り、始まったばかりの上昇は不意に止まってしまうだろう。しかし最も危険なのは、誰も望まないのに状況が制御不可能になることである。軽卒な挑発一つで、そのような事態に陥る恐れがある」。
そうですよね。誰も望んでいないのに、何かの拍子であっという間にコントロールできなくなる。そういう可能性だってあるはずですね。
これらの記事が掲載される前日、1月22日の南ドイツ新聞は、独仏協力条約(エリゼ条約)調印50周年を記念して、フランスのルモンド紙と共同で、新聞まるごとフランス特集でした。パノラマ面を開けば、「エレガントで、しかも楽々と仕事と家族をマネージするパリの女性」たちについての記事や、ロミー・シュナイダーとアラン・ドロン(交際期間1958−1962年)、ギュンター・ザックスとブリジット・バルドー(結婚期間1966−1969年)といった独仏の夢のカップルの紹介、スポーツ面では、フランス人とツール・ド・フランスとの関係についてや、サッカークラブのパリ・サンジェルマンについての記事といった風に、政治・経済面に限りませんでした。
こんな楽しいことができてしまうなんて、やはり50年間努力して築きあげてきた友好関係は違いますね。羨ましい限りです。
戦争の負け方を知っているドイツ、懺悔贖罪、不屈のゲルマン魂。
戦争に負けたことがドイツと日本の唯一の共通点。
ドイツは再び自由を勝ち取り、日本はいまだ占領下の植民地。
清き大和魂は何処へ。
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