いよいよトラックも電動化

ツェルディック 野尻紘子 / 2021年7月25日

バッテリーを搭載して電気モーターで走るメルセデス・ベンツののトラックeActros©️Daimler AG

ドイツの自動車大手ダイムラー(本社シュトゥットガルト)のメルセデス・ベンツ・トラックス部門はこのほど、秋から初の大型電気トラッ クのシリーズ生産に入ると発表した。物資の運搬に欠かせない大型トラックは通常ディーゼルエンジンで走行しているが、エンジンの容量が大きいために排ガス量も多く、環境によくないとされる。しかし、トラックの電動化のためには、乗用車とは比較にならない特別大きくて重いバッテリーが必要となるため、今までは量産が難しいとされていた。

メルセデス・ベンツ・トラックスがシリーズ生産を始めるトラックの名称はeActrosで、2016年にハノーバー・メッセで初めてコンセプトカーとして発表された。2018年からの2年間には、ドイツやスイス、オランダ、ベルギーの顧客が 10台のプロトタイプを、シリーズ生産前の問題点の洗い出しのために検証、試験してきた。その結果を反映させたトラックが、この秋からラインラント・プファルツ州の同社のトラック工場で、従来のディーゼルエンジン搭載のトラックActrosと並行して生産されることになったのだ。

メルセデス・ベンツ・トラックスの責任者であるカリン・ラードシュトレームさんは、トレーラーと積み込み可能な荷重を含めたeActros の総合重量は40トンで、もちろん遠距離走行も可能だが、このトラックは地域内の近距離の貨物の運搬用だと考えている」とオンラインの記者会見で語った。そうすれば、例えば騒音が問題になる都市内での夜間の荷積みや荷下ろしが可能になるし、ディーゼル車禁止の中心街などへの乗り入れもできるようになる。また顧客側の運転手たちも、騒音が従来のトラックの60デシベルの半分しかなくて静かなことを大いに歓迎したという。

eActros の充電は直流電力で ©️Daimler AG

一度の充電で可能になるeActrosの走行距離は400 kmで、備えられた2台の電気モーターの性能は通常の走行時には330 KW(449馬力に相当)だが、ダイナミックな走行が必要な際には400 KW(544馬力に相当)に切り替えられる。バッテリーは3パックのものと4パックのものの二種類があり、それぞれ315 kWh あるいは420 kWh の容量を持っている。つまり1個のパックの充電容量は105 kWh で、これは従来からある自動車用の最大バッテリーに相当するという。充電は最高160 KW の直流電力で可能になり、充電された電力がバッテリー容量の20%から80%に達するのにかかる時間は1時間だという。交流電力での充電には時間がかかりすぎるので、同社は考慮しなかったという。なお、1パックのバッテリーの大きさは210 cm  x  74 cm  x  27 cm で、重量は740 kg だというので、バッテリーパックには相当大きなスペースが必要になり、重量もかなりになる。

eActrosの価格は、現在ディーゼルトラックの約3倍だが、政府の助成金が価格の約80%をカバーするので、購入費用はそれほど高くつかない。「高速道路の料金なども免除されるし、燃費も良い。運搬業者にとって重要な意味を持つ総合経費の上でも、2025年までにディーゼルトラックと競争できるようになっていると思う」とラードシュトレームさんは言う。また、メルセデス・ベンツ・トラックスは水素を使った燃料電池で走るトラックの開発も進めており、同氏は、この技術にも将来性があると思っていると語った。ドイツでは2年前に、アウトバーンの車線の上に架線を張り、そこから走行中のトラックに電力を供給するシステムのテストも始まっている。大型トラックは将来どう発展するのだろうか。

なお、ドイツではこの7月に電気自動車の登録台数が予定より半年遅れて100万台に達した。ちなみに、メルセデス・ベンツは7月22日に、2030年までに全ての乗用車を電動車にする計画を発表した。電気トラックも将来、電気自動車のように普及するのか、注目される。

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