エルベ河に浮かぶ河川水車
ガタンゴトンと緑の森にひびく水車の音、小川のせせらぎも聞こえてきます。赤ずきんちゃんが花を摘んでいた森に、水車が入り、これでドイツのイメージは完成です。シューベルトの「美しき水車小屋の娘」のメロディーが聞こえてきそうです。
ドイツ中西部のザクセン=アンハルト州の州都マグデブルクにある大学のマリオ・シュピーバック氏を中心に、16人の中小企業家、4つの研究所が集まり、水車の原理を使って、水力発電ならぬ河川水車発電に挑んだ、と10月27日のベルリンの日刊新聞「ベルリーナー・ツァイトゥング(Berliner Zeitung)」が伝えています。
この新しいエネルギー作りは、昔ながらの水車の原理をそのまま生かしたものです。しかしそれは、私たちのイメージにある懐かしい水車小屋とは似ても似つかぬものです。
近々に発表予定のシリーズ第一号は、長さ13.5m、巾6mの台座にタービンが固定され、下を流れる水流で得られるエネルギーは10キロワット。それは20世帯の電力需要に見合うとのことです。この第一号はヴェクトアと名付けられたそうです。これに続くシリーズは、「新兵器」加速翼式水車の導入でさらに効率が上がり、水車一台で20から30世帯への電力供給が可能になる、とシュピーバック氏は述べています。
ここまでは、水車の原理が使われているので簡単に理解できますが、シュピーバック氏とチームの苦労は他のところにありました。
エルベ河はよほどのことがない限り、涸れることも凍りつくこともありません。この技術では、水車が設置される河床の深さが、少なくとも1.5から2.0メートルなければなりません。そこで、過去20年にさかのぼったエルベ河水深の調査が始まりました。通年のみではなく、季節ごとの変化も調査し、それらに適した大きさの、さまざまなタイプの水車が出来上がっているそうです。これらの水車を、多様な現場で実際に試みる実験は、まもなく始められるそうです。そしてこのプロジェクトが事業化されることについて、シュピーバック氏らはかなり楽天的で、これまでの投資4万ユーロ(約420万円)も6年以内に償却できる見通しです。同時に単価を下げることと、水車の重量を軽くすることも大事だと述べています。
すでに河川水車の原型が、今年3月からドイツ・ハルツ地方のエルベ流域で実力を示し、5世帯に電力を提供している事実があるので、チームの人たちは楽観的です。
エルベ河流域の中小企業はもとより、スイス、カンボジアなどからの引き合いもあるそうです。日本ではどうでしょうか。