「青い天使」がいっぱい - ベルリンで見つけた文房具店

あきこ / 2013年1月13日

映画「嘆きの天使」はドイツ初のトーキーで、マレーネ・ディートリッヒを一挙にスターダムに押し上げた1930年の映画である。原題はDer blaue Engel、直訳すれば「青い天使」。ところで現代の「青い天使」をご存じだろうか。環境にやさしい製品の目印として1978年に誕生し、今ではドイツだけではなく国際的にも広く消費者に認知されている。この「青い天使」マークをつけた文房具類、再生紙だけを用いた紙製品、持続可能な森林経営を目的にした森林管理協議会(FSC、Forest Stewardship Council)の認定を受けた商品だけを扱っている店がベルリン・ミッテ地区に誕生した。

ベルリンの日刊紙「ターゲスシュピーゲル」の経済面に小さなコラムがあり、ベルリンで起業した人たちが紹介されている。ビールの醸造家、額縁修理業、和服のリメークなど、実にさまざまな人が紹介されているが、最近紹介されていたお店に目がとまった。「ポリー・ペーパー(Polly Paper)」という名前はオーナーであるポリー・シュミンケさんの名前から来ている。ベルリンで最もトレンドに敏感な若者たちが集まる場所の一つであるハッケシャー・マルクト駅から歩いて約5分のところにある。

ポリー・シュミンケさんは、「ドイツ・フィナンシャル・タイムズ」の記者からフリー・ジャーナリストに転身。その間、ずっと環境にやさしい文房具を探し続けていたが満足を得られず、「他に誰もやる人がいないなら、私がやってみよう」ということで開店したという。2012年8月にオープンしたばかりのお店は、日没が早くて暗くなった通りをとりわけ明るく照らし、ひと際目立つ存在となっている。

店内に入ると、まっ正面に緑でPolly Paperと書かれた文字が目に飛び込んでくる。ぐるりと見回すと、カラフルな包装紙、ノート、メモ帳が並べられ、明るい照明に映えて気持が楽しくなるようだ。よく見ると、書類整理用のバインダー、ボールペン、ホッチキス、万年筆、お絵かき用のクレヨンなど実に多彩な品ぞろえになっている。紙製品はすべて再生紙を利用、ボールペンは持つところがペットボトルを再利用した商品(日本のパイロット製)、木製のものなどがある。どのボールペンも替え芯が用意されている。 “ポイ捨てのメンタリティ”になじむことができなかいというオーナーのシュミンケさんは、どんなに安いボールペン(25セント=約28円)にも替え芯を用意している。

カラフルな包装紙はニュージーランドやカナダの製品だ。これらの製品を求めて、ドイツ国内で開催される見本市を見て回り、買付けの仕事をするのもオーナーの仕事だ。遠方の国々からの製品をドイツまで輸送するためのエネルギーやCO2排出量のことを考えると、私は矛盾を感じるのだが、シュミンケさんは再生紙イコール灰色というイメージに対して、「美しさ」や明るさを強調しているのだろう。それは並べられた商品を見れば歴然である。

「再生紙は森林を守り、水とエネルギーを節約し、環境破壊を防ぐ」というシュミンケさんが信頼を置くのが「青い天使」マークとFSCのロゴである。最新の研究成果を踏まえた基準と、独立した第三者による審査委員会で選定された「青い天使」マークの製品は、森林と大切な資源を守り、人間の健康を守る。FSCによって認定された商品を購入することで、消費者は世界中の森林資源の持続可能な管理に積極的に貢献することができる。シュミンケさんの持続可能性への思想は、商品の選択に見られるだけではなく、再生可能エネルギーで生産された電気を使い、銀行も社会貢献をモットーとするGLS銀行を利用するなど、彼女のビジネス・コンセプトを支えている。

シュミンケさんに、8月のオープン以後、お店の売上を含む経営について尋ねたところ、「赤字ではない。それなりに満足」という答えだった。確かにお店にはひっきりなしに客が訪れ、しかもドイツ人だけではなく、ベルリンを訪れた観光客とおぼしき人たちが大勢やってきて、真剣に商品を吟味して買っていく姿が印象的だった。とくに若い人たちには、カラフルな商品のディスプレイが目を引くようだ。シュミンケさんのような店は、ベルリンには他にはまだないようだ。「日本からのお客様も大歓迎!」ということだった。ちなみに、商品の値段は、リサイクルの素材を使っていない他の商品と変わらなかった。再生紙は高いという私の思い込みは、くつがえされた。

とかく使い捨てになりがちなボールペンにも替え芯を用意して、モノを大切に使ってほしいというシュミンケさんの気持ちが広がり、ポイ捨てではなく資源を大切にする消費意識が根付いてほしいものだ。

「青い天使」については、日本の環境省が世界の環境ラベルというページで紹介している。

また、森林管理協議会については日本にも支部があり、FSCジャパンという名称で活動している。

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