減らないゴミはどこへ?
「みどりの1kwh」のゴミ担当者へと、先日ロンドンにいる娘から「酷い」というコメントといっしょに、ある動画へのリンクが送られてきました。「プラスチック・プラネット、その1」でご紹介した写真家クリス・ジョーダン(Chris Jordan)が撮影した「還流(太平洋ゴミベルト)からのメッセージ」という約4分の動画でした。私たちが無意識に捨てているプラスチックの一部は海に流れ、自然への汚染は取り返しがつきません。
動画へのリンク
MIDWAY a Massage from the Gyre http://vimeo.com/25563376
「ゴミは高価。ただ捨ててはもったいない」とEUは大量のゴミをコントロールするように呼びかけ、2014年を「ヨーロッパ・ゴミの年」と指定しました。
しかし、現状はどうでしょうか。以下南ドイツ新聞の記事です。1)
地面から煙が出ている。破り避けたゴミ袋がいくつも、道端や休憩所、住宅の玄関前に積み重なっている。普通はオリーブとブドウが取れる田園さえゴミでいっぱいだ。社会の廃棄物が違法に埋められたり、焼かれたり、又はそのまま捨てられたりしている。その結果が汚染された畑とがん発病数の増加だ。イタリアの第3都市であるこの町ナポリは、世界で最も汚染されている地域の一つとなっている。イタリアの首都ローマの近辺にあるヨーロッパ最大のゴミ置場マラゴッタ。その面積はサッカー場の約340倍だ。ここは去年の10月に閉鎖することが決まったが、このゴミを何処に?
EU全28カ国のゴミの量は年間25億トン(毎年増え続けている)。トップはデンマークでその量は一人当たり年間668kg。すぐ後に続くのはキプロスとルクセンブルグ。「ゴミ分別のマイスター」と呼ばれるドイツでさえゴミの量は一人当たり年間611kgでEUの平均(492kg)を大幅に上回る。
「デンマークでは普通燃やすゴミは、ドイツではリサイクルされる。イタリアではゴミ置き場に積み置かれるだけだろう」と言われるほどゴミの処理についてのEU統一化は問題が多いようです。2015年までにどの加盟国も、紙、金属、プラスチックそしてガラスを分別することを決めました。2020年までには一般のゴミの再利用率を50%、建設廃棄物や解体工事による廃棄物の再利用率を70%に上げることを目指しています。ちなみに2012年のEUのゴミの再利用率は平均27%でした。以下南ドイツ新聞の記事です。1)
長期的には経済成長とゴミ増加の連関を切り離し(経済成長=ゴミ増加の関係)、ゴミ排出による環境汚染を防ぐのがEUの方針である。今までのような使い捨ての製品は有限資源から製品を作り、後にゴミ置き場へ捨てられる一方通行なシステムだ。これからは不要となったゴミを回収して再び生産材料として戻し、有限資源を不要とする循環システムに変えていかなければならない。
「まずはゴミを作らない。次にガラス瓶など使用済みの容器を再利用する。再利用できないゴミ、例えば紙やプラスチックは資源として使用する。更に再利用できないが燃えるゴミは燃やして熱資源として利用する。最後に残るゴミは最終廃棄物置場へ」とEUは加盟国にこれからのゴミの処理を5段階ピラミッドで表し、啓発活動を進めています。
EUの一番の悩みはこの廃棄物置場です。「もちろんゴミをどこかに投棄するほうが、分別して処理するよりは簡単で安上がりです」と語るのは、ドイツ連邦環境省のある担当者。「先ずはともあれ、これはあくまでも短期的な判断でしょう。地下水の汚染や土壌の汚染などの長期的な環境被害を無視すればの話ですが」。ドイツでは無処理廃棄物をゴミ置場に捨てることが2005年から禁止されていますが、以前、無処理廃棄物置場として使われていたゴミ埋立地が少なくはないそうです。ちなみにドイツで最大の面積を持つバイエルン州だけで、その数は約6700ヶ所。ドイツのゴミ置場の多くはゴミの種類についての記録はなく、なにが埋まっているかは不明です。ナポリのゴミ置場のように地面から煙が出てきた例はドイツではまだないようです。イタリア政府が自ら公表した統計によると、全体のゴミの41%のみがゴミ置場で朽ち果てているそうです。ルーマニア、マルタ、クロアチアやギリシャとなるとその割合が80~99%に及び、EU全体をみると3分の2以上のゴミは、最終的にゴミ置場に積まれているそうです。その中の腐らないプラスチックは、いつか海に流れ太平洋を汚染するのでしょう。
EUがゴミ削減に力を入れている一方、ヨーロッパのゴミが減ると困るのはゴミ産業です。消費者が捨てたゴミはこの産業の“無限”資源です。イタリアのゴミがドイツのゴミ燃焼場に送られてくると、ドイツのゴミ業界は喜んでいるとよく聞きます。地方自治体がゴミ産業の経済成長を促し、超大型のゴミ燃焼設備を設置した後、燃やすゴミが見つからず困っているという話もあります。
アルバ社(ALBA、従業員約9000人、年間取引高約4兆450億円)はドイツの大手リサイクル企業。ベルリン、ポツダム広場の地下3階では「ゴミ分別チャンピオンチーム」と呼ぶべきアルバ社の従業員が近くの商店、オフィスビルや住宅から集めたゴミを分別し、リサイクル用に送り出しているそうです。その量はここだけで毎日8t。
資源の乏しいオランダではヨーロッパで最新のゴミ分別設備を使って、ゴミ再利用率を上げています。この国ではプラスチックは分けずに家庭ごみと一緒に収集しているそうです。人口130万人のゴミがハイテク・ゴミ処理工場に運ばれ、そこで一瞬にして再利用可能なゴミと不可能なゴミとに分別されます。再利用可能なゴミは洗浄された後、粉砕され、プラスチック生産資源として使用されます。このハイテク処理工場の経営者の話によると市民がプラスチックを分けるよりも効率が良く、いままでの再利用率を47%も上回るそうです。自治体としても分別したごみを回収するために多種多様の清掃車を用意しなくても済み、燃費が節約できCO2の削減にも繋がります。
プラスチックの再利用によりEUでは2001~2010年の間にCO2排出量を半分以上減らすことができたそうですが、消費者のゴミの排出量においては、この10年間大きな変化はありません。いくら技術が進歩してもゴミの量は一向に減らないようです。
しかし、ゴミ問題を解決するために誰でもができることといえばごく簡単です。
ゴミはできるだけ少なく!
関連記事
1)“Von wegen Harmonie”, Lilian Siewert記者、Süddeutsche Zeitung, 20-Mai-2014,
“Grüne Punkt in die Tonne?”,Patrick Döcke 記者、 http://www.tagesschau.de/wirtschaft/gruener-punkt100.html
“Mülltrennung”, Plusminus ARD、 http://www.daserste.de/information/wirtschaft-boerse/plusminus/sendung/swr/2014/muelltrennung-102.html
イタリアのゴミ処理問題が絡んだ推理小説、『About Face』ドナ・レオン作
写真引用
数百万個のプラスチックのゴミで(Chris Jordan)
http://www.flickr.com/search?license=1%2C2%2C3%2C4%2C5%2C6&sort=relevance&text=chris%20jordan
バーデン=ヴュルテンベルク州の環境保護局のウェブサイト
http://www.umweltschutz-bw.de/?lvl=5102