イタリアでグローバル化について考える(3) 〜エネルギー事情〜

みーこ / 2013年12月15日
電気料金が高いイタリアだが、繁華街はネオンで飾りつけられていた。(トリノにて)

電気料金が高いイタリアだが、繁華街はネオンで飾りつけられていた。(トリノにて)

この秋の2か月半のイタリア滞在で感じたこと書いてみるシリーズ。今回は、イタリアのエネルギー事情について。


さて、イタリアのエネルギー事情はどうなっているのだろうか。調べたことをいくつか記しておきたい。まず、イタリアには現在稼働している原発はない。1986年のチェルノブイリ原発事故の前までは4機の原発が稼働していたが、事故のショックを受け、1987年に国民投票によって原発停止を決めた。しかし2009年にベルルスコーニ政権が原発再開を提案。2013年までに再開することがほぼ決まりかけていたが、2011年の福島原発事故を受け、また国民投票を実施。投票者のうち94.15%が原発反対の意思を示したため、原発再稼働はなくなった。

イタリアは、チェルノブイリ原発事故時には国民の生活を守るため、欧州の中で最も厳しく対処した国の一つでもある。青果市場の15日間の閉鎖、子どもと妊婦の生乳摂取禁止などの措置をとった。

現在の電力源は石油と天然ガスが中心で、この2つで80%近くに達する。再生可能エネルギーの導入も進んでいる。また、火山や温泉が多いイタリアでは、地熱発電が盛んで、2011年は5.38TWhを発電しており、これは発電全体の2.8%にあたる。地熱発電の分野では、世界でもトップレベルである。火山や温泉が多いというのは日本の地理に似ており、日本はイタリアを参考にできるのではないかと思った。(ちなみに、2011年の地熱による発電量は、日本はイタリアの約半分の2.63TWh、ドイツは0.03TWh。IEA「Electricity Information 2012」より。)

ただし、いいことばかりではない。エネルギー国内自給率が低く、電気料金が世界でも最高レベルなのである。(と言っても、電気料金は日本と大して変わらない。)電気料金とエネルギー自給率のデータを示しておくと、次の通りである。

<一般家庭用電気料金(1kWhあたり 2011年 同年の平均為替レートで計算。IEA「Electricity Information 2012」より)>
イタリア:0.28米ドル(約22.32円)
日本:0.26米ドル(約20.73円)
ドイツ:0.35米ドル(約27.90円)

<一次エネルギー国内自給率(東京電力による英文レポート「Challenges of TEPCO: Reaching for Sustainability」より。2009年の資料に基づく)>
イタリア:15%(原子力を含んだ場合も15%)
日本:4%(原子力を含んだ場合は17%)
ドイツ:30%(原子力を含んだ場合は41%)

ここで注釈をつけておくと、エネルギー国内自給率には2つの計算方法がある。原子力を含む場合と含まない場合である。原子力の燃料となるウランは、日本の場合、他国から輸入しているが、「準国産エネルギー」と位置づけられる(その理由は後述)。つまり、原子力を使えば使うほど、統計上のエネルギー自給率が上がる。ちなみに、原子力大国であるフランスの一次エネルギー国内自給率は、原子力を含まない場合は8%、含んだ場合は51%となり、もっぱら原子力を使うことで、エネルギー自給率を上げていることがわかる。

さて、原子力を「準国産エネルギー」と位置づける理由だが、日本の資源エネルギー庁は次のように説明している。

原子力の燃料となるウランは、エネルギー密度が高く備蓄が容易であること、使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できること等から、資源依存度が低い「準国産エネルギー」と位置づけられています。(資源エネルギー庁の「エネルギー白書2011」より)

しかし、日本においては、使用済燃料を再処理する政策は失敗続きだ。核燃料サイクル計画には、多額の投資がなされているが、青森県六ヶ所村の再処理工場は稼動が延期されたままだし、高速増殖炉もんじゅも、複数回の事故により実用化のめどは立っていない。再処理で生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分地も決まっていない。このような現状をかんがみるに、「使用済燃料を再処理できるから、原子力は準国産エネルギーと位置づける」という認識は、まったくお気楽と言うほかないのではないだろうか。原発を推進することで見かけ上のエネルギー国内自給率を上げ、それを根拠に「やっぱり原発は必要だ」と言うのはおかしな理屈だ……と思った。

話がずれてしまったが、イタリア滞在中は、どんなことがニュースになっているのか知りたくて、夕方になると、テレビのニュースチャンネルをつけっぱなしにしていた。「原発やエネルギー問題が話題になったら真剣に見よう」と思っていたのだが、それらの話題はまったく見かけなかった。現在のところ、ドイツでのようにはエネルギー問題が話題にはなっていないようだった。

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