ドイツ、消費電力の約50%は緑の電気 今後も再エネ推進目指す

池永 記代美 / 2022年7月21日

ドイツ国内で今年上半期に消費された電力の約半分、49%は再生可能エネルギーによる緑の電力だったことがわかった。2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、ガス代や電気代の大幅値上げや、ロシアからのガス供給が停止されるかもしれないなど、エネルギーに関しても憂鬱なニュースが続いている中で、久々に明るい話題となった。

この数値はエネルギー業界のロビー団体であるドイツ全国エネルギー•水利経済連盟(BDEW)とバーデン•ヴュルテンベルク太陽エネルギー•水素研究センター (ZSW) が共同で算出したもので、 暫定値として7月5日に発表された。それによると、2022年の1月から6月までの上半期にドイツで生産された電力は298テラワット (TWh)、消費された電力は281TWhだという。昨年同時期と比べると発電量は5.9TWh増え、消費電量は2TWh減ったそうだ。そして、その消費電量の49%に当たる139TWhが再生可能エネルギーにより作られた電力だったという。昨年同時期のその割合は43.3%だったので、 5.7ポイント増えたことになる。

再生可能エネルギーの発電量が増えたのは、今年の1月と2月は風がよく吹き、5月と6月は好転に恵まれ日照時間が長かったのが理由だという。陸上風力と太陽光発電の量が大きく増え、洋上風力発電とバイオガス発電も微増した。それぞれの発電量は以下の通りだ。

今回は化石燃料や原子力による発電量の内訳は発表されなかったので、その構成はわかっていない。ちなみに総発電量298TWhから消費電量281TWhを差し引いた17TWhは、国外に輸出された電力量を示す。「脱原発を進めているドイツは電力の不足分を、原発に頼っているフランスなどから購入している」といった情報を以前よく目にしたがそれは間違いで、今年上半期もドイツの電力収支は黒字だったのだ。なお、ドイツ政府は2030年までに電力の80%を再生可能電力で補うことを目標としているが、これは消費電力量の80%という意味で、発電量を基準にしたものではない。

消費電源構成における再生可能エネルギーの割合が高くなったのは喜ばしいことだが、今後、電気自動車やヒートポンプの普及などで2030年の電力消費量は750TWhになるとも予測されている。その80%の600TWhを発電するためには、再生可能エネルギーの大幅な促進が必要だ。そのためBDEWのケルスティン•アンドレー会長は今回の発表に合わせて、「とりわけ陸上風力発電の分野で、政治は素早く対応すべきだ」と指摘した。なぜなら昨年冬に発足した現政権は、選挙公約ともいえる連立協定で、国土の2%の面積を陸上風力発電に利用すると掲げているが、現在、陸上風力発電用に指定されている用地は国土の0.8%、実際に使われているのは0.5%でしかないからだ。その理由は、風力発電設備はその高さの10倍以上住宅から離れた場所にしか設置できないという規則がドイツ南部バイエルン州にあったり(似たような距離制限を設けている州は他にもある)、ドイツ東部チューリンゲン州では森林地帯での風力発電設備の設置が禁止されていたりするからだ。このままでは風力発電のための用地は十分確保できない。また、発電設備の設置計画の承認手続きが5年から10年かかっていることがこの分野への投資を躊躇させる要因になっており、風力発電業界は手続きの簡素化や迅速化を求めている。

こうした声に応えるかのように、エネルギー関連の諸法案が7月7日に連邦議会、続いて翌8日に連邦参議院で承認された。これは、今までのエネルギー変換のテンポでは「2030年までに二酸化炭素の排出量を1990年に比べて65%削減する」、もしくは「2045年にカーボン•ニュートラルを達成する」というドイツの目標を実現するのは不可能だという認識に基づいて、ローベルト•ハーベック経済•気候保護相が今年1月に発表した気候変動対策「即時プログラム」を様々な法律に反映させたものだ。その草案は4月のイースター休暇前に発表されたこともあり、「イースター•パッケージ」とも呼ばれていた。

今回承認されたエネルギー関連法のパッケージには、再生可能エネルギー法(EEG)や洋上風力エネルギー法、エネルギー経済法などの改正が含まれており、エネルギー関連ではこの数十年で最も重要で最大規模の改革になると言われているが、その核をなすのが「風力エネルギー用地法」、いわゆる「陸上風力発電法」だ。この法律では、現政権の目標を達成するために、各州が2032年までに州面積の何パーセントを陸上風力発電に提供すべきかを明記している。風のよく吹く地域かどうかでその値は1.8%から2.2%と幅があり、一つの都市が一つの州を構成している都市州、つまりベルリンとハンブルク、ブレーメンの3つの州は住宅が密集し自由に使える土地が少ないことから、目標値は0.5%と低く設定されている。また、どのように目標を達成するかは各州に委ねられていて、目標を満たせるなら今ある距離制限などの規制を廃止する必要はない。目標以上の用地を確保できた州が、目標を達成できない他の州に一定範囲までの用地を「譲渡」することも可能だ。このような仕組みを作ったのは、再生可能エネルギーの柱である陸上風力発電の促進は、喫緊の課題だという意識の表れだ。

今回の法改正に関して特記すべきことは、再生可能エネルギー法などに「再生可能エネルギーの利用は格別に重要な公益であり、公共の安全に資するもの」という条文が明記されたことだ。これは一種のパラダイムの転換といえる。これまでは環境や景観保護が優先され、訴訟により風力発電設備の設置などが妨げられることが多かったが、こうした法的根拠ができたことで再生可能エネルギー用の設備設置やその運営が優先事項とされ、許認可が下りやすくなるはずだ。こうした法整備により、陸上風力発電の容量を毎年10ギガワット(GW) 増やし、2030年には115GWの容量の風力発電設備を稼働することが目標になっている。ここで詳しく紹介したのは陸上風力発電についてのみだが、今回の法改正では洋上風力発電や太陽光発電に対しても、その設備拡大が促進されることが決まった。

国民は綺麗事ばかりではではなく、事実をきちんと説明するハーベック経済・気候保護相を信頼し、仕事ぶりも評価している。

 

このエネルギー関連諸法の大幅な改正は、そもそもは気候保護という目的を達成するために行われることになったわけだが、その間にロシアがウクライナに侵攻し、戦争が始まってしまった。そのため、ドイツのエネルギー政策は気候保護上の目標を目指すと同時に、ロシア産エネルギーへの依存からの脱却も最優先事項となった。ハーベック経済•気候保護相は、「もし10年前から真剣に再生可能エネルギーへの転換を行ってきていたなら、ドイツは今のようにロシアに依存することはなかった」と連邦議会で悔しそうに語ったが、それは本心から出た言葉だろう。ロシアからのガス供給が途絶えれば、ドイツ経済は大打撃を受け、市民は寒い部屋で冬を過ごさなければならない。土俵際に追い込まれてやっとドイツの人たちは、国際政治状況に左右されない安全な再生可能エネルギーのありがたみを悟ったとも言える。今回のエネルギー危機が、エネルギー転換を大きく前進させる起爆剤になることを期待する。

 

参照記事 : 鳴り物入りの温暖化対策、効果はいかに?(2019年10月13日) / 温暖化対策、緑の党の介入で改善 (2019年12月29日) / ドイツの総発電量の約半分を占める再生可能電力(2020年12月27日) / 連邦憲法裁判所、気候保護で画期的な判断 (2021年5月9日) / ロシアへの過大なエネルギー依存ーウクライナ危機で窮地に立たされるドイツ(2022年4月24日) / ロシアが天然ガスの供給を停止?ドイツに危機(2022年7月4日)

3 Responses to ドイツ、消費電力の約50%は緑の電気 今後も再エネ推進目指す

  1. まり says:

    良いニュースですね。イースター・パッケージも効果有りますように!

    • 池永 記代美 says:

      最近はエネルギーというと、良くないニュースばかりでしたので、こういうニュースは本当に嬉しいですね。難しい状況の中ですが、これからもエネルギー転換がうまく進むことを望んでいます。

  2. 池永 記代美 says:

    読んでくださってありがとうございます。その後ロシアからのガスの供給量がさらに減り、エネルギー転換は時間との競争となってきた感があります。私たちもさらにエネルギーや資源の無駄遣いをしないよう心がけることが必要になってきたと思います。