ドイツ、包装ゴミのチャンピオン

永井 潤子 / 2018年9月30日

日本の食品を買うと、包装ゴミが山のように出る。例えば小さなお煎餅やお菓子が一つ一つ包装されていたり、何重にも包装されたりしている過剰包装の商品が多いためである。日本には伝統的に美的センスを活かした「包装文化」と呼べるようなものがあり、包装によって高級感を出すという考え方もあるように思う。日本のそういう伝統はなかなか変わらないのではないかと思う。しかし、最近はドイツ食品を買っても、包装ゴミがたくさん出るようになった。以前は裸売りされていた野菜や果物の多くが、ビニールなどで包装されているためだ。「困ったことだ」という感じを抱いていたところ、ドイツで包装ゴミの量が増え続けているということが、公式発表で確認された。

「我々はあまりにもたくさんの包装ゴミを出している。ドイツは悲しい点で、ヨーロッパのトップを占めている」。先ごろこう語ったのは、ドイツ連邦環境庁のマリア・クラウツベルガー長官である。彼女は、2016年にドイツが出した包装ゴミの量は、全体で1816万トンにのぼると述べた。これは国民一人当たり1年間に220.5キロの包装ゴミを出した計算になるという。EU加盟国の平均は、167.3キロで、ドイツはそれより50キロ以上も多い。クラウツベルガー局長によると、2015年に包装ゴミの量でヨーロッパのトップだったドイツが、2016年も再度トップの座を占めるのは確実だという。2015年にEU加盟国の中でドイツ同様平均より多いゴミを出していたのは、デンマークとスイスだけだった。一方、オランダとイギリスは、2004年以降、目立って量を減らすことに成功している。これに反してドイツでの包装ゴミの量は、年々増え続けているという。

2016年のドイツの場合、プラスティックのゴミの量は前年よりわずかながら減ったが、ガラスとアルミのゴミの量が増えたという。ガラスもアルミも生産する段階で多量のエネルギーを必要とするが、その一方、ガラスやアルミはリサイクル率が高いという特徴もある。

包装の種類は多種多様で包装ゴミの種類も多種多様だが、ドイツの環境団体、DUHのトーマス・フィッシャー氏は、ドイツの公共ラジオ放送、ドイチュラントフンクとのインタビューで次のように語っている。「包装ゴミが増えている理由も多種多様である。例えば、生産される商品が、ますます少量ずつに小分けされるようになった。また、今ではスーパーマーケットで売られる野菜や果物の62%が、ビニールなどで包装されている。ピザなどの宅配も急激に増えている。さらにはアマゾンなどオンライン・ショップで商品を購入するケースが二桁の伸びを見せている。これらが包装ゴミの大量生産の主な理由である。ディスカウント・スーパーで、使い捨てのペットボトルに入った飲料しか売られていないことに対する直接の責任は、メーカーと販売側にあるが、消費者も環境に優しい包装の商品を買う努力をしなければならない。便利でもオンライン・ショップで買うことは、控えるべきだ。ドイツは包装ゴミのチャンピオンという不名誉な称号を、できるだけ早く返上しなければならない」。

確かに最近では歩きながらコーヒーを飲んだり、食べ物のテークアウトや食材の宅配などを利用したりといった生活習慣の変化が生まれている。それによって、さまざまな包装ゴミが飛躍的に増えているのだ。最近アマゾンで日本から本を買った時には配達が早いのに驚いたが、立派なボール紙の包装は、直接本屋で買った場合には全く不要のものあることに気がついた。人々は便利さを求めて、包装ゴミが増えることには無頓着になってきているが、特にプラスティックゴミの増加は、世界的に海洋の生態系を危機にさらしていると警鐘が鳴らされている。

こうした世界的な傾向に加えて、ドイツ特有の事情がゴミの増加に拍車をかけていると言えるかもしれない。ドイツは1991年に他の国に先駆けて包装ゴミに関する「包装材リサイクル規制法」を制定し、「グリューネ・プンクト(緑のマーク)」による包装材の回収、リサイクルなどを決めたデュアル・システムを導入した。例えば緑のマーク付きの1.5リットルのミネラルウオーター入りのペットボトルを使用後、スーパーなどに返すと、25セント(約33円)のデポジット代が戻ってくるといったシステムである。当時「環境先進国ドイツ」などともてはやされたため、ゴミの処理やリサイクル問題でドイツは今でも世界のトップに立っているという幻想を抱いている人も少なくない。ゴミは増えてもリサイクルすればいいという考え方が無意識に優先的になり、ゴミそのものを減らすという視点が後退してしまったのではないだろうか。

ドイツ連邦環境庁の発表によると、包装材のリサイクル率が比較的高いのは、金属類(92.1%)、紙とダンボール(88.7%)、アルミ(87.9%)、ガラス(85.5%)などで、プラスティック(49.7%)や木製品(26% )のリサイクル率は低い。ドイツでは来年2019年1月1日から新しい法律が実施され、現在49.7%に過ぎないプラスティックのリサイクル率を58.5%に引き上げることが義務付けられる。さらに2022以降は、その率を63%に引き上げることが決められている。ドイツ連邦環境庁のクラウツベルガー長官は、包装がますます豪華になって複数の材料が使われることが多くなっているが、それがリサイクルを難しくしているとして、生産段階で複雑な包装をなくすよう、呼びかけている。

一方、環境団体は、公式に発表されたリサイクル率の中には、リサイクルできずに最終的に焼却に回されたものも含まれており、実施のリサイクル率はもっと低いと批判している。ドイツの環境団体DUH のフィリップ・ゾンマー氏は、「包装規制法はリサイクルに重点を置いているが、最も重要なのは、包装を減らすことである。また、例えばガラス瓶を溶かしてリサイクルするのではなく、ガラス瓶を洗浄して何度も利用することが大事である」と強調する。

結局増えるゴミ問題に対しては、まずゴミそのものを減らすこと、次にガラス瓶やペットボトルなどの再利用を増やすことが重要で、リサイクル問題は3番目に過ぎず、4番目にリサイクルできずに焼却するゴミの量を減らすという順序になる。私たち一人一人も遠方から包装されてくる商品をなるべく買わずに、地元でとれた裸売りの野菜や果物を買うなどの努力が必要になるだろう。全く包装をしない商品を置く商店もドイツ各地で生まれている。

参考記事: ドイツのゴミ回収システムはゴミ箱に入れるべき

 

Comments are closed.