こわいロシアの原発推進映画

まる / 2012年4月29日

福島原発事故にも関わらず、世界中で”原発のルネサンス”の傾向は止まらないようです。2012年4月9日のシュピーゲル誌電子版は、「アトム・イワンの電気ロマンス」というタイトルの記事で、ロシア政府の原子力政策について伝えています。

「アトム・イワン」(Atom Iwan、英語名はAtomic Iwan)というのは、4月初旬からロシア全国の映画館で上映されている映画の題名で、登場人物は美貌の原子力学者のターニャ、その彼氏である原発技術者で子供っぽいイワン、原発労働者たちと原発創立記念のための劇作品を作る、ターニャに恋するアーカディ。ターニャはイワンと別れたいのだが、お腹の中にはイワンの子が…

映画は見ていないので、詳しい内容は分かりませんが、同記事によるとこの映画の製作資金を出しているのはロスアトム社(Rosatom)。まるで原発推進のためのプロモーション・フィルムのような印象を与えるそうです。ロシアはプーチン首相も言っているように、原子力のルネサンスを目指しており、国内では2030年までに30の新しい原子力発電所を建設する計画があるそうです。

ロスアトム社は海外への進出計画も進めており、例えば、ドイツのエネルギー会社RWEとE.onが3月に英国の原発プロジェクト、ホライズン(Horizon)から撤退することを発表した直後に、170億ドルかかるこのプロジェクトを引き継ぐ用意があると表明しています。

ロスアトム社は現在、欧州に近いカリーニングラードで新しい原子炉2つの基盤を作り、将来的にはそこで作る電力を欧州へ輸出するつもりです。脱原発を宣言したドイツも市場の一つとして考えており、天然ガスを輸送するためにバルト海に敷設したノルド・ストリーム・パイプラインの横に、電力送電線を走らせたいそうです。

従業員30万人のロスアトム社はただの会社ではなく、クレムリンの”腕の延長”。プーチンがかつての原子力エネルギー省を会社に作り替えた組織です。長年の間、武器と宇宙飛行技術の輸出でしか成功していないロシアにとって、原子力技術には海外進出の期待がかかっています。

2011年末からはベトナムで同国初の原子炉を建設しており、2030年までにさらに12基を建設する予定にしています。イランも、ロスアトム社がブシェールで原発を建設した後、5つの原発を発注しようと考えている。ベネズエラ、アルメニア、ポーランド、トルコとも交渉中で、チェコのテメリンでの原発計画でも、受注をめぐって米国のウェスティングハウス社、フランスのアレバ社と競争しています。

ロシアでは、チェルノブイリ原発事故から26年後の現在、その惨事が落とした影はかなり薄くなっているそうです。福島原発事故にもかかわらず、2011年の調査では、国民の13%しか脱原発を求めていなかったということです。

ここまではシュピーゲル誌のまとめです。ロスアトム社のキリエンコ社長は最近来日して玄葉外務大臣を表敬訪問し、5月3日に発効する「日露原子力協定」のための通告をお互いにしたそうです。ロシアと日本がベトナムでの原発建設で協力するという話もあります。ロスアトム社の世界戦略、日本での動きにも注目です。

映画題名 Atomic Iwan

監督 Vasily Barkhatov (演劇監督、映画デビュー)

主演 Grigory Dobrygin (2010年ベルリン映画祭銀熊賞受賞)

撮影はモスクワの北西200kmにある、カリーニン原子力発電所などで行われた。

 

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