4月15日の脱原発を前に、レムケ環境相の記者会見

池永 記代美 / 2023年4月6日

4月15日、ドイツでは現在稼働中の最後の3基の原子炉が停止する。バイエルン州北部、マイン川沿いに建設されたカール原発が1962年2月1日、ドイツで初めて商業用発電を開始してから約60年。ドイツではついに、原子力発電の時代が終わることになる。その記念すべき日を控えた3月30日、ベルリンでレムケ環境相らの記者会見が行われた。

4月15日に稼動停止するのはドイツ南部にあるイザール第2原発(写真)とネーカーヴェストハイム第2原発、ドイツ北部にあるエムスラント原発だ。©︎Preussen Elektra

本来ドイツの脱原発は、昨年の12月31日までに達成されることになっていたが、ロシアのウクライナ侵攻が招いたエネルギー危機を緩和するため、ドイツ連邦政府は昨年秋、最後の3基の原子炉の稼働期間を、3ヶ月半延長した。この判断が下される前には、稼働延長の是非を巡って国民的大議論が起きたが、今回は、野党の一部の原発支持派からしか、原発稼働停止を批判する声は聞こえてこない。さらに稼働期間を延長するとなれば、厳しい安全検査が必要となり、そうすれば原発操業のコストはかさみ、安価な再生可能エネルギーとの競争に勝てないことなどを、原発運営事業者や市民が知っているからだ。

この冬が暖かかったこともあり、3ヶ月半の稼働延長は必要なかったのではないかという声もある。しかしこれは、冬が終わった今だから言えることで、3ヶ月半延長というショルツ連邦首相(社会民主党)の判断は、妥当なものだったと言えよう。当時この判断で重要だったのは、 「新たな燃料棒を購入することはしない」と、ズルズル稼働延長に持ち込もうとする人たちの望みを断ち切ったことだ。

3月30日にベルリンで行われた記者会見で、シュテフィ•レムケ環境•自然保護•原子力安全•消費者保護相(緑の党、以降環境相)は、「原発が高リスクの技術であることに変わりありません。ドイツのようなハイテク国家でも、原発のリスクをコントロールすることはできないのです。日本もフクシマの事故を防ぐことはできませんでした」と、メルケル前首相の様にフクシマを引き合いに出して、ドイツが脱原発を行うことは正しい判断だったことを強調した。さらに、昨年2月にロシアがウクライナで始めた戦争では、原発の敷地が占領されたり、原発が攻撃の標的になったりと、かつては想像もしなかったことが現実に起きているにもかかわらず、戦争対策をとっている原発は、世界中どこにもないことを指摘した。

「長い間、脱原発のために、エネルギー転換のために、原発の危険から故郷を守るために闘ってきた人たちに心から感謝する」と、レムケ環境相。

記者会見に同席した連邦放射線保護庁 (BfS) 長官のインゲ•パウリーニ博士は、今のところ、ウクライナで放射線物質の拡散はみられないが、核兵器が使われた時のことも想定した放射線保護対策が必要になったと述べた。そもそもドイツの国境から100km以内のところに、諸隣国が所有する7基の原発があり、もしそこで事故が起きればドイツの住民に健康被害を及ぼすことも十分考えられ、ドイツの脱原発で放射能による危険は低くなるものの、それがなくなるわけではないと述べた。

原子炉が停止してから始める作業もある。それは原子炉の解体だ。レムケ環境相によると、今までにドイツで完全に解体された原子炉は3基しかないという。 残り30基余りの原子炉の解体は、もうかなり進んだものもあれば、今回停止する3基の様にこれからというものもあり、すべての解体作業が終わるのは、10年から15年先のことだという。

もっと時間がかかるのは、高レベル放射性廃棄物の最終貯蔵所の完成だ。現在、高レベル放射性廃棄物はドイツ国内16の中間貯蔵所に分散して保管されているが、2017年5月に改定された「最終貯蔵所選定法」で、 2031年までに最終貯蔵所の場所を決定し、2050年には高レベル放射性廃棄物の貯蔵を開始することになっている。しかし昨年秋、2031年までに貯蔵所としてふさわしい場所を選ぶのは無理そうだということを、連邦環境省は認めた。ドイツでは高レベル放射性廃棄物は、地下の貯蔵所で100万年間保管することになっていて、拙攻より巧遅を選んだというわけだ。

同じく記者会見に同席した連邦放射線廃棄物処分安全庁 (BASE) 長官のヴォルフラム•ケーニッヒ氏は、「原発が停止するのでこれ以上核のゴミは増えないという事実は、貯蔵所選択のプロセスにおいて計画立案を容易にし、住民の信頼を得る上でも一つの重要な要素になる」と述べた。確かに、これからどれだけ増えるか分からない「ゴミ」のために土地を提供しようという人はいないのでないだろうか。レムケ環境相は、「3世代が原発を利用したために出た核のゴミのために、これから3万世代に迷惑をかけることになる」と表現したが、ケーニッッヒ長官も、「最終貯蔵所の問題は、世代間の公平さの問題でもあり、我々の世代の問題の解決を将来に先送りしてはいけない」と語った。ドイツでは気候変動の影響を巡る議論などでも、「世代間の公平」という概念をよく聞くが、日本の原発政策を巡る議論でもこの様な視点は大切にされているのだろうか。

政治的判断で核のゴミの最終貯蔵所の候補となっていたゴアレーベンだが、市民たちの闘いで、今は候補地から外されている。「政治の誤りを市民が正してくれた」とケーニッヒBASE 長官。写真は2012年、ベルリンの環境省前での抗議行動。

この日の会見は、脱原発が実現しても、放射能による危険がなくなるわけではなく、解体作業や最終貯蔵所選定など、原発に関わる問題がこれで解決するわけでないことをはっきりさせるものだった。それでも、4月15日の脱原発は、政治的、エネルギー政策的、社会的に大きな区切りである。原発の存在やそれを巡る議論から何を学んだかというある記者からの質問にレムケ環境相は、「いろいろな新しい技術が生まれ、希望が託され、そこに多くの情熱が注がれました。それらの技術の中には国を豊かにしてくれたものもありました。でも、その技術に付随するリスクについて、 最初から考えることをしませんでした。これからは、どのような技術であれその リスクについてもっと早くから考慮するようにすべきです。そのリスクは他の人たちに降りかかることがあるのですから」と答えた。

そのレムケ環境相、4月15日は札幌で開かれるG7環境相会合に出席するために日本に滞在中で、会合の前にはフクシマも訪れるという。

関連記事:ドイツの「核のゴミ」、90カ所が最終貯蔵所の候補に(2020年10月25日)/ ドイツの脱原発、遅くとも2023年4月15日に達成(2022年10月19日)

 

 

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