「ヒュドフィール社」は水を愛する

やま / 2015年11月8日

foto_1a普通、1kgのコーヒーができるまでに、栽培と製造になんと2万1000リットルの水が生産地で必要だという記事を読み、驚きました。「ヒュドフィール社」が販売するコーヒー豆は、パナマにある雨の多い高原地帯で育ち、水道水は一切不要です。

ハンブルグ生まれのスタートアップ起業「ヒュドフィール社」が、南ドイツ新聞の経済面で紹介されました。創立者のヴァニヤ・ヴェスコットさんは29才。10年前、救援団体「ヴィヴァ・コン・アクヴァ(Viva con Aqua、水と共に生きる)」が主催する講演会の会計を友達に頼まれました。「ヴィヴァ・コン・アクヴァ」は世界中の誰もが清潔で安全な水が飲めるために支援活動を行っているNGOです。軽く請け負った仕事がきっかけで、ヴェスコットさんは団体のメンバーとなり、その後5年間、支援活動に加わりました。その時生まれたのが「ヒュドフィール社」のビジネスアイデアでした。

支援活動のため、ヴェスコットさんはルアンダやニカラグア、エチオピアを旅しました。これらの国々では水道のインフラ設備が十分にありません。その一方、多量な水の無駄使いが目立ちました。「何か我々にでも、できることはないだろうか」とヴェスコットさんと仲間たちは考えたのです。それがエコ企業の発想でした。

現在、社はコーヒーのほか、歯ブラシやTシャツ、コンドームなどをネットで販売しています。特徴は、出来るだけ高い節水率で生産され、環境汚染とならないビオ製品です。

オンラインショップの“看板娘”は竹製の歯ブラシです。このごろ、プラスチック製の歯ブラシの環境汚染が問題になっています。「成長が速い竹は多量の二酸化炭素を吸収することができます。そして栽培には殺虫剤や化学肥料もいりません」とヴェスコットさんは竹を選んだ理由を述べています。可愛いらしい色の歯ブラシだけではなく、竹製の歯磨きコップやハーブ入りの歯磨きもネットで販売されています。なるほど、この社のコンドームは天然ゴムで出来ていますが、歯磨きのチューブは何で出来ているのでしょうか。そう不審に思ったのは私だけではなかったようです。「歯磨きのチューブは残念ながらビニールです。これはまだ問題ですが、解決に取り組んでいます」とサイトのFAQに答えが載っていました。

経営学を専攻したヴェスコットさんは2年間ほど、彼の親族が経営する製菓会社に務めたことがあります。大学を卒業したばかりの彼の仕事は、火事で全焼した製菓工場を再び立ち上げることでした。企業がやっと軌道に乗り始めたころ、3世代続いた親族会社が売られました。その後、ヴェスコットさんはエコビジネスを営むあるスタートアップ起業で働いたことがあり、そこで、ためになる情報や良い経験を集めたようです。

現在「ヒュドフィール社」の経営状態は良好で「仮に今仕事をやめても生活には困らないほど」とヴェスコットさんは語ります。「そして、ご親戚は?」というジャーナリストの質問に対して「はじめは理解されませんでした。竹製の歯ブラシで事業を起こしたいと話したとき、祖父に変な顔をされました。でも、今では私自身の道を進めたということを良いと思ってくれています」。

ゴミになるプラスチック製の歯ブラシの消費量はドイツだけで年間約1億9000万本に上ると聞きました。「ヒュドフィール社」の利益が上がるのは、ゴミ問題に気づく消費者が増えているからでしょうか。foto_2a

「ヒュドフィール社」のウェブサイト、http://www.hydrophil.biz/

関連記事:プラスチック容器を使うくち、竹皮を使うくち?
https://midori1kwh.de/2013/03/03/3191

関連リンク:スターアップとベンチャー企業の違い、http://blog.btrax.com/jp/2013/04/22/startup-2/

写真提供:「ヒュドフィール社」

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