オスロは電気自動車天国
世界中で導入の急がれている電気自動車が、ノルウェーで急増している。 再生可能電力の豊富な同国が強力に推進しているからで、例えば、首都オスロ市内での充電は無料だ。
ノルウェーで現在までに登録されている電気自動車は1万7000台で、乗用車の登録総数に占める割合はさすがにまだ1%弱でしかない。しかし、電気自動車が新車登録に占める割合は、この9月と10月、前代未聞のトップになった。 また例えば、ノルウェー人の間では、ドイツ車のフォルクスワーゲンが最も人気なのだが、同社の電気自動車がこの11月にノルウェーで販売を開始した際には、輸入業者に注文が殺到し、インターネットがダウンしてしまったという。人気歌手や皇太子がスマートな電動スポーツカーを乗り回していることも、電気自動車の普及に拍車を掛けているようだ。
ノルウェー電気自動車連盟のスレトヴォルド事務局長は、これらの事実を「まるでメルヘンのようだ」と話す。同連盟の今年の予想新車登録台数は7500台だったのだが、この分では年末までに1万台達成が充分可能だという。そうなると、ノルウェーの電気自動車登録台数は、この一年間で倍増した計算になる。
この背景には様々な優遇措置がある。優遇措置が特に優れているのは首都オスロ。電気自動車にはまず、ガソリン車やディーゼル車には必要な同市への乗り入れ料金がただになっている。バス専用レーンの使用も許されており、これはラッシュ時の切り札とも言える。電気自動車専用の駐車場は街中あちこちにあり、そこには充電用ソケットが備え付けられている。そしてそこでの充電は今のところ無料なのだ。同市では将来さらに、電気自動車やバッテリーのリースにも消費税を掛けないようにするという。これだからオスロはまるで電気自動車の天国のようで、電気自動車に人気が出るのは当然だ。ノルウェーの電気自動車の半数がオスロを走行しているのも不思議ではない。
もちろん、ノルウェーでは首都以外の地域も優遇措置を享受している。電気自動車にはまず第一に、どこで購入しても、購入の際に消費税と自動車購入特別税の免除がある。ノルウェーの消費税は25%だから、それだけでもウエートは大きい。自動車購入税はエンジンの排出量によって異なるが、双方の免除を合わせると、普通車の購入に比較して、3分の1ぐらいの割引に相当するという。この免税は2017年まで有効で、同国ではそれまでに全国に有料の電気自動車用の充電網を構築する予定だという。
ノルウェーは国土が広大で山が多く雨量も豊富なので、膨大な水力発電能力を持っている。そして同国の電力需要は、国民が一切節電ということをしないにもかかわらず、ほぼ完全にこの水力発電で賄われている。電気自動車ももちろんこの自然エネルーを使って走るので 、火力発電で作られた電力を使うケースとは全く異なり、環境にはほとんど負担がかからない。だからこの国は、電気自動車の普及にとって、最良の舞台だといえそうだ。
ちなみに、ドイツの人口はノルウェーの約15倍だが、ドイツの今年1月から8月までの電気自動車登録台数は僅か3339台だった。