プラスチック・プラネット その1、ゴミの話

やま / 2012年5月27日

日本海に面したある入り江。毎年ここに韓国と日本の青年たちが300人、漂着したプラスチックのごみの回収にやってきます。彼らが2日間で集めたゴミの量はなんとトラック120台分もありました。この小さな入り江でこれだけ大量のゴミが漂流されてくるのをみると、海岸クリーンアップ事業がいくつあっても間に合わないのではと疑います。集めたペットボトルに韓国語や日本語で商品名が書かれてあったとはいえ、これは両国の間の問題ではなく、このゴミ問題はすでにグロバール化しています。

プラスチックを使う際、知ってほしい事実

大量生産のプラスチック

ベルギーの化学者、レオ・ベークランドがプラスチックの工業化に成功してから約100年、今までに生産されたプラスチックの量をビニール袋に換算すると地球を6回も包める大きさになるそうです1)。「石器時代、青銅器時代、鉄器時代などと人類の歴史を分ける事ができますが、私たちはプラスチック時代に暮らす、プラスチックの民です。」と指摘したのはドキュメンタリー「プラスチック・プラネット」のヴェルナー・ボーテ(Werner Boote)監督です。プラスチックの世界年間生産量は2億4千トンに及ぶと言われています。30年ほど前と比べると、その量はなんと4倍になります。日本やドイツなどの工業国では、プラスチックをリサイクルしたり、燃やしたりしていますが、多くの諸国ではそのように処分されていません。推測によるとゴミとなったプラスチックの80%は、最終的には海に漂流しているそうです2)

腐らないプラスチック

核廃棄物と比べるとプラスチックの寿命は300年から500年と短いほうですが、出る量が違います。私たちの日常はプラスチックでいっぱいです。いらなくなったからと簡単に捨てていますが、実はこのゴミは曾孫の時代までどこかに存在しています。ただ置き場所が換わっただけなのです。世界のゴミ箱のひとつになってしまった太平洋、アメリカ海洋大気庁が太平洋ゴミベルトの存在を公表したのは1988年のことでした3)。風に飛ばされ海に漂流するプラスチックは腐らずに、砕けて、粒状になります。あるロスアンジェルス–ハワイ間の海域の海水を調べてみると、プラスチック粒子とプランクトンの割合が、10年ほど前は6対1だったそうです。今では汚染が酷いところになると、プラスチックの量が60倍もあると測定されました4)。地球の全表面はこのプラスチック粒子で覆われていて、この細かい粒を集める事はもう不可能でしょう。プランクトンと思いプラスチックを誤食する魚、満腹だが飢え死ぬ魚、その魚は誰が食べているのでしょうか。

無害なプラスチック?

「今の時点ではまったく安全なプラスチックはないと断言できると思います。」と語るのは内文泌学者であるフレッド・フォム・サール氏5)。プラスチックを成形するために最も多く使用されているビスフェノールAが、環境や健康に有害であることは明らかにされています。この有害な有機化合物が食物連鎖や、大気により人体に吸収されていることが、血液検査により明確になりました。工業国に住む人も、大自然の中で暮らす人も同じように、プラスチックを体内に抱えているそうです。

プラスチック消費者とプラスチック企業

ドイツだけでプラスチック産業の雇用者数が24万人、年間取引高が400億ユーロ6)。ヨーロッパ全体をみるとプラスチック産業に関わる人が2百万人に上るといわれています。ヨーロッパでのプラスチック製品を利用分野にわけるとレジャー用品と医療分野が28%、電気、電子器具が6%、自動車産業が7%、建材が21%。そして実に利用が多いのは包装材で38%となります7)。一度使っては捨ててしまうパッキング。水を一杯飲んだあとゴミ箱に棄てるプラスチック製のコップ。使用時間は一瞬です。10年ぐらい前までは、八百屋で果物を買うと、独特な紙の三角袋に入れてもらいました。ごつごつした紙には、果物の絵と一緒に「果物を食べなさい」と印刷されてありました。いつの間にか紙袋は消えて、今はビニール袋、断らないと買い物籠がビニール袋だらけになってしまいます。1970年代のオイルショックの後、このビニール袋がエコ運動家の間ではご法度になった時代がありました。今は、意識ある消費者といえばビオ商品を買います。しかしエコ・ショップでも食品を丁寧に発泡スチロールや、ラップなどのプラスチックを使って包装しています。中身のビオ食品に気を取られ、包装材までには考えがまわらなくなってしまったようです。増える一方の包装材の需要をみて喜ぶのは、General Electric、Dow Chemical、三菱化学、Shell Oil、Bayer AGなどの大手企業です。これらの企業は批判的な質問はもちろん、話題になることを避けています。無関心で、安いプラスチック製品を買う消費者が絶えないかぎり、企業は心配はいりません。環境にやさしい製品を開発する必要もないのです。そして私たちはプラスチックのごみの海に溺れていくのでしょうか。

多くの情報は「プラスチック・プラネット(Plastic Planet)」の公式サイトから得ることができました。このドキュメンタリー映画を見た後すぐにペットボトルの飲料水がいやになり、ガラスのビンに代えました。
1)映画「プラスチック・プラネット(Plastic Planet)」
2)南ドイツ新聞、2011年5月14日、パトリック・イリンガー(Patrick Illinger)
3ウィキペディア、太平洋ゴミベルト
4)映画「プラスチック・プラネット(Plastic Planet)」
5公式サイト「プラスチック・プラネット(Plastic Planet)」その背景、ビスフェノールA
6南ドイツ新聞、2011年5月14日、パトリック・イリンガー(Patrick Illinger)
7PlasticsEurope MarketResearch Group (PEMRG)

 

 

2 Responses to プラスチック・プラネット その1、ゴミの話

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