ドイツのゴミ回収システムはゴミ箱に入れるべき?

やま / 2014年5月11日

grüner punkt日本では「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」とに分けていますが、ドイツでは、「リサイクルできるゴミ」と「リサイクルできないゴミ」とに分けます。EU諸国の中ではドイツ人は「ゴミ分けマイスター」。市民にとって、ゴミを分けて集めることは環境保護のひとつ。しかし、このゴミ分別システムは「複雑、無意味そして不経済」ではないかと、ドイツのメディアでは批判の声が高まっています。

我が家(ベルリン市内の一軒家)のゴミの処理をみると次のようです。
・ガラス瓶は透明、緑色、茶色に分けて、それぞれ色分けされたコンテナに捨てます。プラスチックや金属製のふたなどは一緒に捨ててもかまいません。ここで集められるのは普通のビンだけで、耐熱ガラスでできた器や入れ物はここには捨てないように。ビンを投げ込むとガラスが割れて音が出るので、住宅街では夜や日曜日は捨ててはいけません。
・新聞紙やボール紙などの紙は青い240リットル容器に入れて、4週間おきに収集してもらいます。ベルリン市清掃局に支払う料金は一回に付き2.38ユーロ(約340円)です。2012年度にはドイツ国内の紙の再利用率は76%にも及んだそうです。(ドイツ連邦環境省、HP参照)
・落ち葉など庭のゴミはコンポスト可能な容積90リットルのプラスティック袋(4ユーロ、約550円)を買い、その中に詰め込み、道端において置きます。この袋を自分で市のリサイクルセンターに運ぶと1袋につき1ユーロが戻ってきます。秋に街路樹(高さ15m!)の葉が我が家の庭に落ちます。その落ち葉は道端に掃きだしておくと市の清掃車が無料で片付けてくれます。
・台所の生ゴミは庭に置いてあるふたつきのコンテナに入れます。ラットと呼ばれるドブネズミがでないように、調理した食べ物は入れません。冬はコンポストが凍ってしまい、堆肥にならないので、家庭ごみ(下記参照)といっしょに取りに来てもらいます。あるいは生ゴミ用の市清掃局指定の茶色の容器に入れて、定期的に取りに来てもらうこともできます。容積60リットルの生ゴミを2週間おきに収集する際、料金は3ヶ月につき15.65ユーロ(約2,200円)です。
・その他、衣類、家具、電気器具、ガラクタなどはベルリン市清掃局が経営しているリサイクルセンターに持っていきます。ペンキの残り、水銀の入った省エネランプなどはこのセンター内にある有害廃棄物収集コーナーに捨てます。粗大ゴミは、市清掃局に取りに来てもらうこともできます。粗大ゴミ5立方メートル(例えば、ダブルベッド1台+ソファー1台+イス4脚+一人用ソファー1脚+机2台+ベンチ1台)の料金は玄関から車道までの距離が200メートル以内であれば50ユーロ(約7,000円)です。センター内に持ち込まれられたゴミは市清掃局の所有物となります。ですからセンター内では捨てられた粗大ゴミを使えるからといって持ち帰ると清掃局員に怒られます。センターの入り口の外で古くなった電気器具などを、引き取る人をよく見掛けますが、清掃局としてはこれは黙認しているようです。
・リサイクルできない最終廃棄物は「ハウスミュル(家庭ゴミ)」と呼ばれ、黒い容器に入れて1週間または2週間おきに収集してもらいます。我が家では120リットル容器に入ったゴミを2週間おきに収集してもらい、3ヶ月につき支払う料金は40.94ユーロ(約5,800円)です。
8533697348_bcfbd333c1 BSR Mülltrennung・デポジット付容器はスーパーに置いてある容器回収機に入れます。センサーがそれぞれ容器の大きさ、質などを捉えた後、消費者は1容器当り15~25ユーロセント(約20~35円)のデポジットを返してもらえます。
・「グリーンドット(grüner Punkt)」が付いた容器は「黄色いサック」と呼ばれているビニールの袋に詰めて2週間に一度、道路に出します。この袋は決まった商店に無料で置いてあります。

このごろのメディアの批判は再利用可能なゴミにあるようです。間違ったゴミがたびたび「黄色いサック」に入っていて、「それを取り出すのは面倒で不経済である」とか、「せっかく分けて集めているのに、最終的には家庭ごみと一緒に燃やされているのでは」とかゴミ分けシステムを疑う声が出てきています。

「グリーンドット(grüner Punkt)」が付いた容器を黄色い袋に入れて収集するシステムが取り入られたのは既に20年以上前。当時、廃棄物置場でのゴミの山は大きくなるばかりでした。置場となる土地がないドイツは特に大幅に増加する容器廃棄物について解決法を求め、1991年に容器包装条令が施行されました。この条例により、商工業者は商品の容器包装の回収、再利用、素材再生を義務付けられました。ゴミの処理にコストが掛かるので企業は容器包装を減らしていくと政府は見込んだようです。行政側は、汚れた容器の回収など、数々の問題点(不衛生、場所不足など)が出ることを予想しました。商工業者が共同で回収組織を作るという条件で、容器包装回収袋、紙やビン収集コンテナなどを使って、直接消費者からゴミを収集することを許可しました。そこで新たに生まれたのは民間企業DSD(Duales System Deutschland、ドイツ・デュアル・システム)です。メーカーは決められた使用料をDSDに支払うと、容器包装の回収、再利用、素材再生の義務から免除されます。使用料を支払ったという認定マークがこの「グリーンドット」です。

5829597666_02ce40af61 müllberg容器包装条令の制定の当時、ゴミ分けはごく簡単でした。「グリーンドット」が付いていれば(紙、ガラス瓶は別)黄色いコンテナまたは黄色いサックへ。条令により決められた再利用率の目標は次のとおりでした。
ガラス、75%、
缶などのブリキ、70%
アルミニウム、60%
ボール紙、紙など、70%
複合包装、60%
プラスチック容器の場合、再利用率は60%とされ、内容として36%はプラスチックのまま再利用する、残りの24%は熱などの資源として再利用することが決められていました。

しかし条令はできたもの、ゴミの量は期待されたほど減りませんでした。消費者としては、ゴミを集めれば再利用されていると安心して、ゴミを減らすことを忘れてしまったようです。まさにモラル・ハザード現象です。当時、販売包装リサイクルシステムについてDSDが独占体制を敷いていましたが、2001年にEUからその独占体制に意義が出て、今では10社の企業がリサイクル産業界で競い合っています。黄色い袋に詰められたゴミの量は毎年200万トン以上。容器包装条令の抜け穴もあります。使用料を支払わなくても消費者が容器包装なら何でも「黄色いサック」に入れてくれることを見込んで、回収システムに参加しない企業もあります。使用料を支払わない企業のゴミ、他の回収システムのゴミなど、DSDが用意した黄色いサックの大半のゴミは“迷子ゴミ”だそうです。今では、パッケージに「グリーンドット」が付いていたと思い込み、使用済みのオムツや枯れた花束を「黄色いサック」に入れる市民もいないことはないとDSD関係者は話していました。

古くなった容器包装条令こそゴミ箱に入れるべきでしょうか。将来性のあるゴミの処理対策とは何か、別の機会にお伝えしたいと思います。

写真
グリーンドット、Wiki参照
ゴミ分別の標識、flickr onnola、https://www.flickr.com/photos/30845644@N04/
ストリート・パーティーの後、flickr oszedo、https://www.flickr.com/photos/oszedo/

Comments are closed.