吉報:ドイツの今年9月末までの二酸化炭素排出量、前年同期比マイナス7%

ツェルディック 野尻紘子 / 2018年11月25日

ドイツの重要なエネルギーの研究機関である「AGエネルギービランツ」はこのほど、今年の9月末までのドイツの二酸化炭素の排出量は、種々のデータをまとめると、前年の同時期に比べて7%減ったと見られる、という喜ばしい結果を発表した。ドイツの経済は成長しており、人口も欧州連合(EU)圏内からの移住や難民の受け入れでまだ増え続けているのだが、エネルギーの消費が前年同期比で約5%減ったことが理由だという。AGエネルギービランツは、信頼される研究機関で、この機関の発表する数値は、通常ドイツ政府も計算の基礎として使っている。

AGエネルギービランツは、エネルギーの消費が減った理由として、今年の天候が並外れに暖かかったこと、石炭、石油、天然ガスの価格が上がったこと、再生可能電力が増えたこと、そして生産過程などでのエネルギーの効率が向上したことを挙げている。2018年の天候は、冬が短くあまり寒くなかった上に、春も夏も早く来た。そして9月末まで夏のような天気が続いたことが特徴だった。気温は例年の平均より約2度高くなったようで、気温が高いと、それだけ暖房のためのエネルギーが少なくてすむ。夏には日中30度を超す暑い日もあったが、夜には気温がだいたい20度前後に下がっていたし、ドイツの普通の家庭には冷房装置がないので、冷房のために消費されるエネルギーは限られている。

ドイツの二酸化炭素の排出量は、2010年ごろから9億トン強でなかなかそれ以下には下がらなかった。しかし、このような穏やかな天候が年末まで続くと、ドイツの2018年の二酸化炭素排出量は昨年の9億500万トンから約6300万トン、つまりマイナス7%減って8億4200万トンと、完全に9億トンを切ることになるだろうとAGエネルギービランツは見ている。

エネルギー源の中で今年消費が大きく減ったのは、主に火力発電や暖房に用いられる化石燃料だったので、それが直接二酸化炭素の削減に繋がった。消費量が最も多量に減ったのは石炭で、前年同期比で13%だった。それに続き石油と天然ガスの消費も前年同期比で7%減った。火力発電用以外にはほとんど使用されない褐炭の消費は同マイナス2%だった。一方、二酸化炭素を排出しない原子力発電は前年に比べて4.9%増えた。理由は、前年には点検のために停止していた原子炉が多かったのに対し、今年は停止がほとんどなかったためだ。また再生可能電力も前年同期比で3.9%増えた。その内訳は、陸上風力発電が13%増、太陽光発電は16%増だったが、バイオマスは前年同期と変化なく、水力発電は水不足で前年より10%減った。

なお、今年9月までに再生可能電力が総電力消費に占めた割合は38%で、昨年より3ポイント多くなった。AGエネルギービランツは、今年の第4四半期にも強い風が吹くなら、再生可能電力が今年全体でも総消費電力の38%を占める可能性があるとしている。ただ、ドイツ政府が2030年までに達成したいとしている再生可能電力の割合は65%なので、それを達成するためにはまだ努力が欠かせないとも主張している。

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