ノルウェーとドイツを結ぶ海底ケーブル、再生可能エネルギーの揺れをカバー
ノルウェーの石油エネルギー相とドイツの連邦経済相はこのほど、「ノルウェーとドイツ政府は長い交渉の結果、両国間に約600kmの送電用海底ケーブルを敷設することで合意した」と発表した。2018年に完成すると、ノルウェーとドイツの送電網が海を越えて繋がるようになり、両国間で電力の融通が可能になる。ドイツは将来、北海の洋上風力発電パークで生産した電力のうち、余った分を一時ノルウェーに送電して揚水発電用*に蓄えてもらい、風が吹かず電力の不足する際には電力に戻して送り返してもらうことを望んでいる。一方、水の豊富なノルウェーは、ドイツが脱原発後にノルウェーの水力で発電するきれいで安定した電力を多量に受け入れることに期待をかけている。総工費は15億から20億ユーロ(約1500億から2000億円)と見込まれ、両国で折半出資することに決まった。
ノルド・リンクと名付けられたこの高圧直流送電網は、ノルウェーの南端からドイツの北海に面したシュレスウィヒ・ホルシュタイン州に向けて海底を走る。容量は1400メガワットで、大規模な発電所一基分の容量に匹敵する。建設開始は2014年の予定。ノルウェー側は国営送電網運営会社スタトネットが総工費の50%を、ドイツ側は北海及び北海沿岸地域の送電網建設の義務を負っているが、資金の調達に苦しむ送電網運営会社のテネットが25%弱、同社を援助するドイツ国営再建信用銀行が25%強を負担する。
ドイツ・ノルウェー間に海底ケーブルを敷くという案は、ドイツが脱原発を決定するずっと以前の1990年代初めから両国のいくつかの民間企業の間で話し合われてきたが、今までは実現に至らなかった。ドイツ連邦経済省は昨年からノルウェー石油エネルギー省及びスタトネットと直接に交渉を重ねてきた。ノルウェーの送電網供給能力とドイツの資金調達に問題があったため、話し合いは予想以上に長引いた。
海底ケーブルでノルウェーと接続するという企画は、今回のノルド・リンク網以外にも、ノルウェーとスイスの企業コンソーシアムが検討するノル・ゲル網や、ノルウェー・英国間に海底ケーブルを敷く計画もある。ノル・ゲル網では、ドイツの北海に面するもう一つの州であるニーダーザクセン州に 向けてケーブルを 敷設することになるが、実現化は2020年以降になると見られている。一方、ノルウェー・英国間の海底ケーブルは2020年に完成する予定だという。いずれも、ノルウェーの豊富な水源が安定性に欠ける太陽光や風力などの再生可能エネルギーの揺れをカバーすることになる。
なお、ノルウェーとオランダ間、ノルウェーとデンマーク間は既に海底ケーブルで結ばれており、初のノルウェー・デンマーク間のケーブルは既に1976年に敷設されている。1977年と1993年に第2、第3ケーブルが続き、2014年までには第4ケーブルも完成する。完成すると、両国間のケーブル総容量は1700メガワットとなる。
*揚水発電とは、余剰電力で電気ポンプを稼働させ、下方にある溜め池から高い位置にある溜め池に水をくみ上げ、必要に応じて汲み上げた水を使って発電を行うことを指す。日本でも原発の余剰電力を蓄えるために利用されている。
欧州は、国をまたいでケーブルやパイプで電気やガスを
やり取りしていて、ダイナミックですよね。
こういう政策を実現するためには、根気づよい交渉が要るのだろうなあと
思います。
日本の電力界についても、原発事故以降、「原子力ムラ」という
言葉が盛んに使われるようになり、利権構造のややこしさが
取りざたされていますが、国をまたいで交渉する欧州の大変さを
考えれば、今後、何とかいい方向に進めて行くことも
不可能ではないのではないかな、などと思いました。