ドイツの省エネ住宅、その2

やま / 2011年11月27日

省エネ住宅を数値であらわす

建物エネルギーアドバイサーや専門技士にエネルギーの需要量を計算してもらいます。暖房使用面積当たり、年間どれぐらいのエネルギーが必要かをkWh/m²aという数値で表し、この数が小さいほど省エネとなります。ドイツではこれを「最終エネルギー需要量」と呼び、建物の性能をくらべるときに使われます。特に、この需要量等が記入されている「建物エネルギーパス」が不動産を売買する場合に必要です。燃料がどこまで高くなるかわからない今、予め暖房費が比較できることは便利です。

(住宅を購入する前に、エネルギーパスを比べた上で判断してほしいという意図なのでしょうが、市の中心地では、今だに立地条件と住環境が,重要な検討事項のようです。)

 

これが、エネルギーパスに記入されている、建物別の「最終エネルギー需要量」です。

建物 最終エネルギー需要量(単位はkWh/m²a
既存住宅、省エネ改修工事前

350~400

以上
既存住宅、一部断熱工事後

300~350

全既存住宅の平均

200~250

既存住宅、省エネ改修工事後

150

省エネ基準法に基ずく住宅、一軒家

100

省エネ基準法に基ずく住宅、集合住宅

70

パシッブハウス

30

以下

 

キロワットで表されている数値を、更にわかりやすく、一般向けにしたのが「リットルハウス」という呼び方です。エネルギー10kWhは灯油約1リットル(またはガス約1立方メートル)に当ります。

進むパッシブハウス、そしてその限界

もっと速く、もっと高く、もっと遠くと選手が競技に挑むように、省エネ住宅についても「パッシブハウス」から「エネルギーゼロハウス」更に「プラスエネルギーハウス」と研究が進んでいます。エネルギー消費量を太陽熱発電などでまかなうことのできる場合が「エネルギーゼロハウス」、自然エネルギーがそれ以上活用できる建物を「プラスエネルギーハウス」と呼びます。
しかしこれらの省エネ住宅では冷暖房、換気、照明といった各システムの自動化が進み、これらの装置の使用が複雑になった上に、オール電化になりつつあります。同じ1キロワット時のエネルギーを生産するために灯油、ガスは1.1、電力は3弱のエネルギーが必要です。言い換えると、広さ100m²の「パッシブハウス」の年間エネルギー消費量は3000キロワット時ですが、電力を使うので結局、9000キロワッ時トのエネルギーが必要になります。しかも、この住宅が郊外に建てられ、施主が出勤に毎日車を使うとなるとCO2の排出量は増える一方です。
こういうエネルギーの消費は環境に負荷をかけるものであり、無駄を省くという意味での省エネは重要ですが、環境問題解決の手段としては、これだけでは限界があることが明らかになります。このごろは「エコ建築」や「エコハウス」など風土にあった自然の力をうまく生かした住宅が、よく紹介されています。エネルギー需要量と消費量を下げる対策だけではなく、更に以下の点が必要になってきます。

  • リサイクル可能な建材の利用する
  • 建材運搬のためのエネルギーを減らす(地産地消)
  • 自然に害のある建材を使わない
  • 建物の再利用の可能性を考えて建てる
  • 自然空間を保護する
  • スペースを無駄にしない設計をする

 

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