ドイツのメディア、「原発再稼働禁止」の判決を速報

永井 潤子 / 2014年5月25日

「大飯原発再稼働認めず」「福井地裁判決、原発より人命」、5月22日の日本の各新聞の一面は福井地方裁判所が関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた判決に関する記事で埋まっているが、ドイツのマスメディアも早速この判決を報じた。

判決直後にドイツの通信社dpa通信などが福井発の詳しいニュースを伝えたが、最初に私が目にした記事はドイツの代表的な週刊誌「シュピーゲル」のオンライン版で、判決が出た5月21日の15時台(日本時間では22時台)に発信されている。タイトルは「福島事故後3年、日本の裁判所、原発再稼働を禁止」。ドイツの大方の読者には大飯原発という名前も福井という地方の県もなじみがないため、タイトルはこのようなおおざっぱなものにならざるを得ない。

福島の原発事故から3年経って初めて西日本の福井地方裁判所が、原発の再稼働を認めないという判決を下した。福井の住民189人が運転差し止めを求めて訴訟を起こしていたのだが、住民の訴えが認められたことになる。原告グループは関西電力が福井大飯原発の4基の原子炉のうち2基を2012年、安全が確認されていないにも関わらず再稼働させたことに異議を唱え訴訟を起こしていたのだ。問題の3号機と4号機はいったん再稼働されたものの、2013年9月に定期検査のため、再び運転を停止した。日本の原子力規制委員会は、目下、新しい、より厳しい規制基準に基づく審査を続けている。新基準に適合すれば大飯原発は再び運転が可能になる。

この記事は判決について伝えた後、日本は福島の事故後48基の原発すべてを定期検診や安全検査のためストップしているが、保守右翼の現政権は、新規制基準に適合した原発をできるだけ早い時期に再稼働する方針であること、福井県には14基(注:廃炉解体作業に入っているふげんを含めると15基)の原発があり、地震大国の日本でこれだけ多くの原発を持つ県は他にないことなどを説明している。

デュッセルドルフで発行されている経済新聞「ハンデルスブラット」も判決の翌日、5月22日の紙面で「日本の裁判所、原発の再稼働をストップ」という見出しの記事を載せている。

日本の原発反対派は、反原発訴訟で注目すべき勝利をおさめた。3年前の福島の壊滅的な事故以来初めて、日本の裁判所は福井・大飯原発の本格的な再稼働を禁止するという判決を下した。一方、大阪の裁判所は最近、再稼働に反対する住民の訴えを却下した。「安全性の審査をしている原子力規制委員会が結論を出す前に裁判所が再稼働をストップするのはふさわしくない」というのが、訴訟却下の理由だった。

プリントメディアではさらに全国新聞フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)やディー・ヴェルト、ベルリンで発行されているターゲスシュピーゲルなどが、それぞれオンライン版で原発反対派の法廷闘争の勝利を速報した。各紙は同時に、事故を起こした福島第一原発で地下水が建屋に流れ込むため、汚染水が毎日約400トンずつ増え続けていること、その増え続ける汚染水を抑えるための地下水誘導計画、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて一時的にタンクにため、海に放出する作業が始まったこと、東電はこれによって汚染水の増加を毎日100トンほど減らせると見込んでいること、海に放出される地下水の放射性物質の濃度は基準以下であると発表していることなどを伝えた。さらには、これまでタンクにたまった大量の高濃度の汚染水を処理するシステムが不具合続きで、再び運転がストップしたことなども報じられている。

ドイツの公共国際放送、ドイチェ・ヴェレも「日本の原子炉、再稼働を許可されず」というタイトルで、「日本の保守政権はできるだけ早い時期に原発を再稼働させることを願っているが、原発反対派は裁判に訴え、そして成功した」と伝えた。

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