電気を市民の手に - 動き出した「ベルリーナー・エネルギーティッシュ」
「ベルリーナー・エネルギーティッシュ(Berliner Energietisch)」という単語は、独和辞典には載っていない。Tischは机、テーブルを意味する。これにエネルギーという言葉がくっついて、「エネルギー問題を協議するテーブル」とでも言えば良いだろうか。エネルギーについて、テーブルを囲んで話し合おうということだ。
ベルリンの電力会社について少し述べておきたい。1884年8月12日、ドイツで初めての公共電力会社がベルリンに誕生した。何度か名称の改変はあったものの、ベルリン市のもとにある電力会社であることには変わりはなかった。しかし、戦後の1948年、本社がソ連の占領区域となった東ベルリンに置かれていた同電力会社の役員会は解散させられ、その結果、東西ベルリンにそれぞれ独自の電力会社が作られることになった。陸の孤島と化した西ベルリンでは市内に多くの発電施設が設けられ、西ベルリンの公共電力会社は発送電協連盟(UCTE)の基準に応じた送電網を維持してきた。1990年のベルリン統一後、東の国営電力会社は西ベルリンの電力会社に組み入れられ、東の老朽化した発電所や送電網が整備された。この電力会社が、2003年、スエーデンの電力会社ヴァッテンファル社によって買い取られたのである。
2011年9月に行われたベルリン州議会選挙(ベルリンは市でありながら州でもある)を前にして、2010年暮、環境や気候保護を目的に活動しているいくつかの市民グループが、ベルリンにおける電力供給を選挙戦の争点の一つにするために結集した。送電網を再びヴァッテンファル社からベルリン市が引き継ぐ可能性について、グループの間で議論された。選挙を前に、社会民主党(SPD)、左翼党(Die Linke)、みどりの党はそれぞれベルリンにおける将来のエネルギー供給に関するコンセプトを提示した。これに対して、上述の市民グループは党の代表者と話し合いを重ね、同時に「ベルリンのための新しいエネルギー - 送電網を市民の手に!」というパンフレットを作成した。2011年夏、これらのグループを中心にして「ベルリーナー・エネルギーティッシュ」が発足した。州議会選挙前には、多くの討論やワークショップを開き、市民に向けた活動を行った。州議会の選挙の結果、第一党となったものの過半数に達しなかった社会民主党は、みどりの党との連立を図ったが、市内高速自動車道の延伸をめぐって一致できず(これは両党の間に大きなしこりを残すことになった)、結局キリスト教民主同盟(CDU)との連立政権が誕生した。「エネルギーティッシュ」が求めた送電網を市に取り戻すことは、連立政権の合意契約では単に「検討すべき事項」と位置づけられただけである。
2014年12月31日、ベルリン市とヴァッテンファル社との間に交わされている営業認可契約が切れる。この時点で「ベルリーナー・エネルギーティッシュ」は営業権が再び市に戻ることを求めている。再生可能エネルギーによる電力生産と、3万5831キロメートルに及ぶ配電網をヴァッテンファル社から市に取り戻すという目的の実現に向けて、2012年3月から住民投票を求める署名活動がスタートした。
3月下旬に開かれたベルリンのみどりの党大会では、「現在の州政府にはエネルギー転換の実現は期待できない」として、「エネルギーティッシュ」が推進する住民投票活動を支援することを決定した。みどりの党は、2030年までにベルリンのすべての電力を再生可能エネルギーで賄い、さらに2050年までに市の全エネルギー供給を完全に再生可能エネルギーに頼ることを目標としている。「エネルギーティッシュ」による住民投票の活動は、ベルリン州議会のすべての野党(みどりの党、左翼党、海賊党)からも支援を受けており、「6月下旬には住民投票の実施に必要な2万人分の署名が集まるだろう」と活動家たちは述べている。
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お元気ですか。私は帰国後疲れが出て夏風邪にかかりようやく回復し、報告書を書いています。
2時間のお勉強だったのに、もう何日も参考書を片手にふうふう言いながら少しずつ書いています。
ベルリン市民エネルギーに関しても、ここの記事を参考にさせていただいています。
ドイツに行く前に読んでいたらもっとよかったのにと反省です。
それにしても有意義な情報をきちんと発信していてくださって、感謝です。
秋にシェーナウ、フライブルグにいきます。その時までに、もう少し知識を溜め込んでおこうと思います。
こちらは灼熱地獄のような熱さですが、きっとそちらは過ごしやすい事でしょう。
お元気で、今後とも情報の発信をよろしくお願いします。
追伸:
この前、麻生財務大臣が「ナチスに学べ」などと言い出し、ドイツ帰りの私は本当に怒りました。
ナチスに同調したら、日本が孤立してしまうのは当たり前。本当に、日本の政治家の頭の構造は戦前です。
全体主義、独裁制への賛美をしている政治家を誰も止めない!!
怖い、怖い。諸外国によって、それが改まっていく事を願っています。